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地方創生×映画論

地方創生とは

“地方創生とは、少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことを目指すものです。”と財務省関連サイトでは紹介されている。2015年から始まったある意味の国策だが、実は(と言うほどでもないが)この様な取組みは各自治体で割と以前から始まっていた。例えば徳島県神山町(2005年に町内全域光ファイバー敷設が契機)だったり、島根県海士町(2003年合併協議会の解散が契機)だったり、全国の過疎化や高齢化がいち早く進む町では様々な取組みが行われていた。その中でも今回は、京都府綾部市での取り組みに映画「Xメン」を絡めながら触れてみたい。

「半農半X」と映画「Xメン」?

2000年、綾部市の豊里西小学校閉校後、その跡地利用を目的にNPO法人里山ねっと・あやべが設立された。当時の事務局で現在は北九州市立大学地域共生教育センター特任教員である塩見直紀氏が提唱するのが「半農半X」である。著書「半農半Xと言う生き方(2003年)」では、“一人ひとりが「天の意に沿う持続可能な小さな暮らし(農的生活)」をベースに「天与の才(X)」を世のために活かし、社会的使命を実践し、発信し、まっとうする生き方”とある。このコンセプトに共感して多くの移住者やいまで言えば関係人口が増え、2007年からは綾部里山交流大学、これもいまで言えばソーシャルビジネスやコミュニティビジネスの育成事業が開始されていた。「X」の名のもとに様々な「移住者が増えた町」そんな印象を持っていた執筆者だが、なぜかこの綾部里山交流大学のコーディネーターを2018年から3期務めることになる。その時に感じたのが「半農半X」=映画「Xメン」だ。

真の「X」を語る難しさ

映画「Xメン」とは、アメリカのマンガに登場する突然変異によって超人的能力を持って生まれたミュータントの集団で、映画は10作以上におよぶ人気シリーズである。またミュータントと言っても、もともとは同じ人間で“人間たちを守りミュータントに対する世界の偏見を払拭するため戦いを続けている”「Xメン」と、“超人的能力で人間を支配しようとするミュータント・テロリスト”になってしまう「(元)Xメン」とが存在する。この映画の背景にはアメリカの社会問題でもある“ユダヤ人、アフリカ系アメリカ人、社会主義者、LGBTなどの、アメリカのマイノリティたちが経験”したことが含まれているとWikipediaにはあるが、現代の日本社会の中、特に地域社会における問題や課題にも「近しいものがある」と感じている。都会からやってきた移住者の「超人的能力」を地域住民のため(だけ)に使用するのか、自分たちの自己実現のため(だけ)に使用するのか、はたまた利益追求のため(だけ)に「Xメン」たちを利用するのか。これは決して綾部市だけでなく、執筆者のフィールドでもある舞鶴市、福知山市また昨年から調査に入っている福井県嶺南地域でも、移住施策(予算は地方創生)全体に言えるのが、そこに「X」はあるのだろうか?そして「X」とは本当は一体なんだったのか?いま一度、もう一度、問うてみたい。

ーーー2019年兵庫県尼崎市みんなのサマーセミナーでの事例紹介より改変ーーー

地域組織研究所

松井裕督ファシリテーターオフィス

松井裕督


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