responsibility - VBAやRPAなど、自動化のこと。

前口上

私は性格が悪いので、まず逃げ道から塞いでおこうと思う。

仕事に対する価値観として、

「その時間、拘束され、何かしらの作業をしていたことを、仕事を成したと考える」—— ①

「組織にとっての価値を生み出した、あるいは障害を取り除いた等、プラスになる行いをしたことを、仕事を成したと考える」 —— ②

どちらを「仕事」と捉えるかは、人による。いや、どちらか片方だけに100%寄っている、という人もさほど多くはなくて、割合こそ差があれど、どちらの要素もある程度は含まれるだろう。

どちらが正しいか、と大上段に構えるつもりはない。

ただ、いわゆる「自動化」は。
ここでのスコープである、VBAやRPAなど、単純寄りなIT業務の、エンドユーザーが関わりがちな自動化に絞ってみても。上記の①の考え方、すなわち拘束時間への対価、というものとは、きわめて相性が悪い。

なぜなら、自動化の目的は、省力化であり、人のやる作業を減らすことである。①の考え方に立っていえば、仕事を減らす行為に他ならない。
そして、①の考え方を重視するのであれば、そもそも自動化はさほど必要ない。
(多くの場合は従来通り)手作業で仕事をすればよいのだ。作業に必要なコスト、すなわち時間や人数は、おおよそ想定しやすい。つまりイレギュラーが発生しない。極めて合理的な人海戦術となる。

さて、それをVBAやRPAで自動化する、というのであれば、それ故に、①の観点は捨てなければならない。すなわち、仕事の価値を、苦労や拘束ではなく、成果という形で見出すことこそ、自動化のスタート地点であり、自動化を正当化する根拠になるのだ。

そう、成果こそが自動化を正当化するのだ。そうでなければ、少なくとも貴方が経営者や、あるいは自動化を行うことの担当者でない限り、自動化を行う根拠を欠くことになる。
このことを、努々忘れてはならない。


前口上Ⅱ - 会社は学校ではない

なんかそんな感じのキャッチコピーだかタイトルだったかのドラマがあって、それが話題になった記憶がある。
視聴したわけではないので、内容について語るような立場ではないが、「会社は学校ではない」というのは、まあ当たり前というか、常識の範疇内だろう。

でも別にそれは、会社で成長していけないというわけではない。
もっと言えば、会社を成長の道具にすることを否定しているわけですら、ない。ただ、あくまで、成長するのは付加価値的な要素であって、本質は業務を遂行することが主なのだ。

ほかに、会社側が個人の成長のために、バッファやリソースを設けることもある。
新卒社員などが顕著だが、即戦力ではなくても、教育することで、長期的に教育コスト以上の成果を出せるようにする、というのも、1つの会社の戦略ではある。
だがそれは、会社側の戦略故であって、社員が勝手に「私は勉強したら伸びて成果が出せるから、今は会社を勉強の場として使います。成果は二の次です」なんて言って、それが許されるわけではないのだ。


責任の所在

前口上が少し長くなったが、本題に入ろう。

VBA等で自動化を行う上で、継続性を担保しなければならないことは、以前に記事に書いた。(拙稿「持続可能なVBA」)

さて、貴方はVBAの初心者だろうか。中級者だろうか。上級者だろうか。そもそも、それらの尺度はどこだろうか。
いや、実は、そんなことは割とどうでもいい。ただ、必要なのは、そのレベル感を、

  • あなたは正しく認識していますか?

  • あなたの仕事に責任をもつ管理職は正しく認識していますか?

この2点が重要になってくる。

仕事を楽しむことは否定しないが、仕事は遊びではない。この場合の仕事と遊びの区別は、責任が発生するかどうか、だろう。
成果が出せなければ、それは仕事として不適格なのだ。どれだけあなたが努力しているつもりであっても、成果がでなければ、仕事として成功ではないのだ。

当たり前のことを書く。

VBAにしろ、RPAにしろ、最初は誰しも初心者である。いつまで初心者であるか、いつになったら上級者になるか、は、人によるだろう。
別に初心者であること、それ自体が、道徳的に間違っているとか、人として劣っているなどということは、全くない。その点において、個人として卑屈になる必要は、どこにもない。

