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煙草が良くないことは十二分にわかっている

人生どうですか。

僕は大学生以来の喫煙者で、と書くと「うわ」となる方も多いのはわかっています。喫煙者と言うと、最近は肩身が日に日に狭くなり、益々憎まれ嫌われるパブリックエネミー。タバコそのものは少しずつ税も増え健康に百害あって一利なし。どれだけ棍棒でぶん殴っても許される悪の権化。街角に無限にあった喫煙所はなくなりつつあり、路上に当たり前に落ちていた吸殻も見かけなくなりました。僕も今はもう電子タバコ専です。電子タバコは電子タバコで臭いですけどね。

欧米では日本より一足先に嫌煙運動が高まり、屋内ではほぼほぼ吸えなくなっていましたが、10年前に行ったパリでは屋内こそ厳しかったものの屋外はむしろ無法地帯になっていて、歩きタバコ上等であちこちに吸い殻が不法投棄され、これが分煙なのかと戸惑ったものです。今はどうなんですかね。日本も飲み屋の大半は禁煙ですが、慣れてしまうもので、いまはお酒飲んでる時にタバコ吸う必要ないなというくらいにはなりました。

長らく使ってきたiQOSのホルダーがどうも接触不良か寿命か、本体に充電はされるもののスティックへの充電が出来なくなってしまって、致し方なくストックしてあった紙タバコでお茶を濁しています。さすがに臭い。ただまあこれがタバコの匂いだよなと少しエモさも感じます。大学生の頃に少し思いを馳せる。冬の夜、寒い寒いと外に出てタバコに火を付ける。10分に満たないくらいの、喫煙者だけの時間。話したことなんてなーんにも覚えてませんが、その場が繋いだ友人関係、先輩後輩、大人と学生と特別でもなんでもない雑談の時間が確かにありました。


タバコを吸う女性と付き合ったことはないんですが、僕がタバコを吸うのに付き合ってくれた女性はいました。20歳。名のある有名私立大学に通い、就職活動もまだ先で、人生のこれからはまだ棚上げしたモラトリアム特有の好奇心が働いたのだと思います。彼女らは笑いながら、ちょっと吸ってみていいですかと言い、僕の火のついたキャメルをひと呼吸、ふかすように燃やすと、決まって渋い顔をしてもういいやと返してくる。ある人は大学の学生会館の喫煙所で、ある人は飲み屋の席で、ある人は旅館の部屋で、ある人は自宅のベランダで、ある人は飲み終わりの駅前で。

吸いかけを受け取る僕も「やめておきなよ」と言いながら笑って、けれど制止することもなく、また知った風な顔で残りを吸う。

夏の夜、冬の朝、それぞれの時間のそれぞれの場所に、ろくなことでもない思い出は積み重なっていくんだなと、冬になった夜のベランダで寒い思いをしながら吸い込む害ある煙が感傷を引き立てる。しょうもない記憶も、歳を重ねていよいよ美化されつつあるんですかね。


吸わせてとひと息吸い込み赤く光る煙草に残る赤い口紅

煙草手に外出るあなたについていくコートを羽織ってただ見てるだけ

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