ひとりたび②
早朝の露天風呂はぬるめだった。
虎の置物がふたつこっちを見ていて、あ、どうも、という感じになった。
柵に囲まれており景色は見えなかったがそれでも良いお湯だったので不満はない。
朝食前に散歩に出ると、何かが落ちてきて見上げると電線にカラスがいた。恐る恐るカラスのいる位置を避けて歩いていたら商店のおじさんに笑われた。
帰る前にもう一度お気に入りの炭酸泉にチャレンジした。数分浸かっていると容赦なく誰かが入って来たので慌てて隣の女湯に移動した。
まぁ混浴なので容赦はなくてよい。
チェックアウト時にフロントに誰もおらず、訪れた日帰り入浴の客とすいませーんと叫びつづけた。小学生らしき男の子が出てきた。この辺で学校の爆破予告があって臨時休校になったらしいと後で知った。予告が続く限り学校には行けないのだろうか。流行りのウィルスよりタチが悪い。
宿の人を待つあいだ、日帰り客が猫を撫でようとして逃げられていた。
そしてその猫はわたしに擦り寄ってきた。
昔から何故か猫には好かれるのがちょっとした自慢だ。気難しい猫なのにと飼い主が驚いたことも何度かある。
その逆で犬は苦手だし犬からもバカにされる。
人間関係もそんなものかな。
人間を辞職したアーティストがゴリラに憧れているらしい。
その歌を聴きながら帰った。
人間時代の曲のほうがわたしは好きだ。久しぶりに聴いてやっぱりとても好きだと思った。
あるフェスで彼の音楽を知り、そこから視野を広げることにしてみた。いろんな曲を聴くようになった。
その後はじめてひとりでライブに行ったのは彼のライブだった。
あれからなんでもひとりが平気になった。
ひとりたびの締めに相応しい気持ちになった。
いろいろとありがとうございます。
陰ながら感謝しております。
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