なぜ大企業で企画する新規事業は上手くいかないのか?
こんちには。tkdです。
今回は「なぜ大企業で企画する新規事業は上手くいかないのか?」について記事を書いていきたいと思います。
まずはじめに大企業でも新規事業の立ち上げが求められている理由は何でしょうか?
VUCA時代になり環境変化が激しくなっており、既存の事業だけでは衰退してしまうからではないでしょうか。
実際に世界の時価総額を眺めてみると、直近の時価総額の高い企業はほとんどIT企業に入れ替わっています。
こちらは有名な話ですが、1990年代の世界の時価総額と2010年代の世界の総額の企業のラインナップが大きく入れ替わっています。
※2019.07.17 by STARTUP DB編集部「平成最後の時価総額ランキング。日本と世界その差を生んだ30年とは?」
この資料をみてみると特徴的なのが
・直近の時価総額の高い企業はほぼIT系企業(データ×AI関連)になっている。
・昔からの老舗企業ではなくこの数十年でできた企業。
このことからもITを活用した新しいサービスを市場に届けている企業が評価されている状態です。
さらにいうと、これからはAIを活用したサービスの普及が予測されるため、AIを活用したサービス展開をしている企業や多くのデータを保有している企業が評価されやすくなります。(なぜなら、AIは大量のデータを活用するため)
そのためには、より多くの人に使ってもらうサービスを生み出す必要があります。まさしく、google/facebook/amazonなどですね。
これからは5Gの時代になるので、IoTを活用したサービスが広がり、そこからデータを収集するということもあります。
また、中国のように大きなプラットフォームを持つ企業が集めたデータを活用して新サービスが生まれるということもあります。
よって、これからもITを活用したサービスを生み出すことが多く求められてくるかと思います。
少し余談になりましたが、新規事業の立ち上げが大事だという事はわかるが、なぜ大企業ではそれを行うことが難しいのでしょうか?
実は大手企業で新規事業を立ち上げるのは何気に難しくて、ソフトバンクの孫さんや最近だと新規事業が得意だったリクルートでも新規事業の立ち上げには苦戦しており、彼らは新規事業よりM&Aに力を入れ出している状況でもあります。
なので、新規事業の立ち上げは難しいと割り切って、孫さんのように資本力を生かして投資側回るというのはありといえばありかと思います。
ソフトバンクはご存知の通りソフトバンクビジョンファンドというものを立ち上げており、そちらに力を注いでいます。既に88社にも投資しているようです。(この記事を書いている2020年2月現時点では中々苦戦しているようですが。。)
※ソフトバンク2020年3月期 第3四半期 「決算説明会」より
リクルートの売上をみてみると最近ではほとんどが海外売上の比率となっています。その主な要因はHR Technology事業のIndeedや海外派遣領域で買収した企業になっています。半分くらいが海外売上になっているようです。
※リクルート2020年3月期第3四半期「決算説明補足資料」より
では、本題です。
私はベンチャーと大手企業で新規事業の立上げを行なっていた経験から、ベンチャーと比較しながら大手企業が新規事業を立上げが難しいと思われるいくつかの理由についてご紹介させていただきます。
①危機感が低い
大手企業とベンチャー企業と比較した時に当事者の危機感が圧倒的に違います。この差はとても大きいのではないかと思います。
ベンチャーは事業の立上げがうまくいかないと会社存続にまで影響が出てしまうため、何が何でもやり遂げようとしますが、大手企業の場合、仮に新規事業の立上げがうまくいかなくてもさほど担当者にとっては大きな影響はないです。
新規事業を任せられる人材であれば、社内でもそれなりに能力はある人の可能性の高いので、上手くいかなかったら他のとろこにいけばいいだけなので担当者に危機感を感じにくいという状態にもなっているというのはあるのではないでしょうか。
②意思決定の遅さ
これは大企業ならではの問題ではないでしょうか。
大企業は圧倒的に意思決定が遅いです。
私は大企業で新規事業の立ち上げをやっている時は、これが一番ストレスだったかもしれないです。
なぜ、意思決定が遅い要因としてはこんなところではないでしょうか。
1.承認の階層が深い
大企業の場合、マネージャー、担当役員、経営陣など様々なところへ承認が必要になります。
しかも、それぞれの責任者に説明をしておく必要があるので、アポをとって提案の機会を持つだけでそれぞれに1〜2週間ほどかかるので、それぞれに1巡提案をするだけで普通に1-2ヶ月かかる場合もあります。
でも、これがベンチャーであれば1週間くらいで完結してしまいます。場合によっては、新規事業なんて社長直下でやっていることも多いので説明する人の少なく1-2日で提案できることもあります。
