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TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days~STAND 3 FINAL~ Tour Report Part.3

M10・ELECTRIC PROPHET
「世界中で一番の夜は 12時過ぎのCrete Island In Greece」。
ウツが静かに2番の歌詞を歌い出す。2012年4月24日、25日に日本武道館で行われた「Incubation Period」では3番が、2021年10月の配信ライブ「How Do You Crash It?」では1番が歌われている。今回のアレンジは同配信ライブ時のもの。演奏と共に「Incubation〜」と「How do you〜」のライブ映像が背景に流れる。

「How Do You Crash It?」は宇宙船のような空間で、TM NETWORK3人だけが登場し、音を奏でていた。そこには制御された強い意志が感じられ、メンバーのクールな表情や時折挟まれるストーリーとも重なり合い、ひとつの映画のようだった。

そして、パンデミック下に選択された無観客ライブから2つのツアーを経て、世界的な情勢の変化とともに、よりオーディエンスに近い、クローズドでエモーショナルなライブへと変貌していることがよくわかる。
小室さんはあえてライブごとに歌詞の部分を歌い分けているとご自身の配信「TK Friday」でお話されていた。
4月20日からはじまるアリーナツアーではこのエレプロの謎が解き明かされるのかもしれない。

M11・HUMAN SYSTEM
背景の映像は様々な顔、顔…。初期の終わりごろのTM NETWORKを代表する先見性あふれた曲。アウトロではトルコ行進曲のメロディを小室さんのピアノと木根さんのギターが息を合わせ奏でられる。
特に、Day33の立川公演から小室さんの「one two~」というカウントが加わり、ふたりのセッションはさらにシンクロナイズされていた。
ファイナル直前でのこの演出変更もライブごとに進化を遂げていくTM NETWORKならではの醍醐味といえる。

M12・COME BACK TO ASIA
 
アルバム「HUMAN SYSTEM」所収、かつシングル「RESISTANCE」カップリングの木根さん曲。
イントロに「和」を含む広くアジアの音を重ねている。琴のような音色のアレンジが大変美しい。パープルがかったピンクのライティングが演奏する小室さんを照らし、一足早い春、桜の季節をも想像させた。
意外な選曲について、宇都宮さんはアフターパンフで「新曲のようなつもりで取り組んだ」と語っている。
エンディングではDay32の札幌公演から「ティンシャ」(ネパールやチベットの打楽器)を小室さんが使用。熱気に満ちた場内をクールダウンし浄化するような、研ぎ澄まされた音が響く。ライティングが落ちてからのティンシャの響きに当初SNSでは「あれはトライアングル?」などの憶測が飛び交っていた。小室さんご本人がThreadsにて種明かしをされている。
ツアー終盤からの変化・追加がこの曲でも見られていた。

M13・TK piano solo
 小室さんがキーボードブースからグランドピアノへゆっくりと歩いて移動。スポットライトの輝きが空から降る星のように小室さんに降り注ぐ。アフターパンフには会場ごとに違うピアノ(Report1をご参照ください)を小室さんはリハーサルでとても入念にチェックしていたとのこと。

