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8月32日

 僕の名前は吉川翔太。公立小学校に通う小学4年生だ。
 今日は夏休み最後の8月31日。僕は大変困っている。もう絶望的なまでに困っている。
 なにに困っているかと言えば、当然夏休みの宿題だ。夏休みの自由研究は全然できていないし、国語算数理科社会の問題集も1ページもやっていない。
 こんな状況で徹夜して宿題を終えることができるのだろうかと思うのだが、お父さんとお母さんに手伝ってもらっても、100%無理だと思う。
 ここまで書けばわかってもらえると思うのだけど、つまり、絶望的な状況だ。
 こうなったら、無駄な努力をするよりは、いっさい宿題に手をつけないか、それとも少しでもやって頑張ったアピールをするべきか、僕は決めあぐねている。
 でも、宿題やるのは面倒くさいし、ちょっとやったところで頑張ったアピールは無理なので、せめて半分は終わらせないと、アピールは無理だろう。
 だとしたら、やっぱりなにもやらないほうがましなのか。

 そうこうしているうちに、とうとう夕方になってしまった。
 こうなったら、なにもせずに明日学校で開き直るしかない。誠意をもって謝れば、先生もそこまで叱らないかもしれない。
 でも同級生の「あいつ宿題やってないのかよ」っていう視線が刺さってくるだろうな。「俺たちは頑張ってやったのに、あいつズルしやがった」とか思われでもしたら、クラスの暴れん坊リーダーの竹本君に目をつけられてしまうかもしれない。
 先生に叱られるのも憂鬱だし、同級生に白い目で見られるのも嫌だし、お母さんに怒られるのも嫌だし……あれ? そういえば、いつもは宿題をしないと、夏休みが終わりに近づくにつれて、「宿題はやったの?」ってせっついてくるお母さんが、今年に限ってはなにも言ってこない。
 昨日もお父さんと大喧嘩していたから、僕の宿題どころではないかもしれない。
 だとしたら、先生、同級生、お母さんのうち、先生から叱られることと同級生から一時的に白眼視されることだけを我慢すれば、乗り切れるかもしれない。
 そうは言っても、今日眠れば明日は9月1日。学校に行かなくてはいけない。さすがに宿題を全然やっていないままで学校に行くのは憂鬱極まりない。
 こんなことなら、夏休みの始まりに少しでも宿題をやっておけばよかった。そうすれば、毎日少しずつ宿題をやる習慣づけができたのに。
 もう仕方がない。今日は明日に備えて早く寝よう。眠っているあいだだけは嫌なことを全部忘れられるから。
 ああ、明日が永久に来なければいいのに……。

(続く

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