渡れなかった夏の川を、いつかはひとりで渡って家族に会いにいく歌
暴走Rは、私がギター&ボーカルをしているバンドです。
このバンドのコンセプトは「一曲一人生」。偶然出会ったおじいさん、おばあさんから直接聞いた話やメンバーの祖父母の話を元に、その人生の一部を切り取って曲にしています。
今回リリースした2ndシングル「Deep River」は、とても思い入れのある曲なので、歌詞の内容と共にストーリーを伝えたいと思います。
「Deep River」は、タイトルの通り「川」の曲。あるおじいさんの少年時代の思い出を元に作りました。
おじいさんに聞いた、夏の川での思い出
ある日、コンビニのイートインで珈琲を飲んでいたおじいさんに話しかけると、昔の思い出話をたくさん語ってくれました。その中でとても心に残る話がありました。
数十年前の、ある夏の日のできごと。
3兄弟の末っ子だったおじいさんは、お兄さんたちと川遊びをしていました。そのうちお兄さんたちは、川の向こう岸に泳いで行ってしまいます。「お前もこっちへこいよ~』と誘われたものの、まだ小さな末っ子には川の流れが怖く、行くことができません。すると、お兄さんたちが迎えにきて肩車をして運んでくれたのです。そうして末っ子は、川の向こう岸に渡ることができたのでした。
この話を聞いたとき、川遊びをする3兄弟の姿と、太陽を反射する夏の川の情景が浮かびました。なぜか切なく、何かが胸に込み上げてきて泣きそうになったのでした。
「夏の川」と「三途の川」をかけた歌詞
後日、なんとなくギターを弾いていたときに生まれたフレーズに対して「川っぽい音だ!」と直感したわたしは、そのフレーズにおじいさんの話を乗せることにしました。もはや歌詞を書くというより、フレーズに合わせて自然と詞がついてきたような気がします。
夏の川を渡れないおじいさんと、その情景のことを前半で表現しつつ、サビでは今のおじいさんのことを歌っています。夏の川を一人で渡れなかったおじいさんが、今度は勇気をふりしぼって一人で三途の川を渡り、亡くなった家族に会いに行くという歌詞です。
歌詞はこちら。
Deep River
深い河のむこう 兄が手を振る
蝉の声は遠く 耳をかすめる
いけないや
いけないや いや
いけないや
いけないや いや
深い河のむこう 君が待ってる
水面にうつる 光が眩しいんだ
いけないや
いけないや いや
いけないや
いけないや いや
父さん、母さん、兄さん、ぼくら
また会えるかな
深い河をひとり渡れば
皆に会えるかな
いつか、いつか、ぼくは
ぼくを、夏の河がよぶ
深い河をひとり渡れば
皆に会えるかな皆に会えるかな
歌詞に「いけないや、いけないや、いや」とありますが、最後の「いや」は、「いや… いける!」というおじいさんの心意気なのです。
「Deep River」は「夏の川」「三途の川」「ガンジス川」のトリプルミーニング
この曲のタイトル「Deep River」は、遠藤周作の小説『深い河』(講談社、1993年)のオマージュです。
さまざまな人生を歩んできた人たちが、それぞれの思いや悩みを胸にインドのガンジス川を目指すお話。10代の頃にこの小説に感銘を受けたわたしは、小説のタイトルにあやかって「Deep River」を曲名にしました。
川というのはたくさんの命、文明を育んできたところ。生死や人生観に大きな影響を与えてきたところ。人生そのものを川にたとえることもあります。
「Deep River」はおじいさんの人生そのものでもあります。気持ちが高まりすぎて、泣きながら作った曲でもあります。沢山の人に聞いて欲しいです。
念願のインドで演奏、そしてガンジス川の映像が入ったMV
わたしはこの曲をいつかインドで演奏できたらいいなあと、曲を作ったときから漠然と思っていました。そしてなんと、曲が誕生してから1年半後となる2月に暴走Rが出演したインドの音楽フェスで「Deep River」を演奏することができました! 本当に感謝しかありません。
「Deep River」のミュージックビデオは、インドで撮影したガンジス川の映像や、その旅路をドキュメンタリー風につづっています。
大切な人に会いに、大切な物を探しに、深い河を渡る日が誰にでもやって来ます。人生を冒険している人に、この曲を届けたいと思います。
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