TK solo set list
【1/18・Day26三郷,1/27・Day27山口】
CAROL→Angie

【2/9・Day28名古屋】
Beyond The Time→Angie

【2/10・Day29名古屋】
Dawn Vally→Vampire Humter”D”→Angie

【2/18・Day30新潟】
Seven Days War→Dawn Valley→Angie

【2/25・Day31神戸】
GIRLFRIEND→Angie

【3/2・Day32札幌】
N43→WINNERS→Seven Days War→Angie

【3/7・Day33立川】
Nights of the Knife→WINNERS→Seven Days War→Angie

【3/8・Day34立川】
All Right All Night→GIRLFRIEND→WINNERS→Seven Days War→Angie 

てっち衣装部調べ

TKソロの曲目の変化はDay28の2月9日名古屋公演1日目から。
1月26日に劇場公開された映画「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の主題歌を小室さんは西川貴教 with t.komuroとして担当し、この時、映画・主題歌とも大ヒットの予兆がすでにみられていた。この日は「ガンダム」つながりとして、ご存じTM NETWORKの「Beyond The Time」がセレクトされた模様。
2月18日のDay30新潟公演では、1曲目に「Seven Days War」を演奏。ピアノを奏でながら、弾き振りをする小室さんを筆者は初めて生で目撃した。1994年5月18日の東京ドーム、LAST GROOVEでの同曲を思い浮かべた方もいただろう。
「校長」せんせいはオーディエンスにsing-alongをうながすと、百戦錬磨のFANKSは瞬時に応え、「ラララ」と歌い出す。
おそらく、小室さんは客席を信じて大胆な演出を試みたのだ。もちろんリハーサルなどはない、説明すらないのに、すてきなハーモニーが会場中に広がる。この曲も長い年月、TMファンの心の中に脈々と息づいている。この曲とともに育ったといっても過言ではない人も大勢いるだろう。
以降、終盤の札幌、立川公演でも「Seven Days War」の合唱は続いた。
TM NETWORKのライブはMCやアンコールはない。なのに、ステージ上のアーティストと心がつながる瞬間が感じられた感動的なひとときだった。

そのほかの曲目として、Day29名古屋の「Vampire Humter”D”」、Day31神戸、Day34立川の「GIRLFRIEND」などが印象的だった。
そしてDay32札幌公演から定番化した「WINNERS」。札幌公演が今ツアーのターニング・ポイント的な役割だったのではと推測する。
世界情勢を踏まえた選曲なのか、ツアーファイナルのDay34立川では「All Right All Night」が披露された。
時に超絶技巧のようなインプロヴィゼーションが織り交ぜられたり、ジャジーなアレンジに変化したりと、神がかった小室さんのピアノ演奏は公演ごとに進化していった。

M14・Love Train
ピアノソロから暗転するステージ。シンセ・ブースに戻っていく小室さん。雰囲気はここで一転し、静寂をかき消すようなビートが鳴り響く、特徴的なリフもリアレンジされていて、客席のハンズクラップとともに会場の熱気は高まっていく。歌詞もサビからではなく「愛を語るルール」から始まっていて、斬新さを醸し出していた。
グリーンのエレキギターを弾く木根さんが時折手を挙げフリをしている様子がとても新鮮に映る。転調はこれぞ小室サウンドという気持ちよさで1音もブレずに歌うウツの歌唱力も圧巻。過去のMVがスクリーンに登場するとその懐かしさに見入ってしまい、ふと無意識に現在までのTMの軌跡を思い浮かべ、感慨深い気持ちになる。そして小室さんが奏でる生のMinimoogの音色の強さを改めて感じた一曲。

Inter Misson
Love TrainからのMinimooogの音。戦車と国旗、防護服を身に着けた医療従事者、破壊しつくされた市街地…この数年、市民に降りかかった災禍の映像ののち、「we pray for the peaceful days ahead.」 の文字が。エンタテイメントの場で、世界の平和を希求するメッセージをまっすぐに打ち出すその姿勢に胸が打たれる。

M15・Nervous
TKソロのInter Missonから続くビートの高まりは徐々にヒートアップしていく。両手を挙げ客席を煽りながらこの曲の印象的なリフを繰り返す小室さん。この選曲もFANKSにはたまらない。背景はさまざまな書体で歌詞が浮かぶ映像。腕を組み肩を揺らし躍る宇都宮さんに客席からは悲鳴のような歓声が聞こえていた。この演出にも懐かしさを感じさせるが、リミックスの斬新さこそがTMの妙だと実感。

