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『ノンフィクション』はオワコンなのか?

 お久しぶりです。

 9月25日に書籍『つけびの村』が発売となってから、1ヵ月が経ちました。これまで、書店さんにご挨拶にうかがったり、イベントをしたり、インタビューを受けたり、という日々が続いており、ようやく落ち着いてきたところです。インタビューは、普段は『する』側ですが『される』側になってみると、色々と勉強になるところが多いです。

 この本が出てすぐにwebサイト『好書好日』でインタビューしてくださった音楽ライターの宮崎敬太さん。しょっぱなから台風直撃でリスケするなど、色々ありました。取材を『される』側でいることに不慣れな私の立場に寄り添ったインタビューとゲラ作業にお付き合いをありがとうございました。
 『ESSE online』に記事を書いてくださった藤谷千明さんは、すこし変わったリズムで質問を繰り出してくる方で、そのリズムに乗ってゆくうちに、自分の口からすらすらと言葉が出てきて不思議な気分になりました。後ほどTwitterを拝見すると、V系音楽に造詣の深い方だったのだと知って驚いた次第です。
 『クロワッサン』(2019年11月10日号)で取材してくださった遠藤薫さんからいただいた原稿は、これぞ〝プロフェッショナル〟と納得させられる素晴らしい完成度で、私も普段、ウェブの特性にかまけて緩い初校を出してしまってはいないだろうかと反省させられることしきり……。
 ぜったいマネできないと感じたのは、『週刊朝日』(2019年11月5日発売)に著者インタビューを書いて下さった朝山実さんの語り口です。一見、朝山さんが自分の感想を話しているように見せかけて(そう思わされるほど巧み)、じつはその話がいくつもの質問への伏線と、質問そのものになっているという、まるでディジュリドゥのようなインタビュー手法は、初めてのスタイルでした。

 皆さんが持つそれぞれ違ったリズムや質問の構成はいつも新鮮で、改めて自分のやり方を顧みる貴重な機会をいただいたと思っています。
 と、ちょうど書いているところで、これまで一度も求められなかった切り口を考えてくださったひらりささんによるインタビュー記事も『ねとらぼ』に掲載されたので、ぜひご覧ください。

 そしてインタビュー記事では、たいてい写真の撮影もおこなわれます。それぞれのインタビュアーさんに個性があるように、カメラマンさんの写真もひとつとして同じものはありません。ライターの場合、どのボイスレコーダーを使うかで、聞き出す話の内容が変わることはありませんが、カメラマンさんの場合、どのレンズを使うのかといった機材選びの段階から差別化が始まっているので、普段、携帯のカメラで済ませてしまっている自分がすこし心配になったのでした。

 珍しく取材を受ける経験をしている間に、これもまた珍しく皆さんのご協力を得て、いくつかの『つけびイベント』もおこないました。
 スタートは、9月22日開催のロフトプラスワンでの「映画と事件と村と虫」です。実はnoteにアップした時期から、オファーをいただいておりましたが「書籍が出てからにしてほしい」とお願いして、刊行と同時に、というタイミングになりました。ゲストの柳下毅一郎さん、小野一光さんのお話は、それぞれ長年にわたり事件や映画を見続けてきた、事件を追い続けてきたお立場からの、非常に興味深いものでした。小野さんのスナック話を伺ってからは、小野さんの記事が出るたびに、スナックでの取材の記述をつい探してしまうようになった自分がいます。
 10月8日、9日は、ミシェル・マクナマラ著『黄金州の殺人鬼』(亜紀書房)を手掛けた翻訳家の村井理子さんとの二夜連続イベントでした。いつもウェブの連載記事を読んでいる一ファンの私が、村井さんとイベント……夢のようなお話でした。滋賀から東京までいらっしゃる村井さんに、ご負担なきよう精一杯努めなければ!!!!と意気込んでおりましたが、結局、両日とも、村井さんの話術に助けられた格好となり、申し訳なさでいっぱいであります。
 10月15日には、青山ブックセンター「ノンフィクション万歳!」水谷竹秀さん、広野真嗣さんとのトークセッションを行いましたが、当日司会予定だった藤野さんが帰国できないというトラブルに見舞われながらも、広野さんの神がかった司会で当日を乗り切ることができました。水谷さんにも、台東区の野宿者問題や、フィリピン取材の裏側など、貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。このイベントの様子は機会があれば、活字でまとめておきたいと思っています。
 改めて、本当にありがとうございます。いらしてくださった皆様にも、感謝申し上げます。後日、広野さんにお礼を伝えたところ「話し足りない!」と言われて本当に驚きました(すごすぎる)。またぜひ、同業の方々と語り合うイベントをやりたいなあと思った次第です。

