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「誰かを応援する」と言う娯楽 5

今回は趣向を変えてiPhoneから文章を入力している。(いつもはPC)

不思議なもので、入力するデバイスが違うと同じことを書こうとしていても文章のテイストがかなり変わる気がする。

筆が乗ったり滑ったりする具合が入力方法によって異なるのだろうな、と思ってはいるが、具体的にどう異なるかは検証していないのでわからないままである。

きっと原稿用紙に書いてもまた別の文章が生まれるのだろうな。音声入力ならどうだろうか、きっとくだらない言葉遊びばっかり入って話が全く進まない気がするし、それはそれで面白そうな気もする。あ、ガラケーで小説を書くって言うのはどうだろうか。きっと流行るぞぉ〜?

さて、本題であるが、なぜ蒲田の温泉はあんなにお湯の色が黒いかと言う話である。皆さんはご存知だろうか。

その日僕は東京出張に来ていて、何故か宿が蒲田のホテルだった。

多分安かったんだろうな、と到着と同時に察するくらい年季の入った今夜の宿は、「あれ?なんか化かされて本来は存在しないホテルの幻覚を見せられてる?」と疑うほどのアンティーク感と言うか、不思議な佇まいだった。なお、人里離れた山奥などではなく、しっかり駅前である。

そして通された部屋がまぁタバコくさく、今どき喫煙ルームの方が設備整っててまだましなんじゃないかと思いながら、とりあえず温泉らしいとのことで大浴場に向かい、そのあまりのお湯の黒さにびびる。

誇張抜きで、ハースストーンに出てくるタールクリーパーと言う黒いミニオンと同じ見た目のお湯だったので、ずっと脳内で「騙されて沼に入っているのを狸や狐が嘲笑している様」を思い浮かべながら入浴した。いいお湯だった。温泉さいこー。

部屋に戻り、湯上り気分が一瞬で消え失せる強烈なタバコくささにげんなりしつつ、ベッドに横になりながらスマホを見ていると、忙しくて見れていない間にYouTubeに新しいzico39チャンネルの動画がいくつかアップされており、その中の一つ、最新の動画が「レジェンドへ」と言うタイトルと、謎に神々しいサムネイルだった。

最近は合間合間にYouTubeの動画を少しずつ見るようにしていたので、ここまでランク5から少しずつ勝ち上がっていたのは知っていたが、YouTubeに上げられている動画では全ての勝ち負けを追えるわけではないので、「あれ?本当にレジェンド上がったの?それともなんか釣り的なやつ?」と半信半疑で動画を再生した。

動画は相変わらずなんとなくあれな感じの、なんか仲良くなれなさそうな兄ちゃんがいい声でオープニングトークを繰り広げていた。「いやこれは釣りっぽいな」と思いながら観ていると、試合のシーンが始まった。

画面上では確かにあと一勝でレジェンドに上がれる表示になっていた。しかし相手は武器ローグと言うデッキで、「キングスベイン」と言う「壊れても何度も山札に戻り、そこから手札に戻ってくる」特性を持った武器に、攻撃力アップや与えたダメージ分自分は回復する性能を複数付与して強化し、終盤に相手がもう対策できるカードが尽きた状態になっても、何度でもキングスベインで回復しながら攻撃できると言う、当時非常に猛威を振るったデッキだった。

対するzicoさんはもちろんミルローグを使用しており、「相手の手札が10枚(所持できる上限)の時に、強制的に相手にカードをドローさせる効果を持つカードを使用することで、ドローされるはずだったカードを消滅させ、山札のカード切れを狙って勝つ」デッキである。

ここまで聞いて賢い人は「キングスベインを強制ドローで消滅させたら勝ちじゃん」と気づいたかも知れないが、まずそもそも初期手札が3〜4枚であるため、「相手の手札が10枚」になる状態を作ることがまずもって難しく、また武器ローグ側は山札から直接キングスベインを手札に入れることができるカードも複数枚デッキに組み込んでいる(※強制ドローによる消滅は山札にあるカードにしか狙うことができない。キングスベインを消滅させるには装備状態でも手札にあってもダメ)ため、実のところミルローグ側は「どうにかして武器ローグの手札が10枚かつ山札にキングスベインがある状況を作り出し、強制ドローでたまたまキングスベインを引かせて消滅させる」のようなかなり偶然性も伴う高難易度な勝ち方を求められる。そうできなかった場合、めきめき強化されたキングスベインで何度も攻撃されて敗北する羽目になる。

当たり前だが、デジタルなカードゲームで、見知らぬ相手とのネット対戦であるため、八百長や忖度は存在しない。相手はミルローグだと気づき次第、キングスベインを消滅させられないように警戒してプレイするだけで大方勝てるはずだ。一方ミルローグは一点突破でキングスベインをなんとか消滅させないと勝てない、この局面で「武器ローグのキングスベインを消滅させて勝ってレジェンド到達」なんて、そんな上手い話があるはずがない。キングスベインは燃やせない。

だけど

ずっとミルローグを使い続けて、環境の変化による弱体化も工夫で乗り越えて、他の強いコンセプトのデッキよりも圧倒的に勝率も低い中、やっとのことでレジェンド到達目前まできた彼が、そんなかっこいい勝ち方でレジェンドに到達する様を僕は見たいと思った。

折しも、デッキのキーカードである「コルさん(自分も相手も2枚ドローする効果)」が次の環境で使用できなくなるとの発表を受けたタイミングだったので、「ミルローグでのレジェンド到達」はこの環境がラストチャンスだ。

出来すぎでも上手くいきすぎでもいいから、勝ってほしい、レジェンドに到達してほしい。スマホを握りしめながら願った。

「コルさん来てくれ、、、!」

しかし、勝利への絶対条件であるコルさんはなかなかzicoさんの手札には入らず、対する武器ローグはすでにキングスベインを装備し、着々とその強化が進んでいた。(続く)









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