M16・ACCIDENT
思わずジャンプしたくなる出だしの軽快な四つ打ちのリズム!
キメのシンセ・フレーズは「この曲は何だっけ?」というくらいの新解釈がされていて、ここにきてまたまた驚かされるトリッキーさ。楽しいアレンジ。
片手を挙げ、髪を揺らし、跳びながら鍵盤をたたく小室さん。
それを目にして、思わずこちらも踊りすぎ、弾けすぎて酸欠寸前になるほど。そして、ウツのハンドマイク姿は激レアだったのでは。
この曲も「ライブで聴きたかった曲ランキング」上位に挙がってくるだろう。2014年発売のセルフ・リプロダクトアルバム「DRESS2」収録の同曲とはまた別の新しいリミックスとなっている。
颯爽と明るく弾むようなキラキラ感はTMらしいシティ・ポップ。

M17・I am
小室さんはふたたびショルキーを装着。
イントロで真上に伸びるウツの長い腕。
そして、会場に降り注ぐ銀色のテープ。銀色の輝きが客席の上の宙に舞うテープの滞空時間ははかない瞬きのようで本当に美しい。きらめきの瞬間として静止画のように心に刻まれていく。
その銀のテープには10年ごとのTMの歴史が記されていた。それを宝物のように大切に持ち帰るFANKSたち。
2010年代のTMを象徴するアンセムに昇華したこの曲が、今ツアーの本編ラストとなった。
ショルキーを手にステージ上をアグレッシブに行き交う小室さん。もはや、この曲のメイン・ボーカルと言っても過言ではないかも。Bメロはマイクを挟んでウツと一緒に歌い、時には、移動し木根さんのマイクを奪って(!?)歌う小室さんのコーラスが見どころ聴きどころ。
新潟公演からは「Yes、Iam」の合唱をオーディエンスに託す演出でステージとの一体感が産み出されていた。
そして、名残惜しくも、潜伏者の3人は客席すみずみに手を振りながらステージを後にする。

M18・intelligence Days
エンドロールでおなじみとなっている曲。
今回、オルガンの音色などが新たに加わわっていた。海岸線をドローンで空撮した映像が流れる。
メンバー、スタッフクレジットの中には「dedicated to Tekkan Fujii」の文字も。
曲が終わると同時に大きな爆発音。次回の開催地が示され、赤いライトがまっすぐに伸びていく。

全9公演。幅広い時代からの選曲がなされ、それらが新アレンジになることでTM NETWORKの卓越した楽曲の魅力が伝わってきた。そして随所にみられる3人の遊び心と仲むつまじさに、観客である私たちも笑顔になるライブだった。

小室さんは、今ツアーはグラムロックの時代のフォークとロック、ダンスミュージックのMIX感を参考にしてアレンジをした、TMの3人で作り上げたツアーだったと語っている。
懐かしい名曲を取り入れたとき、ただ懐かしいだけでなく、今の音に斬新に蘇らせる手腕にTMらしさ、小室哲哉らしさがあふれている。

ライブはその俯瞰的・客観的視野から生み出される珠玉の総合芸術なのだと感じる。珠玉のライブは文字通り、生きものかのように有機的にさらにのびやかに進化を遂げていく。

そして、今日4/20から始まるアリーナツアー「TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days YONMARU」ではどんな金色の夢が繰り広げられるのだろうか。

To be continued…。

2024/4/21
TM NETWORK
Congratulations on your 40th anniversary

TM NETWORK アリーナ・ツアー
「TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~YONMARU~

4/20(土) ✅ Day35 東京ガーデンシアター 17:00/18:00
4/21(日) ✅Day36 東京ガーデンシアター 16:00/17:00
4/26(金) ✅ Day37 大阪城ホール 18:00/19:00
4/27(土) ✅ Day38 大阪城ホール 16:00/17:00
5/18(土) ✅ Day39 Kアリーナ横浜 16:30/18:00
5/19(日) ✅ Day40 Kアリーナ横浜 15:30/17:00



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