ただし、【仕事を行う上で】という前提条件がつくと、初心者であることが許容されるかといえば、必ずしもそうではない。

熟練した上級者ではないゆえに、不足が生じることを許与するかどうかは、多くの場合、貴方が決めることではない。
それは組織のマネージメントを行う人が決めることなのだ。
なぜなら、必要な結果、そのクオリティとコスト、途中で発生しうるイレギュラーによるリスク等のバランスをとるのは、マネージメントの仕事だからである。

ゆえに。

VBAやRPAで自動化を行う人は、もしあなたが熟練者であり、客観的にきちんとした成果物を生み出せる、というのでなければ、そのことをマネージメントを行う人と、合意をとっておく必要がある。

なお、ここで言う熟練者というのは、前述の、「持続可能なVBA」に記載したような事柄を担保できることが最低限となる。
もっと欲を言えば、そのレベルの仕事を無駄なく行えて、必要なら教育や引継ぎを高精度で行えて、はじめて及第点となるだろう。


で、現実はどうよ?

さて、残念ながら。極めて残念ながら。それこそ「VBAer」を名乗っている人、あるいは「RPAやっています」なんていう人の多くは、この域には達していないのではないか。

繰り返すが、それ自体を責めるつもりは一切ない。別に私が、その人たちのマネージャーでもなければ、知ってる限りでは顧客でもないからだ。

また、個々の習熟途上の人が、そのレベル感を上司と共有したうえで、自動化を行っているのであれば、何も言うことはない。それは上司が、習熟してもらうことによるメリットや、熟練者ではない故のリスクを加味しても、自動化を行うことに価値があると判断して、GOサインを出しているからだ。

少なくとも、それで失敗したとしても、それは判断を誤った上司の責任であり、そのVBAerやRPAユーザーの責任ではない。(責任を問う組織はあるかもしれないが、それは間違っていると、私は断じよう。私が断じることに実効性がないと言われれば、それもまた事実だが)

しかし、上司に、自身が熟練者ではない状態で、自動化を行おうとしていることを、きちんと説明できていないとしたら。それは、きわめて憂慮すべきことである。なぜなら、失敗したときに、非常に不味いことになるのだ。

まず、失敗したときにあなたが責任を負うことになる。

そして、その被害が甚大であれば、VBAなりRPAなりへの悪評も生じるだろう。無許可、あるいはきちんとした合意なく使っていたのが悪いとしても、だ。

そして最後に。それは自己否定になる。つまり、労力や時間的拘束という観点の労働から、成果を旨とする労働へ勝手にシフトしたにも関わらず、成果を出せていないからだ。すなわち、やったことは——給料泥棒、そのものに等しい。言い換えれば、自身を給料泥棒にしてしまう所業なのだ。


じゃあどうすれば良いのか

方向性は大まかに2つ。

1つは、熟練する、すなわちプロとして振る舞えるようになるまで、業務の自動化に手を出さず、研鑽を積むことだ。但しこれは、言うまでもなく、「コードが書ける・ロジックを作れる」だけでは全然足りていない。むしろそれができるのがスタートラインで、それ以外に、ドキュメントの整備や、業務との整合性の担保、セキュリティの維持、保守体制の確保、などを自力でできるようにならないといけない。
まあ、茨の道である。

もう1つは、習熟するメリットをきちんと会社側(マネージャー等)に納得させ、その上でリスクを負ってもらうことだ。言うまでもなく「黙って自動化」なんてのは論外中の論外で、自身のレベル感や、自動化しようとしていること、それによって発生しうるリスク等だけでも、説明できるようにならないといけない。
もちろん、説明すれば許可してもらえるとは限らないので、実際には交渉や、将来的なメリットを提示できる必要があるだろう。


つまり

VBAにしろRPAにしろ、ツールが使えるだけで喜んでたり、ツール使えるからって、能天気かつ無秩序に、それを使っちゃう真似をしてる人が増えれば増えるほど。
何か起きるリスクは高まるし、一度、起きてしまえば、それらの使い方への締め付けは厳しくなるんだよ。
自分たちが使ってるツールと、自分たちの存在、両方まとめて社会悪みたいな扱いになる覚悟はある?嫌でしょ?そんなの。

みんな、大丈夫かい?能天気にVBAerやらRPAのコミュニティで集まって、ワイヤイガヤガヤ楽しんでるような状況かね?

と、私は危惧しているわけです。


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