博耕房大学受験部からのメッセージ~読書のススメ②(ちょっと背伸びをしたい人向け)
皆さんこんにちは。
博耕房の現代文の授業を担当する予定の武川です。
・まずはお知らせです
5/10(日)に予定しておりました博耕房の体験授業は政府による緊急事態宣言の延長と特別警戒地域に東京都が指定されたことにより、中止いたします。
そして、5月度の博耕房の授業も中止いたします。博耕房は6月以降の開講を予定しております。(こちらも今後の政府の方針等により変化することと思われます。)
正式な情報は博耕房のホームぺージ、Twitterアカウントにて告知いたします。ご確認ください。
・今回のテーマ~読書案内②<ちょっと背伸びをしたい人向け>
さて、今回は前回に引き続き、「受験生のための読書案内」というテーマで書いていきたいと思います。
前回の記事もおかげさまでそれなりの反響がございました。(いいねが多かったのがうれしかったです。)
今回は「読書はたまにする」けれど「自分の趣味や好みに偏りがち」で、「何かおすすめはないですか?」と聞いてくる受験生向けの読書案内です。
(この時期はそんな質問が多かったなあ、とふと思い出しました。早く平常運転となる世の中になるといいですね。)
①『本を読む本』M・J・アドラー
このアドラーは「アドラー心理学」のアドラーとは別人です。
この本は、読書をすること、にとどまらず文章に向き合うこととはどういうことなのか、を述べた一冊です。なによりこの本自体が決して読みやすい本ではないのでまさに文章に向き合う力が試されます。
特に第二部の「分析読書」の項目は現代文の読解作業(とくにマクロ的な読解法)を網羅しているといっても過言ではありません。現代文にある程度の自信がある方はぜひとも手に取ってください。
②『社会を変えるには』小熊英二
え?新書なのに1,400円?と思ったそこのあなた。手に取ってみてみればわかります。この本の分厚さは新書のそれではないことに気づきます。これ以上に分厚い新書は大澤真幸の『社会学史』ぐらいだと思います。
これも講談社現代新書なのか。そして今回は講談社の回し者と思われるぐらい講談社の本ばかり紹介していますね。笑
さて、こちらの本(『社会を変えるには』)は「社会運動」にスポットを当てて民主主義の限界を紐解き、来るべき時代に市民がどのように向き合うべきなのか、を説いた一冊になります。
個人的には戦後日本のたどってきた歴史が見えてくること、とくに「大きな物語」と呼ばれるものが支配していた時代の最盛期とその終焉が分かりやすくまとまっていることが印象的でした。
昨年の「大学入試共通テスト」をめぐるインターネット上での議論の高まりが実際の政治を動かしたように現在は市民が社会を変える大きな武器を得ている時代です。しかし、武器ですから使い方を間違えると人々を傷つけるものになることも理解しなければなりません。このような事情も含めて我々がとるべき行動が何なのかを理解することは重要であると思われます。
そんなことを考える一助としてこの本を読むことは意義深いことであると思われます。
③『世界システム論講義』 川北稔
川北稔さんといえば、様々な方が勧める名著、『砂糖の世界史』が有名ですね。
この本とも共通しますが、世界を一つの大きな「仕組み」を持つものとしてとらえたウォーラーステインの『世界システム論』について、かみ砕いた一冊。
現代文でも頻出の「近代思想」「近代ヨーロッパ」がどのような過程で完成し、現在に影響を及ぼしているかが分かる一冊です。世界史選択者は副読本として、日本史選択者も江戸時代以降の日本の歴史を理解する背景知識を確認するものとしても有効です。
④『星の子』 今村夏子
現代の作家の中で天才はだれか、と問われれば今村夏子であると即答しています。
ほかの作品も秀逸です。昨年の芥川賞受賞作『むらさきのスカートの女』、短編集の『父と私の桜尾通り商店街』など、ここまでの作品も素晴らしいものばかりです。
彼女の作品に通底するテーマは「普通とは何か」であると解釈しています。我々は「普通」が何かを考え、そこに沿ったり、意図的に外れようとしたりします。紹介した三作も「主観的」な普通と「客観的」な普通の落差を読み手に考えさせる、そんな機会を与えてくれるものです。
特に『星の子』は「新興宗教」がテーマになっており、今後さらに混迷していくだろう時代の中でこの話の中にあるようなことも起こるのかなあ、などと最近ぼんやりと考えていたりします。
・まとめ
以上、4項目で8冊を紹介いたしました。①~③は内容も面白いですが、現代文の読解にもある程度役に立つ作品です。④はその奥にあるテーマなどを考えながら読むと豊かな読解力をつけてくれる、そんな作品です。
地域によってはまだ少し休講期間が長引くと思いますが、今自分にできることをしっかりとこなして豊かな学力をつけていただければいいなあ、と願っております。
その際に「博耕房大学受験部からのメッセージ」もご活用ください!
それでは!
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