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社会保険労務士への道②

前回の続きです。

では社会保険労務士の勉強は何をすればいいのでしょうか。


労働基準法

文字通り、労働者が労働するにあたっての基準を定めたものになります。賃金、労働時間、休日などについて定められていますが、特に労働時間についての決まりごとが多いように思います。それ以外にも、妊産婦とか年少者とかの労働についての規約もあります。坑内労働(炭鉱などで働くこと)の規定とかもありますが、今時そんな所で働いている人もいるのでしょうか。

労働者安全衛生法

①主に工場や建設現場においてどのような組織体系で運営していけばいいか②危険な機械や危険な薬物をどのように扱えばいいか
③健康診断について
が主要な項目です。範囲が膨大な割に配点が少ないので、あまり深く立ち入りすぎないのが肝心です。衛生管理者とか常時50人以上の全業種で必要なはずなんですけど、私は今まで働いてきて一度も見たことない。

労働者災害保険法

業務上の負傷、疾病、障害、死亡に対して迅速かつ公正な保護をするために、必要な保険給付を行う(法1条)ための法律です。通勤災害も含まれます。どのようなケースで労災保険の適用になるのかという具体例がいっぱい出てきます。正直言って「そんなことありか!」と思います。しかもその根拠が昭和20年代に出された通達だったりします。最近はいくつか「業務上の疾病の認定基準」というのができて、それのせいで難しくなっています。

雇用保険法

労働者が失業したときに限らず、教育訓練給付金とか、定年後の継続雇用の促進、育児・介護休業期間中の生活保障など、色々な場面で給付がもらえるのですが、それだけ給付の種類が多いのと、とにかく数字が多いというのが特徴です。私が仕事でやっている助成金関係もここに含まれます。社労士の仕事としては大きな柱の一つになっているのですらしいのですが、試験で問われることはほとんどなく、従ってテキストに載っている内容もあっさりしたものです。

労働保険徴収法

労働保険(労災保険と雇用保険)をどのように徴収するかという法律です。つまり手続きについて定められているので、基本的に暗記科目です。社労士試験は20個の語群の中から空欄に当てはめる言葉を選ぶ「選択式」と、五肢択一問題の「択一式」という2種類の出題形式があるのですが、労働保険徴収法は「選択式」では出題されません。(数年前から「出ない」と明記されるようになりました。)なぜかは分かりません。

年金二法

国民年金法と厚生年金保険法です。国民年金の上に厚生年金が乗る形になるので、国民年金法を勉強して、その上で厚生年金法を勉強します。(試験の冊子の順番はなぜか厚生年金法の方が先です。)老齢年金は年号との戦いです。だいたい昭和で出てくるので、今年が昭和98年ということを頭の片隅に入れておけば色々とスムーズに出てきます。あと未だに夫婦がセットだったり、配偶者が最強だったりするのですが、これは今老齢年金をもらっているような世代は結婚している人が多いからだと思われます。数年前までは妻に先立たれた夫は遺族基礎年金がもらえなかったのですが、数年前からもらえるようになりました。そういうところは地味にアップデートしていたりします。

健康保険法

業務外でけがや病気をしたときに病院に行くと思いますが、その時にお世話になるのが健康保険です。ある意味一番身近な法律です。だいたいのテキストは健康保険法の後に年金二法が出てくるのですが、健康保険と厚生年金は、加入するときなど同時に申請することが多いので、厚生年金が終わってからやってもいいと思います。最近は保険証とマイナンバーカードを統合するとかいうことで議論が喧しいですが、私は以前から、統合したいのなら、マイナンバーカードに健康保険証の機能を付けるのではなく、健康保険証にマイナンバーカードの機能を付けるべきだと言っています。

一般常識

今まで扱ってこなかった「その他の法律」といった位置づけです。大きく「労働一般常識」と「社会保険一般常識」に分かれ、選択式でそれぞれ1問ずつ、択一式でそれぞれ5問ずつ出題されます。「労働一般常識」は労働契約法や労働組合法、労働者派遣法など。「社会保険一般常識」は国民健康保険法、介護保険法、船員保険法などがあります。そのどちらにも属さないと思われるものに社会保険労務士法があります。あと、「労働一般常識」は労働経済や白書についての問題が半分ぐらい出ます。すなわち最近の労働をめぐる時事問題的なやつです。他の科目だと過去問を解くのが代表的な勉強方法ですが、これに関しては過去問を解くという勉強方法ができないので、ひたすらテキストを読むということになります。

国民年金法と厚生年金法、労働一般常識と社会保険一般常識を別の科目とすると、これで10科目ということになります。選択式は労基法と安衛法で合わせて1問、徴収法がないので全部で8問(1問につき埋める空欄が5つ)を80分で午前中に解きます。択一式は、労基法+安衛法、労災法+徴収法、雇用法+徴収法、一般常識、国年法、厚年法、健保法それぞれが10問ずつで計70問を、午後に3時間半ぶっ通しで解きます。(長いようにみえますが意外と早く終わります。)労災法と雇用法の後ろに同じ徴収法がついていますが、労災法の後に徴収法が3問と、雇用法の後に徴収法が3問の計6問出るということです。
合格基準は毎年変わりますが、これも試験の後に試験センターから発表されます。だいたい選択式については1科目につき5つの空欄のうち正解が2つ以下の科目が一つでもあると不合格になります。たまに全体の平均点が低くて、2つでもいいという科目が出ることがあります。(これを救済といいます。)なので自己採点で2つしか取れなった科目がある人は、合格発表まで、救済が出ないか毎日神仏に祈ります。択一式の場合は、合計の合格点も毎年発表になります(70点中45点前後が多いです)が、3点以下の科目が一つでもあると不合格になります。(こちらはあまり救済については聞いたことがありません。)つまり不得意科目は作れないということになります。

以上が社労士試験の概要になります。勉強方法として色々な学校が出ています。T社は受けたことがありますが、個人的にはあまり好きではありません。L社は悪くはありませんが、講義のネット配信を利用するときに独自アプリのインストールを要求されます。O社は評判はいいらしいですが、受けたことがないので分かりません。あまり社労士というイメージもないし。

試験は毎年8月の第4日曜日。申し込みは毎年4月中旬から5月末までやってます。去年から試験の申し込みがオンラインでできるようになりましたが、それまでは簡易書留で申込書を送り、受験料も郵便局から払い込む形でした。受験料も以前は7,000円ぐらいでしたが、今年は15,000円です。それでもやってみたいという方は、是非来年チャレンジしてください。






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