to B SaaS企業を2社経験して感じた、プロダクトマネージャーに大切なこと
はじめに:これは何か(そして私は誰か)
はじめまして。釜井達矢(カマイ タツヤ)と申します。
(自己紹介は別記事に任せます)
こちらは株式会社ログラス Productチーム Advent Calendar 2022、12月19日分の記事となります。
本稿では私の主観に基づき、「プロダクトマネージャーとして価値を出すために大切なことって、こういうことなんだろうな」と思っていることをつづりたいと思います。
あえて「必要なスキル」とか「やるべきこと」といったhowに寄った形でなく「大切なこと」と表現しているのは、ここで伝えたいのが特定のスキルや経験に関する事柄などではなく、むしろattitudeといった類のものだからです。
プロダクトマネージャーとして大切なこと
私は前職(株式会社Hacobu)では物流ファンクションで利用いただくためのアプリケーション「MOVO」のプロダクト責任者として、一時期はエンタープライズセールスを兼務しながらプロダクトづくりに邁進しておりました。
元々富士フイルム~デロイトトーマツ時代と一貫してSCMに関わる仕事であったことから、物流機能に対する基礎知識は持っており、かつ初期は人不足で商談に飛び回っていたことから、かなり深いレベルでアプリケーションのターゲットとする業務領域の知見を有することができました。
そんな経験から「いっぱしのプロダクトマネージャーとしてやってきたぞ」「価値出したるぞ」と意気込んで入社したログラスでは厳しい現実に直面することとなりました…
大切なこと①:プロダクトマネージャーの役割は動的に変わる
あらゆる単語の定義は消極的に定義されるものですし、組織でビジネス活動を営む以上自明のことではありますが、プロダクトマネージャーの役割は対象とする事業領域や組織の体制…それどころか周囲の意思やスキルによって大きく変わるものでした。
一例として。ログラスのエンジニアは自ら一次情報を取りに行こうとする意識が非常に強く、コミュニケーションのスタイルを大幅に変えることが求められました。本当に頼もしいチームです。
大切なこと②:「愛」(熱狂が情報の質と精度を上げる)
よくプロダクトマネージャーに求められるスキルとして「言語化力」「課題抽出をする力」「ユーザーを理解する力」「KPIを設計する力」「ステークホルダーマネジメント」といったものが挙げられますが、いずれもビジネスパーソンに等しく求められるスキルと言っても過言ではありません。そんななかで対象業務領域の周辺業務を含めたユースケースを見極め、存在する課題を把握し、複数の課題を抽象度高く捉え、何が求められているかを言語化するプロダクトマネージャーの活動のパフォーマンスを圧倒的に底上げするのは「愛」だと痛感させられました。
対象領域における業務経験もなく、愛着もまだ湧かなかったころは、業務への理解も課題の抽出も、それを捉えるソリューションの検討も、なかなか効率的に進められている実感が得られませんでした。
(当時はCTOとの1on1でも「まだ熱狂できてません」とよく反省の意を伝えていました。)
圧倒的プロ意識に下支えされた強靭な精神をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、多くの人は好きなこと・興味を持っていることについては情報探索コストが圧倒的に下がり、思考を巡らす時間が増え、今までになかったアイデアがたくさん思いつくはずです。
狂いそうなほどに「この人とステディな関係になりたい!」と思っている相手を口説き落とすための活動と、「あの人を口説き落とせ。報酬は10万円。」と全く興味を持てない人を口説かなきゃならなくなったときの活動、どちらの方が高パフォーマンスになるか、容易に想像がつくでしょう。人間の精神力はそんなに強いものではありません。
ただ、愛は理解の先に湧き出るものでした。
未経験領域において、アプリケーションの先にある業務を理解し、課題を抽出する活動は当初なかなか難しいものでした。
しかし幸いなことに、過去に製造業の需給管理担当・生産管理担当として、サプライチェーンマネジメント(SCM)における計画策定~予実対比(何をどれだけ作り込みどこのリージョンでどれだけ売るか)におけるペインを体感した経験があったため、理解が進むうちに
「近い話、SCMでもあったな」
「多分こういう課題もありそうだな」
「こんな機能あったらここらへんのペインも解消されるな」
と、能動的に思考が働くようになっていきました。
そして理解のハードルが一定ラインを超えた先に、「もっと知りたい」「より多くの課題を解決したい/価値を提供したい」という愛が湧き出してきました。
to B SaaSアプリケーションはto Cのそれと異なり、対象業務領域の実務経験が無い限り、本当の意味での「ユーザー目線」を獲得することは叶いません。
それを補って余りある想像と理解を獲得するためには、その領域に対する一定以上の関心や思い入れといったものがある方がずっとやりやすいな、と思っています。
大切なこと③:「一貫性」(大事なのは正解を見つけることではなく、正解にすることである)
プロダクトマネージャーはミニCEOだ、という言説をよく見かけます。正直そこまでいうのは烏滸がましい(CEOの受けるプレッシャーは本当に計り知れません!)と思いますし、そもそもそういうポジショントーク的なものはあまり好きではないのですが、一理あるなと思う点もあります。それは「少なくともプロダクトの向かう先へ導く先導者でなければならない」という点です。
みなさん、見知らぬ山中に放り出され、そこそこ山に慣れていると自称する人に人里までリードしてもらうシーンを想像してみてください。きっと周囲の地形や植生・遭難したときのセオリーを踏まえながら「よってもってこちらに進むべきである」と説きながら導いてくれることでしょう。
途中その人が「あ、でもこっちのほうがいいかも」「どっちでもいいと思うけどとりあえずこっちで」「さっきの選択は間違いだったかも」と迷い始めたらどうでしょう。途端に選択を恐れ、慎重になり、先に進むことを躊躇し始めるでしょう。
プロダクトづくりも一緒ではないかなと私は感じています。選択が最適だったのだろうか・もっと先にこちらを作るべきだったのではないだろうか…疑い始めればきりがありません。そして疑い始めると、きっとその疑念は真であったと思ってしまうでしょう。逆に選択を疑うことに気を囚われずそれを正解にすべく努力し続けることができれば、その選択はきっと採り得る最高のものであったと思えるはずです。
すなわち自身にとって、そうした強い信念を持って臨めるような、覚悟をもって向き合える領域か否かも、プロダクトマネージャーとしての活動の場を選ぶ上でとても大事になってくるのではないでしょうか。
おわりに
読んでいただけた方、特にプロダクトマネージャーと一緒に働いている方やプロダクトマネージャーをこれから採用しようとしている組織の方、これからプロダクトマネージャーにコンバートしようと思っている方の、今後の意思決定に対してわずかにでもご参考になりますようにと願っております。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?