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雨の日

彼女との思い出は雨の日が多い。

彼女は自分で「私たち、雨男か雨女なのかもね」
そう言っていた。「絶対僕じゃなよ」僕は笑いながら言う。
雨は嫌だと感じることもあるけど、この会話を続けることが出来るから悪くもなかった。

初めて出会った入学式。
付き合う前に初めて一緒に帰った帰り道。
付き合った日。初めてのデート。

思い出の中の雨はすごく綺麗で、好きだった。

でもそれは楽しかったときの話で。

最近、彼女はとても冷たい。
表面上は隠してるつもりだろうけど、気づいてしまう。ずっと一緒にいたから気づいてしまう。

デートに誘っても「どうせ雨降るからまたにしよ。」と言われてしまった。
いつものように雨でも楽しんで笑ってほしい。でもそれはもう叶いそうにないみたいだ。

彼女と別れるための心の準備をした。
時間はかかったけど、前を向くために。何度も泣きながら。

そして、別れ話をするために一緒にカフェで会うことにした。
きっと一緒に出かけるのは最後になるだろう。
きっと会うのも最後になるだろう。
店に着くと、やっぱり雨が降っている。

「やっぱり雨だね」彼女は言った。
「僕たち、雨男か雨女なのかもね」彼女が言った言葉だ。今までのことをおもいだしながら。
「絶対私じゃないよ」彼女は笑いながら言う。彼女の笑顔は久しぶりに見た。嬉しかったけど、悲しかった。

しばらく2人で話をした。出会った日から今までたくさんのことを話した。涙を流したのは僕だけだった。そして日も暮れてきた頃、彼女は言った。

「今までありがとう。ばいばい。」
「うん、楽しかったよ。」

もう会うことも無いだろう。未練なんてもうない。だけど、忘れることはできない。大好きだった。
別れ話をした後、彼女は先に店を出た。


思い出にひたりながらふと外を見ると雨は止んでいた。

彼女との日常を思い出す。雨ばかりの日常を思い出す。


「僕じゃないって言ったじゃん。」




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