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【一幅のペナント物語#66】あやしげな「世界の童話博」の謎に迫る

今日は「こどもの日」ということで、それっぽいペナントが無いかなーと漁っていたら見つけたのが「世界の童話博」。これはいいや!と調べはじめたのですが、Web上にはごく限られたソースしか無く、当時の会場画像とかも見当たらない謎めいた博覧会でした。


◉ペナント観察:どことなく秘宝館っぽいテイストにも

ペナントに入っている博覧会開催期間が示すように昭和50年代の典型的な仕様の一幅。ループ状のリリアン紐と不織布への多色プリント。「世界の童話博」の文字も、お馴染みの白フチ赤文字。フォントだけは個性的なメルヘンチックなものになっています。童話の主人公たちが描かれていて、はっきりとわかるのはガリバーとピノキオ。左上はなんとなく親指姫のように見えますが特定できないですね。子ども向けの博覧会だというのは分かるんですが、全体から滲み出ている怪しさのせいなのか、どっかの秘宝館の看板のようにも見えてしまいます。僕だけ?

◉熊本県荒尾市で開催された博覧会

Web検索で唯一ヒットしたのが株式会社乃村工藝社さんの博覧会データベースの情報でした。博覧会関係、毎回、ここのサイトにお世話になっているくらい、乃村工藝社さんのアーカイブ凄いです(笑) 当該ページにあった博覧会の概要を伝えるテキストを一部加工して引用してみます(会場内に用意された施設やパビリオン、アトラクションらしきものを【】でくくってみました)。

急速に進む情報化社会のなかで、ともすれば忘れがちな心のふれあい、親子の対話の場を提供し、ひいては情操教育の一助にと、九州こども博シリーズ第2弾として開催した。長い間語り継がれてきた世界の童話の名作から選び、大人たちは幼い日の追憶にひたり、こどもたちは体験した喜びと感動を覚えるよう会場を構成した。【会場メインゲート】は高さ10メートル、長さ50メートルの童話の国の城壁で、上にはおもちゃの衛兵がファンファーレを吹奏する。【にっぽんのむかしばなし館】では最も身近かな日本の民話のなかから、とくになじみの深い浦島太郎、竹取物語、金太郎、サル・カニ合戦、こぶとりじいさん、桃太郎、一寸法師、花咲じいさん、かちかち山、舌切りスズメ、一休さんの物語が登場。【世界の童話館】ではピノキオ、アルプスの少女、ジャックと豆の木、みつばちマーヤ、おやゆび姫、おとぎの森の怒るカシの木、シンデレラ姫、眠れる森の美女、アラジンの魔法のランプなどを、なだらかなスローブの雲の道を、登ったり下ったり、音楽と照明で楽しく演出した。【どうわげきじょう】では博覧会に初登場の、最近開発されたカラー・ランプによって、白雪姫やウサギとカメの物語を影絵で見せた。会場奧の広いグランドには、この博覧会のクライマックスである【ぼうけんのくに】があり、身長40メートルのガリバーがロープに縛られて横になっており、胸までの高さ6メートル。ガリバーの胴体の中は、【コビトの国】で、たくさんのコビトたちがガリバーの靴や時計の修理をしている動くパノラマになっていた。このほか、コンピュータで合唱する・【ことりのくに】【えほんのみち】【どうわとしょかん】【いたずらひろば】【にじのはなぞ】のなどがあり、不況の中でも花見と童話博が一緒に楽しめると、家族連れが押しかけた。会場面積_1,300.000m2

株式会社乃村工藝社「博覧会COLLECTION」サイトより一部加工して引用

この文章から想像するに、日本昔話や童話の世界を人形などで再現した展示館や、当時の最新技術を使ったシアター、体験型アトラクションなんかが楽しめたようで、なかなか面白い博覧会だったのでは? 乃村工藝社さんのサイトには当時のポスターなどの画像資料もあるのですが、いかんせんサムネイルが小さすぎてよく解りません。実物は法人や行政ならお願いをすれば資料閲覧できるそうなんですが、暇なオッサン個人の頼みは聞いてくれそうもないです。

