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【エッセイ】童心に帰りたくなる夏休み

「旅先で本を買うのが好きで」

そう言葉にしたとき、そうなんだよね。旅先でこそ本を買いたいんだと腑に落ちた。
今まで腑に落ちていたつもりでいたけど、案外深いところに落ちている認識、というものは少ない。

お盆休みの終盤、夫が実母のことと仕事と子育てとで忙しなくする私に少しの息抜きをと、弾丸旅行を用意してくれた。

「家にいたくない……どこか遠くへ行きたい(遠い目)」

こんな言葉を毎日言っていれば、さすがの夫も何もせずにいられなかったそうだ。かまってちゃんみたいでごめん。でも本当に声に出さずにはいられなかった。それくらい家と病院と実家の往来が続いて何もかも嫌になっていたのだ。

本当に健康が何よりだと実感する日々でした。
私も持病持ちの個性を持っているけれど、うまく付き合いながら、自立して生きていけるようにしたいと切に願う30前半。ひとりっ子の子どもにまで世話をかけたくない。

話が逸れてしまったので話を戻す。
弾丸旅行は群馬の伊香保に行ってきた。山に囲まれて無風だけれど、この日は千葉よりだいぶ過ごしやすかった。

吊るされる鬼灯はどこまでも続いていた。


立ち並ぶ建物の軒先に下がる鬼灯。
ゆらりひらりと舞う風鈴。
ミンミンと響く蝉の声。

ああ、夏なんだ。
なんだかようやく季節に触れた気がする。

石段街を歩いていて繰り返し見かける鬼灯に送り盆を思い出す。よく提灯を持ってお墓の往来をしたものだ。田舎ならではの風習なのかはわからないが、現在の私の暮らしではもうすっかり無縁。
息子は迎え盆も送り盆もよくわかっていないだろう。

白く塗られた建物の2F。
とある旅館が経営者のお店とのこと。
洒落た店内には、今季企画展示のfuurinが
涼しげな音を鳴らしている。

石段街で出会った『やまのは』さん。
雑貨屋さんに見えるのだが、意外や意外こちら本屋さんだった。

経営元は有名な旅館とのことだが、オーナーが本を扱う仕事もされていることから、このお店では毎回オーナーのセレクトで本が置かれているそうだ。
店員さんも出勤して初めて並ぶ本を知ることもザラだとか。

店員さんがとても気さくな方で、思わずおしゃべりにふけこむ。作家さん手作りのfuurinの話はとても楽しかった。

私は人の手で思いを込めて生み出される物が好き。ちょうど風鈴があればと思っていたので、1つお気に入りに出会えたのでお迎えした。

それから本を3つ。
伊香保オリジナルのブックカバーをかけてもらいわくわくした。

よく行く本屋さんにない本もあったし、よく見かける本もあった。だけど旅先で見る本は格別に見えるのはなぜだろうか。

今回購入した3冊はまた感想と合わせて紹介するとして、ここではひとことで言うと「1つずつ置いてきた小さな頃の私」と再会できた本だった。

夏はどうしたって童心に帰りたくなる。
そう思うのは、私だけじゃなかったのかもしれない。この本をセレクトしたオーナーも、夏だからこそ、この日だったからこそこの本を店頭に並べたのだろうか。

そう思いを馳せるだけでなんだか幸せな気持ちになる。

そう感じたことを、ここに残しておきたかった。


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