計算問題と文章題
娘は小学五年生。
本人の希望で中学受験の準備を進めている。
4年生後半から勉強は始めていたのだけど、算数がネックになっていた。
中学受験向けの授業や教材は4年生の時点で、学校よりもずいぶん進んでしまっている。その差になかなか追いつかずにいるうちに、苦手意識が芽生えてしまったのだ。
今、通っている塾はなかなかよくやってくれているのだけど、それでも算数が足を引っ張り、それが他の教科への苦手意識にまで波及してしまっていた。
そこでまずは基礎力だと、計算問題をあの手この手を尽くしてたくさんやらせた。もともとそうしてたのだけど、思い切って文章題や図形を捨てて、まず計算問題だけでも点を取れるようにとその練習に専念したのだ。
そうしたら、算数の成績がぐんと上がり、釣られて他の教科まで良くなった。それどころか勉強すると成績があがるということを学んだせいか、自分で勉強するようになった。一番の弱点を克服すると、全体的に向上する。そういうことが起こるらしい。
その様子をみて、システマも同じだなあと思った。
僕自身もまた中学受験組なので、中学受験については全く知らないわけではない。今も昔も算数のテストと言えば、最初の大問1はだいたい計算問題だ。基礎的な計算力を問うだけの割には、意外に配点が大きい。だからここを確実に取れるかどうかが、算数の成績を大きく左右する。そのへんの基本戦略はこの30年、ほぼ変わりないようだ。当の僕はといえば、受験を終えるまで算数が苦手なままだった。考え方は合っているのに、点に結びつかない。要は計算ミスが多すぎたのだ。だから奇跡的に計算ミスがない時は誰も解けないような応用問題で正答を出して、先生を驚かせるなんてこともあった。
ただただ基礎的な計算力が足りていなかった。今なら「計算問題を克服すればいい」と分かるけれども、当時の僕に分かるはずもなく、周囲からは「計算ミスをなくせ」と言われるばかりで、どうやってなくすのかを教えてくれる大人はいなかった。まあ今に比べたら指導法も教材もまだまだ未発達だった。娘の塾の授業を見ると、実に工夫されている。学力向上を図るなら学校なんて行くだけ無駄じゃないか、と心底思えてしまうほどだ。
計算力があれば、計算や検算に費やす労力と時間が少なくて済む。その分、応用問題の解法を考える労力に充てることができる。大問2以降での正答率もぐんとあがる。
システマトレーニングの主流は、大問1にあたる計算力を徹底的に上げるトレーニングだ。圧倒的な計算力があれば、その他の問題も解くことができる。基礎力の価値を追求した究極の結論だ。
それに対して様々なテクニックは、つるかめ算やニュートン算、図形などの解法みたいなものだ。この問題はこう解く。あの問題はこう解く。問題文を読んで、解法を頭から引っ張り出して解く。ああでもない、こうでもないとあれこれ試行錯誤するのは、応用問題の解法を考えているのに似ている。それはそれで大事だし、仲間とあれこれ議論しながら解法を考えるのも悪くない。そしてたちどころに答えの出る解法、解法を知っている者を求める。それも、それを分かりやすく、手軽に、安く教えてくれる方がいい。
そこで空気を読まないのがシステマだ。
「そもそもあんたら、計算力足りてなくね?」
計算力を高めるなんて、地味で時間のかかることなんてやりたくない。それよりも解法を覚えちゃう方が時間が短くすむし「合理的」だ。多くの人がそう考える。かつての僕もそうだった。
でもやっぱり、計算力は大事なのよ。基礎があれば全部が変わる。
システマならムーブメント。4大エクササイズにローリングにクローリング。要は自分の身体をどれだけコントロールできるか。何が基本かがはっきりしていて、それがきっちり違いになるんだからシステマってほんと、シンプルないい武術だと思うね。
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