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Mac Millerの生涯と楽曲の紹介

多くの人に愛されながらも26歳という若さで亡くなったMac Miller。彼の楽曲はヒップホップが好きな人だけではなく、他ジャンルが好きな人からも評価を受けています。今回は彼自身についてとその楽曲のベースについて触れていきます。

Mac Millerについて

Mac Miller(Malcolm McCormick)はアメリカのペンシルベニア州ピッツバーグ出身のラッパー、シンガー、音楽プロデューサーです。15歳の時からミックステープを作り、Ms.Laurin Hill,OutKast,A Tribe called Questのような90'sのアーティストから影響を受けていました(その後Eminemにも影響を受けたと語っています)。そんな彼のミックステープの"K.I.D.S"が大きな注目を集め、2011年にリリースしたアルバム『Blue slide Park』でデビューを飾り全米ビルボード200で1位を獲得しています。

その後2013年にはAriana grandeの『The way』でフィーチャリングとしての参加や2作目のアルバム『Watching Movies with the Sound Off』で全米ビルボード200で3位を記録、2015年には3作目のアルバム『GO:OD AM』2016年に4作目のアルバム『The Divine Feminine』2018年に5作目のアルバム『Swimming』をリリースしどの作品もチャート上位を記録しました。しかし、彼は鬱と薬物乱用であることを語っており、2018年に自宅でこの世を去ります。その後、2020に年に最後の作品『Circle』がリリースされました。

Mac Millerの初期のアルバム(K.I.D.S, Best Day Ever ,Blue Slide Park)は彼が影響を受けている90'sのヒップホップの印象があり、Blue Slide ParkとMacadelicは後期のような実験的サウンドを取り入れた楽曲と90'sのヒップホップを感じさせる楽曲がいいバランスで入っています。

短期間に多くのリスナーを虜にした作品を生み出した彼ですが、今回は僕が選んだ彼を代表する5曲であり、ベーシストという面からベースが際立っている作品を紹介したいと思います。

Senior Skip Day

この楽曲は彼が注目を浴びることになった作品『K.I.D.S』に収録されているものになります。シンプルなビートとシンセのサウンドの中を波のように動くベースラインはMac Millerの作るラップやメロディのとともに楽曲をリードしているというのが注目ポイントです。

リリックの方は人生楽しもうということを綴っています。PVでもその感じは見て取れますね。この楽しいパーティーでかかりそうなサウンドは初期の楽曲の特徴の1つです。

そしてこの楽曲のリリックは僕たち日本人にはあまり馴染みのない言葉が多くあります。まずはこの楽曲のタイトルを見ていきましょう。

"Senior Skip Day"

これは自分で作った造語ではなく、”高校の最高学年が1年に1度だけ全員で学校をサボることを許される日”を意味するみたいです。アメリカの高校では先生に秘密にして1日だけ学年全員が一斉に休むのを許される伝統があるみたいです。ちなみにSeniorは日本語で高校4年生(アメリカの高校は4年制)を指します。

この曲には他にもこんな表現があります。

Let's chill on the couch
(ソファの上でリラックスしよう)

この場合の"Chill"は”冷やす”というよりも”リラックスする”と捉えるのが一般的なので洋楽を聴く時の知っていると便利ですよ。あと、"Weed"は”雑草”というよりも”はっぱ”と捉えることをお勧めします。

Brand Name

この楽曲は3作目のアルバム『GO:OD AM』に収録されているものになります。楽曲のコーラスの歌声にユニゾンしながらも自由に動くベースラインはシンプルながらもベースという楽器の良さを前面に出していますね。楽曲内での存在感とその自由度がはっきりとわかる作品です。

この楽曲はMac Miller自ら自身の死を疑っていたのではないかという憶測があり、リリックの中に

To everyone who sell me drugs:
Don't mix it with that bullshit, I'm hopin' not to join the 27 Club

というものがあります。これを簡単に訳すと

俺に薬を売っているみんなへ
テキトーにものを混ぜないでくれ。俺は27クラブではないことを願っているんだ。

という風になります。彼はオーバードーズでの死でしたが過剰摂取での死ではなく、ここのリリックにある”テキトーに混ぜられたもの”を摂取し偶然なくなりました。まさしくこのリリックの通りの死を遂げてしまったのです。