ポスターやパンフの表紙(株式会社乃村工藝社「博覧会COLLECTION」サイトより)

◉西日本新聞創刊100周年のイベントだった

乃村工藝社さんのサイトで、西日本新聞社さんの創刊100周年記念イベントという冠がついていることが分かったので、西日本新聞関連の過去ソースを探ってみました。文中の"九州こども博シリーズ第2弾として開催した"というくだりと併せて辿っていくと、同社のフォトライブラリーに「九州こども博」と名前のついた写真をいくつか発見。3点とも会場になった三井グリーンランドのモノクロ空撮写真でした。撮影の日付から考えると「世界の童話博」として開催した第2弾の時期よりも前なので、第1弾開催の時のものかと思われます。写真からは結構な賑わいだったことが伺えますね(人がゴミのようだ)。

三井グリーンランドの九州こども博会場=1976年(昭和51年)3月28日、
熊本県荒尾市(本社機から)(西日本新聞フォトライブラリーより
三井グリーンランドの九州こども博会場=1976年(昭和51年)3月28日、
熊本県荒尾市(本社機から)(西日本新聞フォトライブラリーより

◉三井グリーンランドのパークイベントだったっぽい

Wikipediaで博覧会関連のページをあたってみても、地方博覧会などのリストには「世界の童話博」や「九州こども博」の名前はなく、「・・・もしかするとこれは三井グリーンランドが主催した園内イベントなのかも」と思い至りました。「三井グリーンランド」は九州最大級の遊園地として1966年(昭和41年)7月に誕生し、親会社だった三井鉱山が撤退した後は「グリーンランド」に名前を変えて現在まで続く、たぶん九州の皆さんにとっては超有名なスポットなのだと思います。この遊園地が独自で企画したのが、この「世界の童話博」だと思うのですが、いかんせん確認できる資料がありません。ただ、乃村工藝社さんの「博覧会COLLECTION」の中には、後年、同じ名前で兵庫県の宝塚ファミリーランドで開催されている資料もあったので、おそらく間違いないと思います。そういう事情があってペナントにも「熊本県」や「荒尾市」などの地名が入っていないのかもしれませんね。当時、開催期間中に園内で限定的に売られていたお土産ペナントというところでしょう。まあ、それだとしても「三井グリーンランド」の名前くらい入っていても良さそうですが・・・。

▲やってる内容を見ると、立ち位置的に「西の東京ドームシティアトラクションズ(旧・後楽園ゆうえんち)」っぽいなあと思いました。こういう場所が近くにあるところはうらやましい。

◉ニッポンに2度も現れ消えたガリバー

ペナントに主人公のようにドドーンと描かれているガリバー。博覧会のあと、どうなったのだろうと思ったとき、真っ先に思い浮かんだのは、あの富士山のふもと、上九一色村にあった「富士ガリバー王国」です。博覧会ガリバーは約40m、王国ガリバーは身長45mだったそうなので、「童話博」で寝ていたガリバーがそのまま移設されたのではないかと思ったのですが、ガリバー王国の開園は1997年(平成9年)なので、さすがにその説は無さそうです💦 しかし、なんにせよ、なぜ日本に身長40m越えのガリバーが2度も誕生したのでしょう。世界広しと言えどたぶんそんな国は日本くらいのように思います(どっか他の国で巨大ガリバーがいるテーマパークあります?)

「富士ガリバー王国」HPのキャッシュページ

誰か裏で手を引いていたガリバー好きがいたのか、真相はガリバーとともに闇の中ではありますが、でっかいガリバーを生で見たかったですね。

仰向けの巨人(出典:https://pbs.twimg.com/media/FMQ3h8wagAAuS6Q?format=jpg&name=medium)

・・・・でもここまでリアルだと、小さな子どもにはトラウマになるかもなあ。せっかくのこどもの日が恐怖の思い出になるやもしれませんね。

ナショナルジオグラフィック日本版サイトより(出典:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/15/330261/051000229/?P=2)

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