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【ワルモノ絵】ショック!ショック!すべてが異色のアイアンキング

そろそろ【ワルモノ絵】ネタの頃合いかと思いやってまいりました。今回は昭和のアナーキスト脚本家・佐々木守さんの情熱が、これでもかと叩き込まれた『アイアンキング』から、強烈なインパクトを遺して散っていった敵対組織にスポットをあてて回想していこうと思います。


◉とどめは人間に任せとけ!削り役ヒーロー「アイアンキング」

第1話に登場する不知火ロボ「バキュミラー」
あらゆるものを吸引する異形の左手にしがみつく我らが静弦太朗!

1972年(昭和47年)に放送された『アイアンキング』は、その異色な設定とストーリーで特撮界隈では知られた作品です。主人公を演じるのは当時既に人気俳優として活躍していた石橋正次さんと浜田光夫さん。この2人が子ども向けと言われていた特撮番組への出演を決めた理由は、全話の脚本を務めた佐々木守さんの存在が大きかったと言われています。

よく話題になるのは、浜田さんが変身するアイアンキングではなく、石橋さん演じる静 弦太郎が毎回のように敵にとどめを刺す設定。変身して登場するもタイムリミットまでに敵を倒せず退場してしまうアイアンキングは、"最弱ヒーロー"なんて不名誉な称号も。初めて見る人は「え!そっちが倒しちゃうのかよ!」と思わずツッコむこと間違いなしなのですが、慣れとは恐ろしいもので、そのうちに慣れてきちゃたりします。いやはや。

◉国史から抹消された先住民族「不知火一族」、2000年の恨み

不知火十人衆がアイアンキングたちの最初の敵。
日本政府を「大和政権」と呼び、その転覆を画策します

"筋金入りの左翼"と言われていた佐々木さん。実際に日本赤軍を支援し、最高幹部・重信房子の著書『わが愛わが革命』のゴーストライターまで務めたような人の描くシナリオが、異色じゃないはずがありません。今観ると「よくぞこのトーンで製作・放送をできてたな」と驚くほど、アナーキズム溢れる挑戦的なシナリオの『アイアンキング』。その最初の敵が、二千年前に大和朝廷によって歴史から抹消された先住民族「不知火」一族の末裔たち。アイヌなどの先住民族に関心の高かった佐々木さんらしい設定です。実の兄弟かどうかは不明ですが、不知火太郎をリーダーに、順一郎から順九郎の名を持つ10人が、それぞれ専用のロボットを使って破壊工作を行いました。日本征服とか世界征服、人類滅亡などではなく、あくまで現政府の転覆=二千年越しの復讐が目的、というのがスケールデカ過ぎ。

◉次なる敵、中東風ルックの「独立幻野党」も政府転覆を画策

「幻の月光」というカッコイイ名前のリーダーと幻十二人衆。
メンバーのコードネームは、睦月とか如月とか陰暦月から採られています。
まあ、全員日本人だもんなぁ…こんな出で立ちしてるけど

次なる敵は不知火一族壊滅と同時に姿を現した「独立幻野党」の皆さん。不知火は"一族"でしたが、今回は"党"ということで、より一層、政治思想の香りが漂うネーミング。とはいえ、やることは殆ど「不知火一族」と同じで、ロボットをバッジ型コントローラで操るんです。番組のマンネリ打開策として人型から怪獣型にロボットのコンセプト変更をするにあたって、敵組織を新しくしたというような大人の事情なのでしょうか。党員のカラフルなコスチュームはよく見ると学芸会っぽくてチープなんですが、"テロの正義"を問うようなお話もあって、ピリリと小粒で辛いクールになってる気がします。

◉最後の敵「タイタニアン」は普通に宇宙からやってきた

リーダーの1号以下、7号までいるタイタニアンですが
基本見た目のビジュアルは全員一緒です

最後の刺客はついに宇宙から。地球を植民地にするためにやってきた侵略宇虫人という、至極まっとうなワルモノです。さすがに国家転覆ネタはお咎めがきたのでしょうか。「宇虫人」と謳っているように、タイタニアンたちは自らが変身・巨大化して昆虫系の怪獣になって暴れまわります。「タイタニア~~ン!」と叫びながら変身する様はなんだかほっこりします。第22話では絶賛造成中の土地に秘密基地をつくってすぐバレたり、第24話では10億円はたいてわざわざマンション丸ごと買い上げて基地を作ったりと、どこかヌケてるところもあるタイタニアンですが、意外とアイアンキングを手こずらせた連中です。

◉"街を破壊するウルトラマン"伝説を生んだ最終回

タイタニアンに憑依されてしまい黒マント姿で街を破壊するアイアンキング。
F-4ファントムをひょいと箸でつまんだりもします

最後に紹介するワルモノ絵は"ワルモノになったアイアンキング"です。最終回、迂闊にもタイタニアンに意志を乗っ取られてしまったアイアンキングは、熱に浮かされたような状態で街で大暴れ。最終的には正気に戻って、タイタニアンを壊滅させてハッピーエンドになるのですが、埼玉県の子どもたちは最終回が放送されなかったばかりに、暴れまわるアイアンキングの姿というバッドエンドになっちゃったという話はあまりにも有名ですね。

◉2023年、福岡でアイアンキングが復活していた!

ここからは余談になりますが、なんと昨年、福岡地区水道企業団さんが50周年記念事業の応援隊長として、アイアンキングをフィーチャ―していたというのを知りました。「水」にちなんだキャスティングということですが、誰が50年以上前のマイナーヒーローを使おうと言い出したのでしょう。実にあっぱれ! 様々なイベントが催されただけでなく、新たにスーツも新調されているんですね。本気度がヤバイです。にしてもデカくてマッチョだな、令和のアイアンキング。これを機にこのスーツでリブート作品つくってくれないですか、宣弘社さん。まあ、円谷さんみたいにはいかないか・・・。

ポスターのほうは昭和アイアンキングの画像ですね
感謝状を受け取る令和のシン・アイアンキング。ガタイが頼もしい(宣弘社Xより)

上の写真はフェイクだそうで、下のほうが真実らしいです。感謝状ちっさ!

こちらに、アイアンキングの活躍っぷりがまとめられております。

福岡地区水道企業団 50周年記念事業
名誉おうえん隊長 アイアンキングの軌跡

https://www.f-suiki.or.jp/wp-content/uploads/2024/02/fba2ade1738d943fd28b2ba745bf17cd.pdf

【追記】いつもアップしている、おまとめ画像を載せ忘れていました!

着ぐるみワルモノの数は少ないんですよね。アイアンキングと静弦太郎のイラストはお気に入り

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