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母の日

現金しか使えない蕎麦屋に入ってしまった。
嘘。
入ってしまったのではなく、そうなんだろうなと予想はしていた。
母の日に母に財布を開けさせるのは申し訳なかったけど、リクエストでもあったしお腹空いてたし、クレカ使えなかったらあとでATM行くから、絶対払うからね!と宣言して店に入った。
順番待ちの間あまりキョロキョロしないようにレジ付近をゆっくり見回したけど、やっぱりクレジットカードのマークもスマホ決済のマークも見当たらなかった。
眼球疲れた。
案内され席に着くと、店員さんが私達を交互に見ながら、ねー、母の日だしねー、とマスクの下は見えないけどおそらく満面の営業スマイルで話しかけてきた。
わたしのマスクの下は苦笑いだった。
まぁまぁまぁそうだけど。
母の日だけど子供がご馳走するとは限らないし、私達が親子じゃないかも知れないし、現金持ってないかも知れないじゃん?なんて反論しそうな雰囲気はひとつもないアクリル板を挟んだ同じ顔。
貼り紙通り黙食したあと財布を探ると畳まれた千円札を発見した。
足りない分を母から受け取って涼しい顔で会計を済ませた。
堂々と母に会計してもらって、あの店員さんの反応を見るのも面白かったかな。


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