ヴァシリエフ夫妻、システマを語る。 Part3
「Embodiment Conference」にて行われた、ヴラディミア・ヴァシリエフ、ヴァレリー・ヴァシリエフ夫妻へのインタビューの日本語テキスト版。
トロント本部の許諾を得て文字起こし及び日本語化しました。音声ファイルは下記リンク先よりダウンロード可能です。誤訳を見つけた方はお知らせいただければ幸いです。
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Part1
Part2
冷水浴のススメ
司会(マーク):賢いパートナーは、どうすれば相手が幸せで生き生きとした人生を送ることができるか分かっています。私の妻もそうです。「貴方は格闘技をやらないと。一緒に夜を過ごしたいけれど、まずは貴方が楽しまないと。ハニー、また後でね。」と送り出してくれます。彼女は、パートナーに必要なことを理解している。スマートです。これが我が家のやりかたです。
ヴァレリー:家庭で活かせる基本的なワークをご紹介しましょう。冷水を浴びることです。我が家には娘が3人いて、皆生まれた時から実践しています。
また、ストレスの多い状況での呼吸の原則です。呼吸をしてストレスを取り除いてください。子供なら誰でもやっています。もちろんシステマを学んでいる方々も。
911で命を救ったシステマ
呼吸に関する素晴らしいエピソードをご紹介しましょう。ニューヨークでシステマを学んでいた高校生が、2001年の同時多発テロに遭遇した時の話です。爆発でビルが崩れようとした時、彼がいた学校は、爆心地から数ブロックしか離れていませんでした。校内は信じがたいほどのパニックで包まれていました。生徒達は走り始め、混乱が渦巻いていました。彼はシステマで学んだように呼吸しました。するとどこへ向かえばよいか、どう走ればよいかがクリアになりました。彼は走り出し、安全な場所まで辿り着きました。しかも、彼についてきた生徒の命も救ったのです。素晴らしいことです。本人も、呼吸がこれほど役立ったことに衝撃を受けていました。この話を彼から聞いたので、公表しました。実生活における一例です。もし視聴者がご興味が有るなら、お伝えできる話が少なからずあります。
ヴァシリエフ夫妻の夢
マーク:では、今後の夢についてお聞きしてよろしいでしょうか? この先システマで期待されていることは有りますか?ただ広まれば良いのでしょうか?目標や展望など、何か思いは有りますか?
ヴァレリー:システマを学ぶことで、人は悪意に立ち向かう戦士になります。まずは自分の心に潜む悪意。いずれは周囲の悪意かもしれません。良い人、強い人が増えるほど、人類全体が良い方向へと向かいます。
ヴラディミア:理解しづらいかもしれませんね。ロシアでは、多分イギリスも同じだと思うのですが、伝統的な戦士とは寡黙で、堅実で、屈強で、穏やかでした。ところが今日は、戦士であるために何かしらの怪物を常に求めます。例えば米国では蜘蛛か何かでしょうか。どういった戦士であるかは、本人次第です。
私にとっての戦士は、とても素晴らしく、逞しく、リラックスしているものです。後ろに続く人々に、テンションではなく活力を与えます。
マーク:カナダはとても安全な国です。戦士の気風を目にするか、言うまでもないでしょう。イギリスも一緒です。伝統的な戦士の価値を、若者は求めていないのかもしれません。子供たちを見てください。ある程度の年齢になると「良い子でいなさい」と言われますよね?
戦士の価値観ですが、昨今は抑制されている気がします。イギリスやカナダはそうです。ロシアは少し緩いかもしれません。とても悲しいことです。「戦士2.0」のようなアップデートが必要です。システマにおける戦士の哲学は、中世の戦士とは異なるかもしれませんが、現代社会でどう活かせるのでしょうか? 現代社会でも、戦士の気風が必要だと思います。
戦士の振る舞い
ヴラディミア:まずは現状について話します。枷が外れ、Black Lives Matterのような色々な集団が生まれ、お互いに干渉しています。現在のカナダだとステイホームが求められています。その中で、マスクで顔を覆うのはナンセンスだと、苛立ちを募らせる人々もいます。健康上の問題はともかく、ただステイホームに従っているうちに、ますます弱くなっていきます。やがて、怒りや動揺を覚えるようになります。
一方で「ダメです。大人しくしましょう。指示に従いましょう」と追従する人もいます。彼等は、献身的でも賢明でもありませんが、非常に攻撃的です。そして抗争が起こります。「何がステイホームだ? 周りに病人はいないぞ」と。私にとって戦士の精神とは、このような状況でも宣言する勇気を与えてくれるものです。
「自分には権利が有る。ポリティカルコレクトネスは不要だ。ただサバイブしたいのだ」と。
マーク:戦士の訓練を受けなくても、攻撃的になるのですね。むしろ、受けていないからかもしれません。攻撃性は、敵意、あるいは非常に強い主張として表れます。彼等が抗議している姿を見ると「格闘技を学べば良いのに」と心底思います。練習するうちに、敵意など脇に追いやられてしまうのに。
ヴラディミア:その通りです。
ヴァレリー:過度なストレスに対処できていません。少なくともシステマには、対処するメカニズムがあります。
ヴラディミア:システマのクラスを訪れる人々は、喜んでいます。拍手せんばかりです。彼らは常に笑顔を浮かべています。戦い方も変わりました。今までとは違うリラックス、違う気付きを抱き、お互いをもっと尊重するようになりました。仲間として認め合い、共に訓練し、抱き合い、握手します。とても面白いことです。クラスの雰囲気も全く変わりました。
マーク:興味深いですね。生徒がそのことを大切にしているのでしょうね?
