9の巻『初デート③』

とてもいい雰囲気だったのかもしれないが
なんせまだ小学生であり恋愛レベル0の私からすれば
今日一日は私の中でだいぶ頑張った方で、、
お腹いっぱい、大満足だった。

ゲームの腕前も堪能出来たし、
角度によっては、イケメンに見える事も分かった。
なんなら手まで握られちゃってんだから、
発見！発展！言うことなしだ。

じゃあ今日はこの辺で、
そろそろおいたましようと思った時
"これ一緒に観たい"
たくやくんが汚ねぇ机の上に置いてあった
ビデオテープを再生し始めた。

今から？何のビデオ？？いろんな疑問が浮かんで来る。てか、帰りた、、
流されるタイプの私はそんな事言えるはずも無く、
たくやくんの要望を承諾した。

その映像には、ベットに腰掛けた2人の男女が映っている。
女性の方は50代位のふくよかな人
男性の方は30代ぐらいのわりとイケメンガッチリ系
何やら会話をしているようだが、音量が小さく聞き取れない。

"音上げない?聞こえないよ"
"近所迷惑だからやだ"

お前の部屋の壁はダンボールか!ってつっこんでやりたかったが、本当に嫌そうだったし、私自身もその映像にさほど興味がわかなかったので、これ以上お願いはしなかった。

5分...10分映像のつまらなさに帰りたい欲求が増していく。するとたくやくんがおもむろに早送りをし始めた。
どうやら、たくやくんもつまらなかったみたいだ。
そして、ここだと言わんばかりに再生ボタンを押した。

さっきまでベッドに腰掛けていた2人は
いつの間にか全裸になっていた。
どーゆう流れで服を脱ぐ事になったのか？
大事な部分を早送りされてしまったので全く分からない。

"何で裸なの？"
私の質問に対し、半ニヤケのたくやくんが
"見た事ないのAV？"

頭の中が"？"でいっぱいだった。
AVに対してでは無い。この状況にだ。
何で数分前にプレゼントを渡して、お互い手を握ってキュンとした所に奴は爆弾を投下してきたんだ？
見た事は無かったがAVの存在は知っていた。
が、が、何故、今、このタイミングで？
私は観てはいけないものを見ている罪悪感にかられて

"帰る!バカ!"

たくやくんに暴言を吐き捨て家を飛びだした。
この日の事がきっかけで、たくやくんとは気まずくなってしまい、学校でも話さなくなり
私の初恋はAVによって終わった。

そして私の脳内には50代のおばさんと30代のイケメンガッチリお兄さんが交わる残像だけが頭に残った。