このスピード感がなぜ大事かというと、提案に対するフィードバックをもらってから再提案するまでの時間が大幅に短縮できるので、PDCAサイクルが回しやすくなり、その結果早く実現に向けて動くことができます。
2.リーダーに知見がない
新規事業をする場合、全く新しいことをするのでリーダーが新規事業を立上げるためのスキル、その業界や産業に対する仕組みの知見が必要になってきます。
また、環境変化も激しいため、知っている事ばかりではないので、少なくともリーダーが学び続ける姿勢が必要になってきます。
何が言いたいかと言うと、知見がないと意思決定が遅くなるということです。
あなたが意思決定をする立場になることを想像してみてください。自分のわからないものに意思決定をしたくないですよね。
それは人間誰しも当然のことだから問題ないのですが、そのためにも意思決定を求められるリーダーは常に学び続ける必要があります。
大企業ほど過去の成功体験が良くも悪くも多くあります。それに縛られて、最新のトレンドを学ばずに過去の成功経験を元に判断しがちの人も多く存在します。
3.組織間の調整コストが多くかかる
新規事業の立ち上げを検討する際には、色々な部署などからの知見が必要になります。
例えば、技術的な観点であればエンジニア、法律的な観点であれば法務、場合によっては財務。などなど色々な部署との知見を借りる必要性が出てきます。
大企業には専門部門がそれぞれ存在していて横断的にサポートする体制になっていますので、各所との調整に時間がかかります。
具体例でいうと、
・部門が離れているので、誰が何をしているのかわからない。
・そのため、まず相談できる人を探さないといけない。
・物理的に距離も離れているので、打合わせで社内アポイントが必要。
・組織階層が深いので、その部門の上長に許可を取って進める必要がある。
とまあ、こういう調整に時間を取られることもあるので、正直中々無駄な時間を費やすことになります。
だから大企業って社内の調整役が上手い人や社内ネットワークが強い人が重宝がられるところもあるのかもしれないですね。
さらに面倒な事に権力に固執するマネージャーがいるところは、自分に話を通さないと他部門と調整できないようにしてくる人もいるのでさらに面倒ということもあります。。
③リーダーに方針を曲げられる
上記でも述べたようにリーダーによる意思決定は大きいです。
そのため、客観的に正しい意思決定ができるリーダーであれば良いですが、そうでないリーダーであると中々大変です。
基本的に人は自分のわかる範囲で物事を考えてしまう傾向があります。何が言いたいかというと、自分のわかる範囲以外のものに目を背けてしまう可能性があるということです。
要は自分のわからないことには目を背けて自分のわかる範囲の方針に曲げてしまうのです。
これは大企業であろうとベンチャーであろうと関係なくてリーダーの資質の問題かもしれないです。
もう少し語ると、はっきり言って新規事業なので何が正解かはわからないです。リーダーが理解できるかできないかなど関係ないのです。市場に投入してユーザーが良いといったものが正しいものだと思います。
なので、リーダーが理解できないといって起案を曲げられたり、自分のわかる範囲に曲げられてもそれが必ずしも正解ではないのです。
本来であればスモールスタートして検証しながらニーズを確かめてやっていくのがよい姿だと思います。
リーダーの自分が介在したいという自己顕示欲を考慮してると、スケールの小さい、市場ニーズとかけ離れた企画になってしまいます。
まあ、新規事業を立上げる場合は、関わっている人の強い意思がないと難しいので、誰から何を言われようと戦い続けるという姿勢も大事になってくるかと思います。
④担当者が自分の実績に走る
大手企業の新規事業担当者に多いのが、市場に対してどんな価値を発揮したいのかではなく、新規事業の立ち上げを行って自身の市場価値を上げる方に走ってしまう人が多い点です。
もちろん、ビジネスパーソンをやっている以上は実績をあげて市場価値を高めにいきたくなるのは当然なので気持ちは十分わかります。
ただ、これを目的にしてしまうと、市場に求められているものを作るという視点から、とりあえず事業を作るということが目的になってしまうので、市場に求められていることではなくどうすれば起案を通しやすくなるのかという視点に走ってしまいがちになります。
市場やユーザーをみて仕事をするスタンスから上司をみて仕事をするスタンスになってしまう人が多いのはこういったことだと思います。
結果、市場に求められている事実が捻じ曲げられたり、たいしてニーズないと内心思っていても突っ走ってしまうことがあります。
この場合、もしかしたら事業としては立ち上がるかもしれないけど、立ち上がったあとにユーザー視点になれていないサービスなので上手くいかないケースが出てくることが多くなると思います。
そして、その頃には立ち上げた人はいなくなってるケースとか。。
結局は「誰をみて仕事をしているのだ?」ということです。
市場を見て本当にユーザーのためになることを目的で仕事しているのか、それとも自分の評価をあげるために上司を見て仕事をしているのか?
