おばあさん
近所のCOOPに買い物に行った時、見知らぬおばあさんに話しかけられた。そのおばあさんは俺にこう聞いた。「あなた、シイタケよね?」。
一瞬、考えた。俺はシイタケなのだろうか。あながち、間違いではない。きのこは人一倍好きだと思う。栽培物に飽き足らず、野生のシイタケを探して炭火で焼いて食べたこともある。だからといって自分のことをシイタケと言うには行き過ぎに思えるが。それはそうと、例え俺がシイタケだとしても、見知らぬおばあさんが知る由がない。
何か勘違いしてそうなのでよく話を聞いてみると、先程きのこコーナーでシイタケを買おうか迷っていた男性と俺を見間違えたらしい。その男性が売り場を去ってすぐ、シイタケに値引シールが貼られたので教えてあげようと思ったようだ。
見ず知らずの人間にそんな親切なことができるだろうか。俺だったら勇気が無くて出来ない。残念ながら人違いだったが、おばあさんの優しさに胸を打たれた俺は「でも、教えてくれて、ありがとうございました」と、よく分からない返事をして家に帰った。
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