 そしてこの日は、ラジオにも出演するという、滅多にない機会をいただきました。『渋谷のラジオ』で原カントくん(さん?)の番組で、作家の樋口毅宏さんとご一緒させていただくという、とんでもない時間を過ごしました。樋口さんはこれまた、私は完全なる読者の側で、お目にかかることなど一生ないだろうと思っていたのです。こんな日が来るのか……と、驚いている間に放送が終わってしまった感じがあります。
 書籍刊行後、「これまで自分が一方的に読者だった」という方々との出会いが続き、とても嬉しく思っております。樋口さんからは『つけびの村』をお読みくださったきっかけが奥様の三輪記子弁護士で、三輪さんがnoteのみならず、書籍を5冊も購入してくださったとも知り、これまた感激したのでした。

 さて10月31日木曜日には、刊行前に予定していた最後のイベントを、下北沢・本屋B&Bにて開催いたします。B&Bさんからも、春のうちにお話をいただいており、大変お待たせしてしまいました。皆様のお越しをお待ちしております。

http://bookandbeer.com/event/20191031/

高橋ユキ×江坂祐輔×藤野眞功×山口紗貴子×辻陽介
「『ノンフィクション』はオワコンなのか――言葉を売って生き延びるには」
『つけびの村』(晶文社)刊行記念
出演_
チームつけび:高橋ユキ(ノンフィクションライター)
       江坂祐輔(『つけびの村』版元編集者)
       藤野眞功(『つけびの村』フリー編集者)
山口紗貴子(弁護士ドットコムニュース副編集長/元週刊誌記者)
辻陽介(『HAGAZINE』編集人/『ヴァイナル文學選書』編集者)
時間_20:00~22:00(19:30開場)
場所_本屋B&B東京都世田谷区北沢2-5-2ビッグベンB1F
入場料_
■前売1,500yen+1drinkorder(税別)
■当日店頭2,000yen+1drinkorder(税別)

 11月21日には、渋谷大盛堂書店にて、春日太一さんとイベントご一緒させていただく予定ですが(こちらについてはまた追ってnoteに記事をアップできればと思っております)、チームつけびが揃って登壇するものはこの10月31日のイベントがとりあえず最後になります。紙とウェブのメディアの現状やこれからについて、みなさんと語り合う予定です。

 なんどもしつこく話して恐縮ですが、『つけびの村』という書籍は、行き場のない長編原稿を6つに分けてnoteにアップしていたことから、ある日突然、たくさんの方々に読まれることになり、そして、書籍化が決まりました。
 でも、だからといって「noteからノンフィクションの書籍化が続くかも!」「今後の出版業界におけるヒントになりうるケース?」というふうには、あんまり思えません。なぜなら、書籍の原型となった原稿は、紙媒体の助けがなければ、完成していなかったからです。
 未だ私は、これからどうしたらよいのか、悩んでいます。
 ウェブ媒体で、出張を伴う取材で、取材費負担をしてくれるところは、私の周りにはいまのところとても少ないです。
 普段ウェブに掲載している傍聴記事も、近場は、交通費が出ません。
 なので裁判員裁判など、続けて審理を傍聴しなければならないようなものは、そのぶん負担する交通費が増えるため、のちに入った原稿料全てが交通費で相殺されることもあります。仕事と考えた場合、あんまりそれはよろしくない。でも、どこまで許容するべきだろうか……。『ノンフィクション万歳!』で水谷さん、広野さんが語ったように、交通費はやっぱりバケモノなのです。

 ……というのはほんの一例ですが、そんなもやもやとした胸の内を話したいなぁと思っております。

 そして、この日は、これまでのイベントではじめて、女性のゲストをお招きします。弁護士ドットコムニュース・副編集長の山口紗貴子さんは、いまでこそウェブメディアの編集者(兼記者)さんですが、その昔は、紙媒体で記者をされていました。女性が取材をすることについては、私が金峰の取材で経験した、出先でのトイレ問題なんかは取るに足らないほどの……男性とはまた少し違った苦労もあるものですが、そんな話など当日は伺いたいなあと、楽しみにしているところです。
 山口さんとは、付き合いも長くなりましたが、こんなに頭の切れる人がいるのか?というぐらい、聡明な方で、また「いつ寝ているの?」というぐらい、仕事に子育てに、趣味(主にポケGO)に、と、精力的に日々を過ごされています(ように見えます)。
 もうお一人のゲスト、ウェブメディア『HAGAZINE』の編集人、辻陽介さんには初めてお目にかかります。定期的にチェックする数少ないウェブ媒体のひとつであることを、たまたま藤野さんに話したところ、なんと辻さんと藤野さんが友人だと判明し、出演いただけることになったのでした。一読者として、HAGAZINEの成り立ちから、サイトで発信していきたい記事についてなど、あれこれ聞かせていただきたいです。

 さ ら に !

 当日は、15日開催『ノンフィクション万歳!』で作成したブックリストも、再びお配りいたします。水谷さん、広野さん、快くOKしていただき本当にありがとうございました!



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高橋ユキ。フリーのライター。1974年生まれ北九州育ち。『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など。20190925『つけびの村』(晶文社)刊行。info@kasumikko.com

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