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ねずみーらんど
病院終わりに上堂と待ち合わせしていた。
薬が増えて主治医が変わるらしい。らしいというか検討するという話で別に確定ではない。
変えるなら圧が強くないお医者先生をお願いしますと言ったら「ゆっくり喋るよう頼んでおきます」と返された。
駅前のベンチに座りひたすら項垂れる。
最近服を買った。髪の手入れをするようになった。
どうしようもねえ死にたみと自罰目的の自傷がひどいので薬が増えた。通院の頻度が上がる。最近蕁麻疹がひどいから皮膚科にも行かなければいけない。薬が出る。
不健康は金がかかる。
金がない。
なのに最近服を買った。髪の手入れをするようになった。
好きな歌の歌詞が頭をよぎる。
やさしい歌詞だから好きだと思った曲。
でも共感はできない、私には髪を切ったり小洒落た格好をした際に会いたくなる人は特にいない。
なのに服を買って髪の手入れをした。
なんでって言うと他にやることがないからだ。
「ビューティフル・ワンズめ」
耳元で突然そう言われた。
幻聴か上堂かどっちかだと思った。
そうだねと私は返した。
ユニバース25実験の話で例えるなら私はそりゃビューティフル・ワンズだろう。もう取り返しがつかなくなったたぐいの。
幻聴か上堂が罵ってくる。
ごめんなさいと私は言った。
すると上堂が現れて顔をのぞきこんできた。何してんのと上堂は言った。
え? と思い隣を見ると、全然知らない人がまだ私をビューティフル・ワンズと罵り続けていた。
「上堂、これ見えてる?」と知らない人を指さして訊ねる。
「見えてる。だからそれ幻覚じゃなくて変な人だな」と上堂は答えた。
そうか、じゃあ逃げよう。
我々は少し遠いコンビニまでダッシュで向かい、水とクッキーを買ってコンビニ前に座り込んだ。
ここで買ったのが酒と煙草なら分かりやすくイキれたのにもったいねえと上堂は下品に笑った。それから無意味にうんこうんこと言った。
ユニバース25よりラットに休憩をさせては泳がせ続けて無意味な希望を与える実験の方が私を例えるなら良くはないかと思った。
膨れ上がるばかりの希死念慮と交互に来る自責と他責の波と詰んでいく人生。
そこにたまに放り込まれるシュガーハイみたいな創作への没頭、それへの褒め言葉、気まぐれに声をかけて飯に誘ってくる上堂みたいな友だち。
それでまた生きていける気がした途端にやってくる自らの才能のなさと無価値さという現実。希死念慮、自責と他責。
死ぬまでこれが続くのだ。
死ぬまでこれが繰り返される。
そういうふうに上堂に言うと舌打ちされた。
「おまえ、英語の言葉使って賢そうな話してんじゃねえよぶっ殺すぞ」
そう言えば上堂はローマ字もギリ読めないんだったなと思い出した。
ネズミの話だよと私は返しておいた。
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