ベンチャーの場合、上司に評価されたところで出世になんてならないですし、むしろ市場が上司のようなものなので、いかに市場に評価してもらえるかが大事になってきます。
⑤実は対して予算が取れない
これは意外かもしれないですけど、大手企業であっても意外と最初から数十億単位で予算をかけてもらって新規事業の立ち上げをするのは少ないかもしれないです。
経営陣の誰かが積極的にやりたいといった肝いり案件でないと予算は大きくかけてもらえないケースは多いです。
そう考えると、資金面に関しては実はベンチャー企業とあまりかわらないこともあります。
むしろ、ベンチャー企業で数十億単位で大型資金調達しているところと比較するとそっちの方が上かもしれないという状態にもなります。
もちろん、大手企業の良いところは資金があるところ以外にもたくさんあるのでこれが一概に悪いとはならないのですが、実情としてこういうこともあるということです。
⑦無駄に会議が多い
無駄に会議が多いことによって引き起こされる影響として、
・関係者が多くて中々物事が決まらない。
・時間を無駄に消費している。
というのが主にあるのではないでしょうか。
まずはじめにの「関係者が多くて中々物事が決まらない。」ですが、
最初は少数精鋭で進めることもできるのですが、気づけば関係者が増えてきて会議の参加者が多くなり中々話が決まらないということがあります。
部署が横断的に存在しているので各関係者が集まると人数が増えてしまうということかもしれないのですが、リーダーとなる人間が納得感ある意思決定をはっきりと示すことができるかどうかで解決することができると思います。
これができないとダラダラとした感じで何も決まらずグダグダになってしまう恐れがあります。
次の「時間を無駄に消費している」ですが、
これは関係者が多いというのもあり、いろんな人に説明するため同じような会議をしているケースはないでしょうか。
正直、同じような話を何回もするのは時間の無駄ですよね。
会議の設計が悪いというのもありますが、同じような話であれば、wikiや共通のフォルダ、もしくは会議内容の議事録をチャットなどで展開しておけば済むので同じような話を何回もする必要はなくなります。
工夫次第でなんとでもなりますね。まあ、会議をいっぱいすることで仕事をした気になっている人もいるのかもしれないですが。
ただ、それ以上に面倒な問題があります。
中途半端に発言権があって中途半端に絡んでくるやつがいるということです。
美味しそうな話であれば自分もちょっと噛ませてくれよって思っている人が群がってくることです。
ご想像つくかもしれないですが、むちゃくちゃめんどくさいですね。
上記でも述べたようにそういう人って中途半端に発言権があるのです。
その時に中途半端に色々情報を握って、実際に稼働している現場に情報が降りて来ないという状況を作ってしまうこともあるので、そこでの調整コストがかかってしまうのがまためんどう・・
ただ、逆説的になるのですが、こういう面倒な人が絡んでくるということは、それだけプランに魅力があるかもしれないということかもしれないですけどね。
⑨パワポ文化
パワポ文化と書きましたが、資料文化と読み変えても良いかもしれません。
打ち合わせの度に資料を作らないといけないケースやまだ検討フェーズにも関わらず全力で資料作成を求められるなど。
色々な理由はありますが、よくあるのは上司が理解できないパターンが多いためと資料をいっぱい作ることで担当者が仕事してる感がでるということです。
はっきり言ってそれは仕事ではないですよね。もっと他に時間を使うところがあるはずです。
社内提案以外にアライアンス先などの関係各所にいろんな場面で活用する資料なのであれば一度整理するためにも作っておいても良いかもしれないですが、一度しか使わないくらいであれば綺麗な資料なんて不要です。
箇条書きのメモでもよいのではないかと思います。
おわりに
こういった諸々の課題はあるのですが、これってそんなに改善するのが大変なのかという言われると、全然改善はできる余地はあると思っています。
逆にこういった組織のダメな点を改善して、新規事業を立ち上げやすい環境を作ることも可能になってくると思います。
新規事業の立ち上げに精通しており、リーダーが正しくリーダーシップを発揮できる環境を作ることが大事なのではないでしょうか。
人間なので色んな思惑が出てくるかと思います。
そんな小さなことに捉われず、自分はなんのために仕事をしているんだということを考えたら、社会により良いサービスを提供することの方が社会のためにもなるので、自分も自身を持って取り組めるのではないかと思います。
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