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「反省会」を反省しよう。

 何かと物議をかもしたNHKの朝の連続テレビ小説「ちむどんどん」が最終回を迎えた。
 私も最初の方しか見ていない。というか日頃は朝7時30分のBSでの放送開始と同時に出勤する生活を送っているので、日常的に朝ドラを見る習慣はない。最近は土曜日に1週間の振り返りをしているので、それを見ることもあるが、それも次第に見なくなった。
 今回は沖縄の本土復帰50周年ということで、沖縄が舞台ということにはなっていた。前回の東京制作の朝ドラ「おかえりモネ」も東日本大震災10周年ということで制作されたので、こういう「〇周年」の節目で朝ドラが制作されることはよくあるようだ。
 それなのに、早々にヒロインが謎の理由で上京してイタリアンレストランで働くことになって、沖縄風味は薄れてしまった。同じく沖縄を舞台とした朝ドラとしては「ちゅらさん」が挙げられるが、そちらの方が沖縄に対するリスペクトが感じられるように思った。主題歌は三浦大知の「燦燦」。彼は沖縄出身なので別に悪くはないのだが、彼の最大の売りであるダンスを封印したスローバラードは、彼が歌う必要があったのだろうかと思う。他にもHYとかDA PUMPとかBEGINとかいろいろ選択肢はあっただろうに。
 それよりも、今回の「ちむどんどん」で問題になったのは、「#ちむどんどん反省会」というタグでドラマの内容を誹謗中傷する投稿が増えたこと。これには「反省会」のタグをつけてはいないものの、国会議員まで参戦し、「権力者による批判は表現の萎縮を引き起こす」という批判がなされた。

この「反省会」というタグは、今までも朝ドラで使われたこともあったが、今回の使われ方はひどい。そもそも、「反省」とは、「自分のよくなかった点を認めて、改めようと考えること。」である。つまり「反省」ができるのは制作の当事者だけである。このタグの投稿者は、自分が「ちむどんどん」の制作に携わったつもりでいるのか。だとすると、あまりに当事者意識がなさすぎるのではないだろうか。
 かつて、フジテレビで韓流ドラマが大量に放送された際、いわゆる「ネトウヨ」の皆さんが、「フジテレビは韓流ドラマの放送をやめろ!」という「フジテレビ打倒デモ」を行ったことがある。その際に、ナインティナインの岡村隆史さんが「嫌なら見るな」と言ったらしい。当時、そのネトウヨさんには、「フジテレビは、韓流ドラマを大量に放送することによって、国民に親韓感情を植え付け、日本を乗っ取ろうとしている」という主張があったらしく、それは「嫌なら見るな」で済まされる問題ではない!という理屈があった。今では、さすがに当時ほど韓流ドラマが地上波で放送されることはなくなったが、K-POPは盛況を持続し、日本の音楽業界では無視できない一大勢力になっているし。もっと大局的なところでいうと、韓国由来の旧統一教会が政界に入り込み、ネトウヨさんたちが神と崇めた安倍元首相は、そのせいで凶弾に倒れたというのに、ネトウヨ界隈は沈黙を守り、逆に野党支持者が勢いづくという現状となっている。
 話が少しそれたが、「ちむどんどん」はただの朝ドラなので、「嫌なら見るな」が成立する。NHKが「ちむどんどん」を放送することによって、国民を何らかの方向に教化しようという意思は感じられないし、さすがにそこまで邪推する人はいないと思う。
 「『好き』の対義語は無関心」とはよく言われた言葉で、わざわざ「嫌い」という感情を発露させてもなんのメリットもない。YouTubeが「低評価」を数値化しなくなったのはその典型例である。中には、「自分はNHKの受信料を支払っているので、NHKのコンテンツに対して物申す権利がある」
という人もいるみたいだが、そういう「お客様は神様だ」的思考は改めるべきだし、そういう人に限って実は受信料を払っていなかったりする。「朝ドラを見ることがルーティンになっているので、今さらやめられない」という人は、そのルーティンを自分の好きな音楽を聴くなどといった活動に置き換えればいいだけである。
 つまり、この「反省会」タグに参加している人たちに限らないけど、こういう投稿をする人たちは、日常生活に何らかのストレスがあって、それをぶつける対象としてドラマを選んでいるというだけであって、別にドラマに興味があるわけではないのではないかと思われる。そうでなければ、わざわざストレスの源となるドラマをわざわざ15分とはいえ時間を作って見るはずがない。日常生活における何らかのモヤモヤを、朝ドラを見ることによって増幅させ、それを「反省会」タグとともに投下してスッキリするというのは、本人にとってはそれでいいのかもしれないが、制作の当事者にとってはたまったものではない。
 これもまた古い話になって恐縮だが、かつて裕木奈江という女優がいた。彼女はあるドラマで演じた役柄が、週刊誌などでバッシングされ、そのせいで(本人は否定しているが)海外に活動の拠点を移すことを余儀なくされた。ネットとかSNSとかもなかった時代でもこれなので、今後同様なことが起きたら、それこそ韓国の女優みたいに自殺とかをしかねない。特にヒロインの黒島結菜さんや、「にーにー」を演じた竜星涼さんは心配だ。万が一このようなことがおきた場合、「反省会」タグを使っていた人たちはどのような責任を取るつもりだろうか。
 次回の朝ドラ「舞い上がれ」は、こうした状況をうけ、何らかの対策を講じてくるものと思われる。ただ、脚本については若手を起用していくとのこと。かつては朝ドラのヒロインで新人女優を抜擢していたが、最近はすっかり人気の定着した女優を起用する傾向が続いている。しかし、脚本と演出がしっかりしていれば、演者に経験が少なくても何とかなるものである。むしろ良い脚本によって、演者が得るものも大きいと思う。なので、朝ドラとか大河とかの看板商品には、経験のある脚本家の起用が望ましいと思う。個人的には、「逃げるは恥だが役に立つ」などで知られる野木亜紀子さんの執筆による朝ドラを見てみたいけど…本人が断っていたりするのかな?


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