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狸奴-Rido-
2020年8月25日 22:36
まだ夜の明けきらない群青の空の中、山の麓に深く広がる針葉樹の森の中を、双子が下草を踏み分けながら歩いている。明るい赤黄色のつやつやした毛並みに大きくとがった耳、ガマの穂のような太いしっぽを持つキツネの兄弟だった。「アトゥイ、早く夜露を集めてしまおう。朝日が昇ってきてしまう」カントはそう言いながら、器用に夜光草の葉にたまる夜露を透明な硝子瓶へ集めていく。「わかってるよカント」先に