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大海原へ(ドラクエ5全楽曲解析)

楽曲構成

前奏(2小節)-Aパート(12小節)-Bパート(8小節)

前奏(2小節)

物語冒頭のビスタ港に向かう航海のシーンのみ流れる。波打つようなフルートの3連符、金管の和音でgrooveを整えている。F/Gという浮遊コードが壮大さを予見させる。

フルートの2重奏も浮遊度の高い4度ハモである。

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Aパート(12小節)

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ストリングスが「レミソラ」を主体としたメロディを雄大に奏でる。「レミソラ」はアボイドノートにならないため、コードが移り変わる中でテンションメロディとなり印象派的?な色どりをみせてくれる。

ちなみにこのメロディはVIIIの「空と海と大地」の主旋律と酷似していて区別がつきづらく、すぎやまこういち先生のお気に入りのフレーズと思われる(笑)。

フルートは冒頭と同じ3連符で「ソラソラ」と波打っているが、ところどころ16分音符の大きいアルペジオが入るのは波が不規則に変化する様をうまく表現している。もちろん「ソラ」はアボイドフリーなのでどんなコード変化にも対応している。

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残りの4小節は、1小節だけDm7-5(9)を置いてCmへの転調を予見させておき、3小節ドミナントGの分数コードで一旦静まり、Bパートの爆発に備える。13小節目と14小節目はチューバは休んで、ピチカートのバスに変わる。ここでテンポもすこしリタルダンドする。

ストリングスの駆け上がりは実質BパートでCmへの転調後状態であるため、A♭の音がはいるのは何ら問題ない。

Bパート(8小節)

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Bパート前半は楽曲の最高潮の部分でホルンとチューバのリズムがフォルテで躍動する。とくに冒頭1小節はハープが華やかさを添えている。

ハープの前半はアルペジオで1拍目はFm7の駆け上がり、2拍目はA♭maj7の駆け下がりとなっている。A♭maj7はFm7からルートの「ファ」を取り除き、9thの「ソ」を加えただけなので何ら違和感がない。最高音9thからの掛け下がりというのもちょっとした隠し味となる。

ハープの後半はFm7の音階の駆け上がりであるが、注目は32分音符x4、5連符、32分音符x4、32分音符x4となっているところだ。こうすることにより、各8分音符の開始音がそれぞれファ、ド、ラ♭、ミ♭とFm7コードトーンとなる。また最後の音もラ♭でやはりコードトーンである。

このようにハープのアレンジはアルペジオor音階が典型で、音階の場合は、開始音、終了音、強拍音をコードトーンにするのがポイントである。そのためにイビツな位置に3連符、5連符、7連符等を挿入して音階の進行を調性するのは問題ない。

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その後2小節目でハープの駆け上がりをフルートが受け継いてメロディの最高音のレに達し、ストリングスとユニゾンで雄大に歌い上げる。この部分の盛り上げ方は実に巧みである。

その後4小節目のA♭maj7から徐々に曲調は静まり、波打つフルートの3連符音形が主役になる。バスのクリシェ「ラ♮ シ♭ ラ♮」を経てA♭に戻り、7〜8小節はD♭7 Dm7-5 Gとコード進行する。D♭7はGの完全代理で、メロディのソのがートメロになるのを回避して#11thにする常套手段である。

最後はハープがGのアルペジオを静かに奏でてリタルダンドと共にひっそりと曲を閉じる。

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