下記のサイトでこの楽曲の考察がされてあります。英記事ですが興味のある方は参照してみてください。


My favorite part(feat.Ariana grande)

この楽曲は4作目のアルバム『The Divine Feminine』に収録されているものになります。アダルトでシックな雰囲気が漂うバンドサウンドにAriana grandeとMac Millerの歌声が絡みつきます。ベースラインは和音やグリスがなんとも大人っぽいですね。リフ最後の3連の使い方もとてもおしゃれです。

この『The divine Feminine』はAriana grandeだけでなくkendrick LamerやAnderson Parkなど著名なアーティストが多く参加しています。Ariana grandeとは2016年から2018年まで交際していました。しかし、その後破局することになるのですが、Mac Millerは『Buttons』『Small Worlds』『Programs』の3曲でその心境を綴っています。

破局の原因は二人の多忙ゆえのすれ違いと言われていて、Arianaは破局後も彼の薬物依存から救われることを願っているとインタビューで答えています。しかし、その願いも叶わず彼はオーバードーズで亡くなってしまいます。死後、彼女が出したシングル『Imagine』は亡Mac Millerに送ったものではないかと言われてます。

以上のことから2人の深い関係性はよくわかります。このMy Favorite Partのリリックの冒頭でこのようなものがあります。

Said, you just don't know how beautiful you are
And, baby, that's my favorite part

これを日本語に訳すとこのようになります。

ねぇ、君はまだ自分が美しいのか知らないんだ。
でもね、そこが気に入っているところなんだよ。

この曲はMac MillerがAriana Grandeに向けた1曲というのがよくわかります。

What's the use?

この楽曲は5枚目のアルバム『Swimming』に収録されている楽曲のなります。ベースラインとボーカルラインがユニゾンしているのが気持ちいいですね。『My Favorite Part』と同じく彼の楽曲の中でも多くの人に聴かれているものになります。

この楽曲のベーシストはThundercatなのですが、彼はMac millerとも仲が良く上記のNPRでのライブはThundercatがヨーロッパツアー中にワシントンまで飛行機で行き、その後すぐにヨーロッパに戻ったとツイッターでつぶやいていたようです。このライブ以外でもWhat's the use?のMV撮影の話をしたり、最新アルバムの『Circle』の感想を求めたりとMac Millerも彼を友人としてアーティストとして信頼をしていたようです。

彼が亡くなる前夜もThundercatは電話で通話していたようで、インタビューでは『冗談を言い合ったり、MVの話をしたりしていたんだ。その後眠りについて起きると彼は死んでいて恐怖した』と言っています。

上記にあげたNPRのTiny deskのライブはそんな2人が一緒に写っている珍しいもので、Mac Millerが行なった最後のライブになります。

Circles

この楽曲は彼の死後リリースされたアルバム『circles』に収録されているものです。ベースが和音やリードの役目を担いとても穏やかな雰囲気を醸し出しています。

このアルバムは前作の『Swimming』と対の作品として制作されたものになります。『Swimming』と『Circle』でお互いないものを補い合い”円の中を泳いでいく”というのがコンセプトにあったようです。

この曲の歌詞は全体が苦悩に溢れたものになっていてMac Millerが自分自身に思い悩んでいたことがよくわかります。リリックの中にこのようなものがあります。

And I don't have a name, I don't have a name, no
Who am I to blame? Who am I to blame though?
And I cannot be changed, I cannot be changed, no
Trust me, I've tried

これを日本語に訳すとこのようになります。

俺には名前がないんだ
俺は誰を責めることができる?誰にできる?
変わることができなかったんだ。変わることができなかった。
信じて、努力はしたんだ

彼が全てのことを諦めている感じが伝わります。

Mac Millerの功績は華々しいものです。アルバムを出せばチャートにのり成功を納めます。しかし、その裏ではデビュー作で多く酷評を受けたり(作品よりも人格批判が多かったよう)、そ結果引きこもりドラッグに手を出してしまう、といった苦痛もあったようです。自身でも立ち直る努力や友人たちの協力もありましたが、彼はこの世を去ってしまいました。


【筆者紹介】
土田 航(つちだ こう)
京都でベース講師をやっております。
Youtubeにて弾いてみた動画やレッスン動画掲載中
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