『世界は「関係」でできている ~美しくも過激な量子論~』を読んだ

世界は「関係」でできている ~美しくも過激な量子論~


著者:カルロ・ロヴェッリ
訳:冨永星

この本で得られること

この本は量子論の話であるが、哲学的な話でもある。
カルロ氏(『時間は存在しない』の著者)が提唱する量子論、モノの在り方についての考えを知ることができる本である。
一言で内容を言うと、タイトル通り「関係」によってすべては成り立っているという論旨。数式は1つ程度しか出てこず、例えを用いて文章で説明をしてくれている。
ただ量子論の有名どころの話をいくつか知っている方が読みやすいことは違いない。例えばシュレーディンガーの猫の話や、二重スリット実験の結果(光子は観測されないときは波だが、観測されると粒であるといった話)などである。

この本に書かれているシュレーディンガーの猫の話は以下。

猫が一匹、箱に閉じ込められている。その箱には、二分の一の確率で量子現象が起きる装置が入っていて、もしも量子現象が起きると、その装置の睡眠薬の瓶のふたが開いて、猫は眠ってしまう。量子論によると、このとき猫のψ波は「起きている猫」と「寝ている猫」の「量子的重ね合わせ」の状態にあって、わたしたちが実際に猫を見るまでは、その状態が続く。
つまり猫は、「起きている猫」と「寝ている猫」の「量子的重ね合わせ」の状態にあるわけだ。

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睡眠薬の部分が通常のシュレーディンガーの猫の話とは違うが、それはその後のたとえ話につながるためのようだ。

(かなり大雑把な)概要

著者の主張としては、自然を理解したければ孤立した対象物ではなく相互作用(関係)に注目する必要があるとのことだ。
木が太陽の光からエネルギーを得て酸素を作り村人がそれを吸いながら星を観測しほしは他の重力に引っ張られ……など、濃密な相互作用から成り立っている。逆に何にも相互作用を及ぼさない対象物は存在しないに等しい。
好き勝手な物理的存在が、別の好き勝手な物理的存在にどう働きかけているかだ。
量子論も、好き勝手な対象物が別の好き勝手な対象物に対してどのように立ち現れるかを記述しているはずとなる。特殊な観測者がいるわけではなく、あらゆる種類のすべての相互作用を観測とみなすことができる。
またこのことから対象物の属性(対象物が別の対象物に働きかけるあり方。例えば速度は、フェリーの上を我々が歩いているならば、そのフェリーに対してはとある速度で、流れる水に対してはまた別の速度で歩いている、となる)も相互作用がないのならなし、つまり相互作用なくして属性なしとなる。
この話から先ほどのシュレーディンガーの猫の話に戻る。
箱の中にいる猫からすれば、睡眠薬が発せられたか発せられないかはわかるのだ。猫からすると寝ているか起きているかのいずれかで同時に両方はありえない。
対して箱の外で見ている人は、睡眠薬の瓶とも猫とも相互作用をしていない。このとき箱の外で見ている人からすると「眠っているのと起きているのとの重ね合わせの状態」にある。
猫からすると寝ているか起きているかはっきりしている。箱の外で見ている人にとっては量子的重ね合わせが存在している。この二つはともに正しいといえる。ある対象物にとって現実であるような事実が、常に他の対象物にとっても現実であるとは限らないのだ。

感想

量子論の本というより、哲学の本だったという感想だ。量子論も自然哲学といえばそうなのだから当たり前かもしれない。
本では、上記の話からさらに仏教の話(ナーガールジュナ)の話に発展する。色即是空の話だ。本を読んでいるうちに仏教についても知りたい気持ちになったことは確かだ(本は買っていないが)
私は量子論については本当に触り部分程度の知識しか持ち合わせていない。なのでこの本を読んだ後も「そうなんだ」程度の理解しかできなかった。より詳しい人が読めば深い理解や感銘を受けるかもしれない。
この本を読むときは、まずは後ろの「日本語版解説」に目を通してから読むことが良いかもしれない。途中に出てくる1つだけの数式についてもわかりやすく説明している。





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