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一連の騒動でリアルに役立ったエクササイズ

新型コロナ騒動でクラスができなくなって、カルチャーセンターのクラスも閉鎖された。出稽古先もクローズして、予定されていたワークショップやセミナー、トロント行きも全部なくなった。

八方塞がりのなかで何をすべきか。

そんな中でリアルに役立ったのが、動画で紹介した練習だ。

圧迫され、身動きがとれない状況でも暴れず、もがかず、静かな呼吸を保って落ち着く。

そして自分がどれだけ自由なのかを確認する。身動き取れないとはいっても、全く動けないわけではない。必ず動かせる部位がある。たとえそれが見つからなくても、呼吸している限り横隔膜は動き、血液も流れる。頭も働く。

そうやってわずかな隙間を少しずつ、少しずつこじあけて、突破口を見出す。

この騒動下で私がやっていたのは、まさにこれ。

できないことが多々あるなかで、何ができるかを考える。そして少しずつ実行する。勝算なんてなくてもとりあえず動かせるところを動かし続ける。

すると少しずつ活路が開ける。

人生に役立たなければ、システマをやっている意味がない。ミカエルの受け売りでつねづねそう言っていたけれども、練習したワークがこれだけダイレクトに実生活に活きるとは。

このワークを最初にミカエルから学んだのは2006年のサミットオブマスターズのとき。日本からの参加者がまだまだ珍しくて、私のことをたびたびデモに使ってくれた。

ある日のクラスで、ミカエルが言う。「タカ、仰向けに寝なさい」。

言われるままに仰向けに寝ると、参加者から大柄な男性を呼び出して、次から次へと私のうえに積み重ねていく。それも体が「+」のように交差するのではなく、向きをそろえて「|」型にまっすぐ縦に積み重ねていく。そのため乗る人の全体重が私の体にかかる。総勢5人。一人80キロとして約400キロだ。

ミカエルのアドバイスは「呼吸しなさい」だけ。

圧死するんじゃないかと思ったけど、ミカエルがやらせるんだからまあ大丈夫なんだろう。そう自分に言い聞かせてブリージングを繰り返し、ミカエルが解説している間じゅう、なんとかしのぐことができた。

この積み重ねワークは、システマのクラスではそこそこ有名な部類に入るだろう。大事なのは、すぐに脱出しようとしないこと。圧迫のストレスから闇雲に逃げ出そうとすると、エネルギーと酸素を浪費して窒息する。だからまずは静かにブリージングでリラックスする。まわりくどいように思えるかも知れないけど、このプロセスをひとつ挟むだけで、サバイブの可能性が飛躍的に高まる。しかる後に少しずつ、脱出を図る。

重圧から急いで脱出しようとする時、みな一様に、同じような行動を選択する。障害物を排除しようとするのだ。このワークなら、自分に乗っている相手をどかそうとする。自分が動くのではなく、対象を動かそうとしてしまうのだ。

それは意識が対象に奪われてしまっているということでもある。自分がどんな状況なのか、何ができるのかといったことには考えが及ばなくなる。ただ相手が自分の思う通りに動くわけがない。そのありえないことをやろうとしてもがき、エネルギーを浪費して、自らを窮地に追い込む。

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