バイクで鈴鹿サーキット行くはずが気が付いたら朝のラッシュの田園都市線に揺られて渋谷に向かっていた話
超バイク好きな中学生の頃からの友人とツインリンクもてぎに世界最高峰のロードレースmotoGPを観に行くのが毎年秋の恒例行事になっている。だが今年はコロナで中止。寂しいので代わりに国内最高峰の2輪レース、全日本ロードレース選手権最終戦を鈴鹿サーキットにバイクで泊りがけで観に行くことに。
私は月曜日お休みをいただいて火曜日まで4連休。とりあえず鈴鹿で土日にレースを見て、土曜日の夜は津で泊まって久しぶりにバーアンバールさんにお邪魔し、日曜のレース後に岐阜に移動してスピークイージーさんでウイスキー飲ませてもらい一泊、月曜日雨降りそうなので天気見ながら月、火とどこで何するか後で考える、といういつも通りの飲み歩き&適当な出たとこ勝負の旅。
友人はガチのバイクマニアなので今度の鈴鹿は土曜日のJSB1000クラスの公式予選が始まる朝10時には現着したいとのこと。だから当初は朝の4時半に横浜の港北PAに集合予定だった。さすがに朝早くてきついので、「鈴鹿までは350kmちょっとだし5時間もあれば普通着くでしょ」と泣きを入れて5時に集合に変更。
10月末とはいえ、夜明け前の東名高速での箱根越えは気温3度ぐらい。時速100kmのバイクでは体感温度は当然マイナス圏、なめた気持ちで行ったら即死する。
だから前週末から冬支度をし、目出し帽のようなフェイスマスクも買い、バイクで軽く走ってトラブルないことを確認。バッテリーも充電、ガソリン満タンにして当日の朝に備えた。
海外旅行行く前の晩でも興奮して目が冴えたりしないのに、目覚めたのは朝3時過ぎ。二度寝できず真っ暗な中で猫と遊ぶ。そして4時半、4日分の荷物を積み、完全防寒で発進。バイクは一発始動で走りも快調。東京はまだそれほど寒くない。
首都高3号線を経て東名に乗り、ちょうど5時に港北に到着。友人はすでにタバコ吸って待っていた。彼のCBR1000RRも私のYZF R1も燃費が悪く200km毎に給油する必要があり、次の休憩は新東名の静岡SA。念のためトイレに行って戻ってきてさあ行くか、とバイクの鍵をひねった。
あれ?おかしい。電源入らずメータースクリーンが真っ暗なままでうんともすんとも言わない。セルモーターも回らない。よく見るとイモビライザーの警告灯が赤く光っていて、もしかすると盗難防止装置が誤作動しているのかも。しばらくいろいろやってみたが状況は変わらず、バッテリーの端子を外してイモビライザーを強制リセットすることに。
簡単に聞こえるかもしれないが、シートの下にあるバッテリーにアクセスするためにはヘクサゴンレンチでネジを6本も外さなければならない。それも夜明け前、パーキングエリアの水銀灯を頼りに暗くて冷える中で。
万が一に備え使いやすい工具を持ってきていたのが不幸中の幸い。だがケーブル外してハードリブートしても電源が入らない。家出た時は何の問題もなく一発始動、ここまで快調に来たんだけど、どうして?
考えにくいけどバッテリートラブルの線もないわけではない、と考え、これまた念のため持参した携帯用ジャンプスターター繋いでみた。電圧計は15.0Vを示す時もあれば4.7Vまで落ちてしまうこともあり安定しない。ずっとガレージでトリクル充電していたので朝は一発始動だったのに。ジャンプスターターの電力のおかげで電源が入ってセルモーターは回り、エンジンは一瞬かかるがすぐにエンスト。それを何度も繰り返したがアイドリングが続かず再始動できず。
小一時間ほど苦戦が続き、予選からの観戦を楽しみにしている友人をこれ以上待たせるわけにもいかないので彼だけで先に行ってもらうことにした。
「じゃあ現地集合で、バイク気を付けて」「最悪今晩ホテルで会おう」。そう声を掛けあい、友はCBRに跨って西へと向かった。
色々考えたが、仮にここでエンジン掛かっても、バッテリーが弱っているなら高速道路の本線走行中にエンジン止まる可能性もある。電子制御が多い今時のバイクならではのトラブルだ。あきらめてレッカーでバイクを引き取ってもらい、私は新幹線で鈴鹿に向かうことにした。
以前小雪のちらつく日光の峠で転んで自走できなくなった時にアクサ損保のバイク保険付帯の24時間ロードサービスでレッカーでバイクを運んでもらったことがある。あの時は転んだ痛みと寒さに耐えながら山の中で1時間以上レッカーを待った。久しぶりに再びお世話になる今回は、都会でのトラブルということもあり30分もせずにレッカー車が来てくれた。