ヴラディミア:ええ。
マーク:ヨガに通っていた時の話です。最初のロックダウンの時に、オンラインで3ヶ月ほど通いました。クラスに出ることがまるで特権であるように感じられて、先生にとても感謝しました。先生は「構わないよ」と普通でしたが。人生は、学生が学校に通うみたいに当たり前だと思っていたけれど、実はかけがえが無いものと気付きました。
先日COVIDの検査を受けました。陰性でした。私も「ああ、呼吸できることは素晴らしい!」と感じました。2週間前にロシアに行ったとき、友人と食事しました。ターニャ、君はこのポッドキャストを聞いているかい? 愛しているよ。この感情は、むしろ感謝と呼んだ方が良いのかもしれません。分かりますか?
ヴラディミア:もちろん。
ストレス過多の時代をサバイブするには
マーク:そろそろまとめに入りましょう。ストレス過多な時代を生き抜くヒントは、どうすれば手に入りますか? あるいは、この場で何かヒントをご紹介頂けますか?
ヴァレリー:もちろんです。冷水のシャワーを浴びるのは、誰にでもお勧めです。凍り付くように冷たい水をバケツに入れて、頭から被ります。
マーク:時々、水風呂に入ったり、海で泳いだりします。これも有効ですか?
ヴァレリー:その通りです。
ヴラディミア:摂氏マイナス44度の環境で冷水を浴びたことがあります。実に素晴らしかったです。
また、常に動き続けることです。呼吸のエクササイズもお勧めします。ストレスを感じたら、少し歩きましょう。息を吸いながら4歩、吐きながら4歩。吸いながら5歩、吐きながら6歩。肺を開きましょう。マスクを付けると体が弱くなり、病気にかかりやすくなります。ナンセンスです。
今は練習から離れている方も、呼吸のエクササイズを実施してください。呼吸は、神が与えたもうたものです。政府から許可をもらうものではありません。
常に強く在ってください。自分を開放するようなエクササイズを行ってください。もしも何かに押しつぶされそうになったら、私はプッシュアップをして自分を開放します。サークルプッシュアップをやるようにして肺を広げます。時には満面の笑顔を浮かべてください。
マーク:素晴らしいです。丸一日かかるようなカンファレンスを終えた夜は、海沿いを歩いてリフレッシュします。新鮮な空気を吸ったり、少しブリージング・ラダーを行ったり、勇気があれば泳いでみたり。自然の中をただ歩いてみたり、シンプルな呼吸のエクササイズをやっているうちに、素晴らしく若返ったように感じます。
ヴァレリー:シンプルな人生の知恵です。疲れているなら、昼寝しましょう。空腹でもないのに、食べるのはやめましょう。とてもシンプルな原則です。
マーク:おかしいですね。我々は犬ではありません。空腹ではないのに食事はしません。だけど、なぜか忠告が必要になる。真理ですね。
システマを学ぶなら
マーク:そろそろ終わりに差し掛かりつつありますが、とても晴れやかです。これまで300名ほどにインタビューしてきましたが、今回のインタビューもきちんと成果を出せたと感じています。活力に満ちています。まるでシステマのクラスに参加した後のように。カンファレンスが終わったら、私は間違いなくトロントに行くでしょう。「やぁ」と挨拶をして、一緒に練習をしたいです。
この「Embodiment Conference」に貴方がたをお迎えできたことは、参加者にとっても本当に喜びだと思います。我々のインタビューは「theembodimentconference.org.」に掲載されます。今の段階でも31万人が聞いていますが、恐らく最終的には50万人になると思います。
ヴラディミア:ホストのおかげです。
マーク:システマに関する情報は、どこで手に入りますか?
ヴァレリー:オンラインであれば「systemavasiliev.com」です。また「SystemaVasiliev」は、Instagram、Facebook、YouTubeのアカウントです。100種類に及ぶ動画、書籍、全てが有ります。また、オンラインクラスを週に2回開催しています。
マーク:素晴らしいですね。
ヴァレリー:誰でも参加できます。ご自宅からでも。経験は問いません。
テーマは事前に告知しています。今夜は「呼吸」をテーマにクラスを行います。
マーク:オンラインのクラスで、呼吸をはじめとしたトピックに関する動画が見られます。「 Systmavasiliev.com」あるいはグーグルで「SystemaVasiliev」と検索してください。それでは、最後にありますか?
ヴラディミア:マーク、それにマット(・ヒル)、またポッドキャスト視聴者に感謝します。マットは素晴らしい先生です。
マーク:彼は本当に良い人です。
ヴラディミア:単に誠実だというだけではありません。個人的に、マットは素晴らしいイギリス人だと思います。
マーク:マットは昔ながらの英国紳士です。例を挙げましょう。2年前にカンファレンスを開催しました。発表者は140人ほどいたのですが、手書きのお礼状を送ってくれたのはマットだけでました。昔ながらの作法かもしれませんが、今でも壁に飾っています。このイギリス西部で、マット・ヒルと出会えたことが素晴らしいからです。
さて、ヴラディミア夫妻はトロントにいます。私がモスクワを訪れた際、モスクワ本部の方々はとても歓迎してくれました。彼等は屈託なく、来賓として歓迎してくれました。練習するなら、イギリス、ロシア、トロント、どこもお勧めします。さて、そろそろ私も休憩を取らないと。
ヴラディミア:マットは完璧な戦士です。単なる戦士ではありません。
マーク:マットはタフですし、伝統的な作法に則る紳士だと思います。
でもお二人とも本当にありがとうございます。 スパシーボ、ボリジョイ。
私もロシア語を多少嗜みます。なので、貴方たちの会話に耳を傾けようとしていました。お時間を頂きありがとうございました。とても光栄でした。
ヴァレリー:最高です。神のご加護を。
ヴラディミア:スパシーボ。ありがとうございます。神のご加護を。
マーク:神のご加護を。
了
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