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【出逢ってしまった人たち#4】"モテない男の証"にまで貶められたペナント

僕と同じように、ある日不意にペナントと出逢ってしまったピープルが、Web上にぽつりぽつりと居ることを知りました。とはいっても、そんなに大勢ではありません。その貴重なペナント・エンカウンターの皆さんのブログを拝読しながら、その驚きや感動など多様なココロの動きを行間から受け取って「そうだそうだ」と味わいたい!という企画がこの「ペナントに出逢ってしまった人たち」シリーズです。※これまでに発見したものの中からブログの投稿日が古いものから紹介します

◉これまでご紹介した"ペナント・エンカウンター"の中で、今のところナンバーワンに僕の琴線に触れた投稿をご紹介します。今回の主人公は『部屋と趣味と私』という看板で楽天ブログに投稿されているMick2001さん(コメント欄を見ると、当時は「northernstar」というお名前で投稿されていたようです)。お名前から2001年生まれの方かな?と思いましたが投稿からするとそんなわけはなく・・・現在は30代後半から40代くらいでしょうか。2018年の投稿を最後に更新されていないのですが、今回紹介するのは遡って2007年5月7日の投稿です。

◉まず写真に添えるようにして書かれた最初の一文が、とてもいいです。

実家に帰って自分の部屋の天井を見たらペナントがまだ貼ってあった。

『部屋と趣味と私』2007年5月7日「観光地で買ってきたペナント」より

私小説っぽいムードの書き出し。添えられた写真のちょっと露出不足な感じもマッチしています。この時点で引き込まれました。どのくらいの時間、実家の自分の部屋から離れていたのでしょう。「まだ貼ってあった」と書いていますが、部屋自体が他の兄弟姉妹のものになっていなければ剥がす理由もないと思うので、自分が出て行った後そのままになっていたのでしょう。Mick2001さんは、そのペナントを見て中学生時代のことを思い出します。

妹といっしょにテレビを見ていると「モテない男の部屋」というのをやっていて、天井にペナントが輪になるように貼り付けてあった。すると妹は遠足や修学旅行に行くたびにペナントを買ってきて、許可なしに私の部屋の天井に貼っていった。

『部屋と趣味と私』2007年5月7日「観光地で買ってきたペナント」より

◉そんな企画のテレビ番組、今の時代だと物議を醸しそうだなあと思っていたら、意外とそうでもないらしく、こんな記事を見つけてしまいました。

2:数が多すぎるコレクションアイテム
コレクションの問題は溜めることより、モノに執着してしまうことです。フィギュアや漫画、鉄道模型、酒瓶などのコレクションは、同じ趣味を持つ人にとってはお宝の山でも、興味がない人にとっては「気持ちの悪い収集癖」と捉えられがちです。ものに愛着を抱くこと自体は悪いことではありませんが、つい聞かれてもないのにそれらの良さを熱く語って周りをしらけさせたり、良さがわからない人を否定したりしがちなので、自分だけの趣味にしておくほうが良いかもしれません。

『部屋と趣味と私』2007年5月7日「観光地で買ってきたペナント」より

そのまんま僕のことなので、なんだか胸が痛くなりますが、大丈夫です。今さらモテるともモテようとも思ってないので、気持ち悪い人で結構です。そんな友人も沢山いますしね。しかしながら、多感な10代のMick2001さんにとって、妹の強制ペナントプレゼントはどうだったのでしょう。文面からはおおらかに妹のおふざけを受け止めているようで微笑ましい感じもします。「アニキはモテないからペナントを部屋に貼ってあげる」みたいな妹の行為も、兄妹の距離感の近さを感じさせますよね。しかし、妹さん、センスあるわ。

◉そしてMick2001さんは、再び冒頭の写真につながるエピソードについて触れます。

妹は勝手に「輪にしよう」と息巻いていたが、中高生ではいける観光地も限りがあって、さらに「ペナント」をお土産に買っていくことが嫌がらせに近い時代になってきて売っていないことが多かった。

『部屋と趣味と私』2007年5月7日「観光地で買ってきたペナント」より

そう言われて改めて写真を見ると、

『部屋と趣味と私』2007年5月7日「観光地で買ってきたペナント」より

全部で9枚あるペナントのうち、京都のものが(金閣寺を含めて)6枚を占めていて、残りは「東海大学」の色違いが2枚、熊本城が1枚という構成になっているのが解ります。地域としては3カ所ですね。修学旅行も含めてそんなに頻繁に旅行に出かけることもない世代ですし、部活の遠征とかオープンキャンパスとか入試とか、そういう機会にまとめて買ってきたのかもしれません。「「ペナント」をお土産に買っていくことが嫌がらせに近い時代になってきて売っていないことが多かった」というのはMick2001さんの主観ではありますが、まあペナント販売自体は廃れていっていたのは事実ですね。それにしても惜しい! あと6枚くらいで1周しそうなので、妹もさぞ悔しかったでしょう。Mick2001さんもモテない君への呪いが成立しなくて、ホッとしていたかもしれません。

◉この投稿、コメント欄でのご友人とのやり取りも非常に楽しいです。僕と同じように「妹もさすがですね」と称賛する人もいれば、「自分用に集めていた」という人も。そのニコチンさんは、

オーソドックスなところで、チョウチンなんかもいいですよw これは未だにあるようですが、僕は見かけません。旅行に行ってのおみやげは食べ物以外はうれしくない世の中なんでしょうか? ギャグ専用にでも販売すれば何気に売れるような気が

『部屋と趣味と私』2007年5月7日「観光地で買ってきたペナント」より

とも書かれていて、ペナントと通行手形と"三大ダサ土産"のように言われている提灯の衰退についても言及されています。僕も先日、津和野の某旅館で圧巻の提灯コレクションに出くわしたので、どっかの機会にその話もしてみたいですね。ニコチンさんはその後、こんなふうにペナントを賛美してくれています。

納得いかないのは妙な掛け軸のようなものはみやげ屋にあって、ペナントがないことです。ペナントはけっこう凝りに凝って、しかも安価だったと思うのです。外国人向けのおみやげとしてはナンバー1だと思います。しかも妙な掛け軸のようなものとは違い、地方色や観光地ならではの趣向がすばらしいときています。「美しい国日本」を宣伝できる唯一のみやげだと思います。

『部屋と趣味と私』2007年5月7日「観光地で買ってきたペナント」より

いやいやホント、それは僕も共感しかありません。Mick2001さんもこんなことを返信の中で書かれていました。

ペナントは今マニアが集めて回っているみたいですね。作って店頭に並べてみれば「ペナントはダサい」という先入観のない十代の若者が買うと思いますけどね。まあデザイン次第だと思いますが。

『部屋と趣味と私』2007年5月7日「観光地で買ってきたペナント」より

先入観ありまくりの50代ですが、おっしゃる通り。あのデザインが一周回ってカッコイイんですよね。コロナを乗り越えて、再びインバウンドを強化していこうとする時代の波に乗って、再びペナントの時代がやってきたりはしないのでしょうか? 来てほしいなあ。
 
◉それにしても、センスバツグンの妹さんは今頃どうされているのでしょうか? 実家に戻ってペナントを見て、彼女はどんな回想をするのでしょうか? ペナントは観光地の想い出だけでなく、そこに貼り出された後の想い出も残してくれるのだな、ということが解る投稿でしたね。


【Mick2001さんへ】できるだけ投稿者の許可をいただいておきたいと思うので、コンタクトをしようと思いましたが適切な術を見つけられませんでした。もしこの記事を見かけられたら、大変恐縮ですがコメント欄に一言いただけると幸いです。よろしくお願い致します。 

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