誰のための感想なのか

感想屋さんというものがTwitterで話題になっているのを見て、ふと思い出したことがある。
以前、唐突に漫画「マギ」に再熱しどハマりした時のこと。毎週毎週サンデーを読むことが本当に楽しみで、日付が変わると同時にコンビニへ向かい、待ちきれずに帰り道で歩きながら読んでしまうほどだった。
大きな感動や憤り、驚きや喜び、いろいろな感情をマギが与えてくれたため、自分の中のインプットの許容値を超え、どうにかしてこの思いを表現したいと思ったのだが、残念なことにその時既にマギの人気が最盛期ほどではなかったことや、そもそもTwitterなどで友人を作ることが苦手な自分は他人と感情を分かち合うこともできず、日々溢れ出そうな思いを抱えていた。
そんな時、「サンデー漫画家バックステージ」というHPがあることを発見し、その中に、作者の大高忍先生のページを見つけた。
とんでもなく大変な週刊連載を執筆している傍で、大高先生はなんとほぼ毎週そのバックステージを更新して下さっていた。初めて見た時はそのあまりの有り難さに震えが止まらず、今までの更新分を時間を忘れて読み漁った。毎週こんな思いで書いていて下さったのか…まさかここが伏線だったのか…などなど…更に自分のマギへの思いが募る中で、「大高 忍先生への励ましメールはこちらへ」というリンクを発見した。これしかない、と思った。
自分のこんなとりとめのない感情が励ましになるとは全く思わなかった。それでもこのあふれんばかりの気持ちを伝えたいという思いを止めることができず、夢中で感想を書いた。それからは、連載が終わるまでの約2年間くらいほぼ毎週感想をメールで送った。送った後は「送信が完了しました」のコメントが出るだけで、果たして本当に大高先生の元に届いていたのかは定かではない。でも、その簡素な対応がむしろ心地よく、ある意味で何も気にせず自分の思いのまま綴ることができた。
その週のどのコマが一番好きだったか、どのセリフに感動したか、こんな展開が待っていたなんて本当に驚きです、このシーンは以前のあのシーンとつながってますよね?etc…感想を書いている間の自分は頭の中が全部マギでいっぱいでマリオのスター状態のような無敵感があった。本当に、幸せな時間だったと思う。自分は、自分のために感想を書いていた。

余談ですが、連載最後の年のサンデーの年賀状企画で本誌、増刊号共にマギの年賀状が当選した際はリアルに腰が抜け涙が止まらずもしかしたら神様っているのかもしれないと思ってしまった。間違いなく人生で一番嬉しかった年賀状です。そしてまた、激重長文感想メールをしたためるのでした。

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