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【要約】 #広島原爆の日 祈念「全く同じ状況下で同じ命令があれば自ら志願して原爆投下に携わっていただろう」エノラ・ゲイ最後の搭乗員ヴァン=カーク航法士のインタビュー動画(2010.8.6)

[Published: 2020/8/6] - 以下Tumblrより転記

はじめに

以下は、広島に原爆を投下したB29爆撃機エノラ・ゲイ号搭乗員の最後の生存者である故セオドア・ヴァン=カーク(Theodore Van Kirk)航法士に対するRT(ロシア・トゥデイ)の インタビューへの応答を、動画を流しながら意訳したものである。決して一語一句が正確なスクリプト翻訳ではなく、正確な英文スクリプトを起こしたのちに和訳したものではない。カーク航法士の語った内容の要約に近いものなので、そのことを承知のうえで読み進んで頂きたい。時折、日本人としてこの部分は実際に何を言ったのか知りたいだろうと思われる部分については、原文を併記して要約している。

動画

動画の内容

最初の約3分間は原爆投下までの行動の説明なので省略。

インタビュワーの質問はここから始まる。

―搭乗した後はどのような気持ちでしたか。

何もかもが予定通りだったので気軽だった。あとは投下の瞬間を待つだけだった。投下したときは機体が飛び上がったが無理もなかった。あとは旋回して現場を離脱するだけだった。

その時一番心配だったのは、この爆弾が本当に機能するかどうかだった。なぜなら、この爆弾は一度もテストされたことのないシロモノだったからだ(実際にテストされたのはプルトニウム爆弾だった)。これを確認するのに45秒かかった。

激しい閃光がほとばしり、その瞬間爆弾が機能したことを確認したんだ。最後の疑問は、爆発が機体にどんな影響を及ぼすのかということだった。そのすぐ後に、最初の衝撃波に見舞われ、機体が激しく揺さぶられた。3.5G位あったかな。戦闘機のパイロットにすれば大したことないかもしれないが、高度3万フィート のB29重爆撃機で感じる衝撃は凄まじいものだったよ。

衝撃波が収まったことを確認して、われわれは眼下の広島に目をやった。広島市は完全に煙や灰燼に覆われていた。その灰燼の奥がどのようになっているか、視認はできなかったがどれほどの破壊がなされていたのかは感じ取ることができた。

― ニューメキシコで最初の原爆実験が行われたときのことを、マンハッタン計画の責任者であるオッペンハイマー博士はその手記でこう振り返っています。 「ほとんどの人が無言で、涙を流した人はわずかだった」(few people cried, and most were silent)。原爆が起爆したとき、あなたはどのように感じられましたか?

まず、うまく起爆できたことが嬉しかったよ。それが第一だね。

長い戦争だったし、当時は酷いことをしてた日本人に一矢報いることができた。私の隣人はPOW(戦時捕虜)として囚われていたから私よりもこのことを実感している。「バターンの死の行進」やソロモン諸島での死闘などあったからね。

合衆国政府の当時の方針は、日本という国家を制圧(subdue)することだった。そのために私にできることがあれば、何でもする覚悟だった。つまり、日本を制圧することは私自身の方針でもあった。

だが、ここでひとこと言わせてもらいたい。

現代の日本人は、第二次世界大戦でわれわれが戦った日本人とは違う。現代の日本人は、良い人たちだ。私のカリフォルニアの実家では、日本人の学生たちを何年もホームステイさせたこともある。彼らには全く問題はなかった。

だが二次大戦中の日本人は、そんなに良い人たちではなかった。当時の日本人については、それだけは言っておきたい。


― 広島と長崎にこれほどの破壊をもたらしたアメリカ人を、日本の人びとは心から許せるようになると思いますか?

そんなことはわからないよ。もし私が当時広島や長崎に住んでいたら、私も許さないだろう。彼らは非常な苦しみを味わったからだ。だが、このことを彼らが受け入れるか否かにかかわらず、原爆投下は我々アメリカ人を守ると同時に、彼らも、日本人も守ることに繋がったのだ。(dropping the bomb saved our lives, their lives, Japanese lives)

もしわれわれが日本に侵攻していたら、日本人の犠牲ははるかに多かっただろう(If we had had to invade Japan, the Japanese casualties would have been much, much, much, much higher)。われわれの側の犠牲もだ。

実は、この侵攻作戦に参加した兵士に授与する予定だったパープルハート勲章が未だに実在し、授与されし続けているんだよ。知っていたかい?

