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noteで学べるシステマ講座 第38回「ゆっくりできないことが素早くできるわけがない」

noteで学べるシステマ講座
第38回「ゆっくりできないことが素早くできるわけがない」

武術や格闘技のエキスパートは目にも留まらぬ早業を繰り出します。

最近は動画でトップクラスの選手や先生方の動きがみられるので、鮮やかな動きに見とれてしまうこともしばしばです。

それに比べるとシステマの動きはどこかゆっくりとした印象を受けます。擬音にしても「ババッ!」とか「サッ!」というより「ぬるぬる」とか「すーっ」といった感じです。ミカエルに至っては動きが普通すぎて、擬音のつけようがなかったりします。

それは普段の練習でも同様です。マーシャルアーツでも「もっとゆっくり」と言う指示がしばしば出ますし、私自身もできるだけゆっくり動くように心がけています。そのほうが練習の効率がよいからそうしているだけなのですが、それを実感するまでには時間がかかったのも確かです。

やはりいかにもすごそうな速い動きを練習したほうが良い気がしたものです。システマの名を一躍世界に広めた動画でも、目にも留まらぬヴラディミアの動きが印象的だったこともあります。なのになぜゆっくりと動かなければいけないのか?

ゆっくり動きはしますが、もたもた動くわけではありません。

では「ゆっくり」と「もたもた」は何が違うのか?

今回はかつて疑問を抱いた私の立場から、システマでゆっくり動く理由について解説していきます。

システマではなぜゆっくりと動くのか

「ゆっくりできないことが、速くできるわけがない」

これは私が2006年にトロントで行われた「サミット・オブ・マスターズ」に参加した際、マスターの一人として招聘されたコンスタンチン・コマロフのクラスで最初に聞いた言葉でした。ミカエルも似たような発言をしていたので、コンスタンチンのネタ元はおそらくミカエルでしょう。

この「ゆっくりできないことが、速くできるわけがない」という言葉に、「確かにそうだ」と思ったこともあって、私は意地になってどんなときもゆっくりの動きを心がけるようにしたのです。するとだんだん、その言葉の意味することが理解できてきたのです。

動きの過程を分析する

ゆっくりとした動きだと、動きの過程を観察することができます。その代表例がスロープッシュアップです。そもそもなぜ同じ1回なのに、ゆっくりやるときつくなるのでしょう? それは勢いでごまかせないからです。ゆっくりやると、動作の過程にある緊張が動作の歪みが表面化します。それで実は無理な身体の使い方をしていたことに向き合うことになるのです。

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