高速降りる時はレッカー車の分に加えてバイクのETC料金も払わなければならない。そうしないと次回バイクで高速乗るときに料金所でエラーが出てしまう。ETCユニットは右ハンドル下の書類入れに無理やり設置してある。カード取りだすのにまた別のネジを5本緩め、知恵の輪みたいにうまく外さないといけない。これもなかなか辛い作業だ。何度かやってみたことがあったので作業できたが、初めての人だと相当厳しいだろうと思う。
いろいろしんどい思いをしたが、駆けつけてくれた神奈川レッカーサービスの方とアクサダイレクトのオペレーターがとても親切だったので救われた。
私のバイクが大型バイクということもあってきてくれたレッカー車は4トントラック載せられるぐらいのガチのキャリア。平たいキャリアの上にスタンドを立ててバイクを止め、左右のハンドルとステップ、フレームにベルトを巻いてフックでキャリアに固定する。
まだ朝7時前なのでバイクを受け入れてくれる修理工場が見つからない。とりあえずレッカー事務所まで運んでもらい、私がバイク購入したショップが10時に開店した後に受け入れ可能か確認して後からそこに運んでもらおうという段取りにした。レッカー料金は50㎞まで無料だが、レッカー事務所から現場、また事務所に戻って東京ドームの近くにあるバイクショップまで運ぶと65㎞ぐらい。1㎞あたり700円の追加料金ということなので1万円以上の出費になる。いろいろ物入りだが仕方ない。
バイクの積み込みが終わるとレッカー車に同乗させてもらって事務所近くの田園都市線の駅で降ろしてもらった。まだ朝7時半前、4泊分の大荷物とヘルメット抱えた完全防寒のバイクスーツ姿で疲弊しまくったおっさんが土曜日の朝の学生さんで混み合った渋谷に向かう電車に揺られてる、というシュールで場違いな状況。
ヘロヘロになりながら一度帰宅してシャワー浴びて着替え、今度は10時の新幹線で名古屋へ。車内からバイクショップに連絡し、入庫可能なことを確認、恐らくバッテリーが弱っているのではないかとのこと。取り急ぎ修理を依頼。
バイクだったら弁当食べながらビール飲めないよね、新幹線サイコー、と負け惜しみいいながらうたた寝し、名古屋で乗り換えて鈴鹿サーキット最寄り駅の近鉄白子へ向かう。土曜の昼下がりの白子駅前はご覧の通り。シャッター商店街を絵に書いたような光景。
そして30分に1本のバスに乗り、無事13時過ぎに友人と合流。起きてから10時間経過、普段なら夕方の時間。とてつもなく遠い旅路を来た気がする。
鈴鹿サーキットのシケインスタンドからは太陽の光を反射してキラキラ光る海が見える。実は恥ずかしながら鈴鹿サーキットは初めて。「バリバリ伝説」というしげの秀一の昭和のバイク漫画の中で鈴鹿4耐のレース中に「海が見えるぜ」っていうセリフがあったような気がするがこのことか、と懐かしく思った。
土曜日のRace1、白熱のバトルで中須賀克行が野左根航汰の完全シリーズ制覇を阻止して優勝。だが日曜日のRace2を残して年間チャンピオンが2位フィニッシュの野左根航汰に確定。
日曜日のRace2もそうだったが、野左根の走りが明らかに次元が違う。ホルヘロレンソが世界チャンピオンだったころの安定した走りを思わせた。
野左根と中須賀が乗るヤマハの活躍を目の前で見せてもらったが、私のバイクは二人の乗っているバイクと一緒だけど今頃バイク屋で電気系統のチェック受けているんだろうな、と思い少し悲しくなった。
そして追い打ちをかけるように「バッテリー、純正部品との交換がおすすめです、およそ2万円と工賃かかります」とバイクショップから電話がかかってきた。さらにレッカー追加料金で1万円ちょっと、新幹線代でもう1万円。悲しみが増す。
レースを堪能したあと津でチェックイン。ドーミーインのサウナと温泉でへとへとに消耗しきった体を癒し、松坂牛の焼肉食べられずになぜか韓国料理を食べてマッコリを飲み過ぎ、久しぶりに訪れたバーアンバールさんでオールドのリトルミル、アードベッグ、モートラック、ファークラスと飲んでグレンユリーロイヤルにノックアウトされた話はまた改めて。
ここまでオチもなければお酒となんの関係もない話を聞いていただきありがとうございました。他人の不幸は蜜の味、と言いますが甘く楽しんでいただけましたでしょうか。
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