ひじょうに凄惨な戦争だった。
5000万人が亡くなった大戦争だったんだ。
あの戦争を悪く語る話はいくらで出てくるよ。

―原爆投下と同じ目的を達成するために、原爆投下を敢えてを避ける選択肢はあったと思いますか?

選択肢は3つあった。

ひとつは、日本を包囲して兵糧攻めして、日本人を飢え死にさせること。しかし、一日わずか1000カロリーで生活している日本人をどうやって飢え死にさせられるのか。できるわけがない。

残りの二つの選択肢は、日本に原爆を投下するか、日本に全面侵攻するかのどちらかだった。

原爆投下なら全体的な犠牲を抑えることができたが、全面侵攻となると――どの兵士に訊いてみても、彼らは原爆を選んだだろう。

私が原爆を落としたことを知った私の隣人は、朝6時に私を叩き起こして「あなたがしたことを今日初めて知ったよ。あなたは命の恩人だ!」と言われた。大平洋に展開していた兵士は誰もが、私に「命の恩人だ」と言ってくれるよ。

― 史上初めての原爆投下となった、あの任務に参加したことを後悔していますか?

まず投下任務が必要だったことを残念に思うよ。すべての投下任務について後悔はしているよ。ヨーロッパでも沢山爆弾を落として多くの人々(一般人を含む)を犠牲にしてきたからね。

だが、原爆投下任務を後悔しているかといえば、投下する必然に迫られたことは残念に思う。(But do I regret the atomic mission? I regret we had to do it)

問題とされた箇所

※以下、国内ツイート上で問題となっている箇所(2010年時点)

—– ここから —–

いつだったか、誰かが、「我々に原爆を投下させた日本こそ米国に謝罪せよ」などと主張しているのを聞いたことがある。これはさすがに私にとっても初めて聞く発想だったがね。(There was a thought I heard the other day…what was that, he was saying that Japanese should apologize for us for making drop the atomic bomb. That was a new twist on things I’ve ever heard before.)

—– ここまで —–

(続き)

やらなければ[投下しなければ]ならなかったことは残念に思うが、犠牲を最小限に抑えるためには、やらなければならなかったと思う。

― 核戦争勃発の可能性は現代でも存在しますが、世界に現存する核兵器のスイッチを握る政治家たちに何か伝えたいことはありますか?

外交官だろうか政治家だろうがどんな権力に対しても私が必ず言うのは、「核兵器が使用されるのは金輪際みたくない」ということだ。(I’d like never to see another atomic weapon used).

だが、いずれ核兵器は使用されてしまうだろうと思う。それはロシアや大国によるものではない。私は恐れるのは、テロリストたちが核を所有する日が来ることだ。

なぜなら彼らは核兵器使用の影響についてわれわれ、大国ほど思慮深くないからだ。(because they are not … near as thoughtful of the consequences of nuclear bomb as we are, as major powers are.)彼らはまるで玩具のように軽く弄ぶことだろう。

― では最後の質問です。仮に、あくまで仮にですが、第三次世界大戦が勃発したとして、あなたに全く同じ任務が与えられたとしたら、つまり指定されたある都市に核を落とすよう命じられたら、あなたはそれを実行しますか?

当時と全く同じ状況下で同じ命令があれば―もちろんそれが不可能なのはわかっているが、だが1945年当時と全く同じ状況下であれば、自ら志願して原爆投下に携わっていただろう。望んで参加しただろうと思う。

以上

急いで作業したので誤字脱字ご容赦。(※2016.05.25再掲時に一部修正)

コメント(YouTubeに実際に投稿)

He’s got some guts to come out in the open to say this. I respect his loyalty to his country and to the military order to drop the A-bomb, but his comment is unacceptable considering that use of nuclear weapons in today’s international order would constitute a crime against humanity. If he knowingly follows the order of the superior to drop the A-bomb again, he and his superior would be prosecuted as a war criminal by the International Criminal Court today

(Japanese translation for ja viewers): このような発言をオープンに行う彼は勇気がある。彼の祖国及び軍事命令に対する忠誠心は尊敬に値するが、彼のコメント(※)は到底受け 入れられない。現代の国際秩序においては核兵器の使用は人道に対 する罪となるからだ。仮に彼が、[原爆の威力と効果を]十分承知 の上で上官の命令に従って原子爆弾を再び投下する選択をした場合 、彼とその上官は国際刑事裁判所において訴追されることだろう。

注:ここでいう「コメント」とはインタビューの最後で彼が応えた部分で、動画のタイトルにもなっているコメント「全く同じ状況下で同じ命令があれば自ら志 願して原爆投下に携わっていただろう」(I’d drop atomic bomb on Hiroshima again if needed)のこと。

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