【第10話】不安
私は今、強烈な不安に襲われている。
忘れもしない、2022年4月24日。
試合も残すところ10分、15分くらいだっただろうか。
相手選手との接触、そして着地の瞬間にこれまで感じたことがないほどの痛みが身体を駆け巡った。
あ〜、これはだめだな。
そう理解するのに大した時間はかからなかった。
右足関節内果偽関節部再骨折。
手術以外に完治はない怪我だ。
なんとか手術を回避する方法を模索し軽いジョギングができる程度にはなったが、結局それ以上の回復は見込めなかった。
入院期間は5週間、復帰まで半年かかると言われた。
今現在、手術は無事成功し入院しながらリハビリを開始している。
痛みや、思い通りに動かない身体と懸命に戦いながら。
しかし、入院もラスト1週間となったこのタイミングで突如として強烈な不安が私を飲み込んだ。
ワンピースが終わらない。
入院期間が長いからとおすすめされたワンピースがどう計算しても退院までに観終わらないのだ。
正直舐めていた。
長さと面白さを。
もう、どの話を観ても泣いて泣いて仕方ない。
同室の方々どうか心配しないでください。
面白いから次々観ていくのだが、観ても観ても観ても観ても全く終わりが見えてこない。
描きすぎじゃない尾田さん。
退院後もしばらくは仕事にも練習にも行けないため観る時間はあるにしても、それを足したって到底観終わらないほどの残話数が存在する。
正直今の私には、リハビリなんかしている時間がない。
リハビリしている間は観れないし、リハビリをすると復帰が早くなってしまうのでまた観れる時間が減ってしまうからだ。
しかし、リハビリの時間は無情にも毎日やってくるし、足の状態は日々改善されていっている。
まずいまずい。
このままでは最新話に追いつく前に復帰できちゃう。
さらに、私の不安はこれだけではない。
もう1つ大きな問題が私にはのしかかっている。
それは、
「普通この歳で入院なんかしたら皆んな色んな資格の勉強とかすんねやろな〜」と思いながら平然とワンピースを観続けていることだ。
大学時代を振り返るより30代を見据える方がより鮮明に映り始めるこの年頃に、莫大な自由時間を得た人間がすることがアニメを観腐ることかね。
自分が信じられない。
結婚して子供がいてもなんら不思議ではない年齢だぞ。
私が今考えるべきことは、ルフィの航海より自分の将来だろう。
何度もそう言い聞かすが全身麻酔の後遺症なのだろうか、身体が言うことを聞いてくれない。
気が付けば、観て泣いて観て泣いて。
そんな情けない自分にまた涙して。
人生とサッカーと、それとワンピース。
この怪我は私にとって本当に大切なものはなにか、神様からの問いかけなのかもしれない。
選択の時は刻一刻と迫っており、迷っている時間はあまり残されていない。
来たるべきその時どんな決断を下すのか、私も私自身の選択が楽しみで仕方ない。
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