iPad Pro 12.9”をプロとして本気で使うことにした
時代はiPad mini(第6世代)全盛。みんなが「小さい!軽い!ちょうどいい!」ともてはやすミニサイズに羨ましさを感じつつも、時代に逆行する選択をしました。
使っていたiPad Pro 11インチを売って、
iPad Pro 12.9インチを購入。
しかも、
(旧)iPad Pro 11”(2020年モデル・256GB)+Magic Keyboard
(新)iPad Pro 12.9“(2018年モデル・256GB)+Smart Keyboard Folio
という、文字通り時代に逆行(古いモデルに逆戻り)しています(注:Magic Keyboardのほうが新しく、機能も多い製品です)。
わかりやすく言えば、クロマニョン人からジャワ原人に戻ったような感じかな。笑
悩みに悩んだ決断というよりは、ある日閃いて「あ、12.9インチだ!」となり、即行動。しかし今は非常に満足していて、むしろ「もう11インチには絶対に戻れない」と確信しています。
自己満ですが、その経緯を長々と書いてみます。iPadのサイズ選びに迷っている方の参考になれば幸いです。
1.そもそもなぜ11インチのProを購入したか?
私がiPad Pro 11”(2020年モデル)を購入したのは約1年半前のこと。
仕事の環境が変わり、家でかつ一人で仕事をすることが増えたのですが、オフィスを失ってみると「iPadがないと仕事できない(泣)」という状態に……。
私の仕事では「受け取ったPDFに手書きしたものをメールで送る」という流れがほぼ毎日発生します。それは、もしiPadがないと
PDFを印刷 →紙に手書き →スキャン →メール添付
となるのですが、そもそも扱うPDFがほぼA3サイズなのに対して家にA3プリンタがない。さらに、所有しているプリンタ&スキャナが家庭用の安いものだったので、恐ろしく性能が低い。例えば解像度もめちゃ低いし、オフィス複合機のような連続スキャンはできない。
以前から「iPadがあればこの流れが全部iPadで完結するよなぁ」と作業性の無駄を感じていたので、iPadの購入を決意しました。
そして、
・(その当時は)Apple Pencilを側面にマグネットでつけられるのがProだけだった(←lightningぶっ差しスタイルが絶対に嫌だった)
・持ち歩きもしたかったし、多用途に使える適正サイズは11インチだと思った(12.9インチは高額すぎたし)
という理由で、自分にとって初めてのiPadとして、iPad Pro 11インチを選びました。新品購入だったのでペンシルと合わせて11万円ほど(高い!)。
さらに、Magic Keyboardを買ったのは、昨年末。それまでキーボードはサードパーティのBluetooth接続のものを使っていたけれど、noteをほぼ毎日書いていたので「膝の上にのせたりベッドでごろごろしながら(場所を選ばず)タイピングしたい」という欲が止まらず、ガッチリとPCライクに使えそうなMagic Keyboardを選びました(メルカリで30000円弱。これもいいお値段……)。
2.11インチが小さいのかもしれない、と気づく
そのようなセットで、1年半。ほとんど不満を感じることなく使っていたのですが、あるとき急に感じました。
「あれ……小さいかもしれない」
と(そのまんま笑)。
というのも、前述のように私はPDFへの書き込みの際にiPadをよく使うのですが、扱うのはA3サイズのデータがほとんどなのです。A4ならまだしも、A3を11インチに表示するとかなり縮小されてしまう。それを部分的に拡大・縮小しながらゴリゴリ書き込んでいくのだけど、やっぱり全体が見づらいのは否定できなかった。
今まではあまり疑問に思わず、真剣に見たい時はオフィスでA3プリントして手書きしていました。「アナログのほうがデジタルより見やすい。そういうもの」と信じていた部分もある。でも、
「なんでだろう……なぜこれがiPadでできないんだろう?なぜiPadでは物足りないんだろう」
と考えたときに、ただただ画面が小さいせいかもしれない、と気づいたのです。
もう一つ。今の話はどちらかといえばインプット(あるいは作業)の話だったけれど、アウトプット(あるいは創作)においても11インチは小さいがゆえにうまく使えていないことに気づいてしまったのです。
私は長らく「ニーモシネ」というビジネスマン向け文具シリーズのA4スケッチブックを愛用していました。デザインがよく、紙質がよく、方眼が薄めで主張せず、ミシン目が破りやすく、厚紙が背面にあってどんな場所でも描きやすい、等々……ちょっと高いけれどかなり優れた文具だと思います。
頭の中を整理したり、ディティールを考えたり、時には議事録をとったり、どんな時にもこれを使っていました。時々iPadのGood Notes 5というアプリを使うこともあったけれど、それは「考える」よりも「整えて人に共有する」時。その前段階の「考える」はまずニーモシネで、という状態でした。
でもこれまた
「なんでこれが、iPadでできないんだろう?」
と、急に疑問を抱きはじめました。このニーモシネ、作りがいいだけに意外と重くて(500gぐらい)。なんで持ち歩いてるんだろう?と……。
この疑問は、言い換えれば
「なんでiPadを使って『思考』ができないんだろう?」
という疑問でした。「やっぱり考えるときは紙に書いちゃうよね」と職場で話したのをきっかけに、「それって本質的なアナログとデジタルの差なのだろうか?」と改めて疑問に感じたのです。
そしてこの結論も
「11インチが小さいからかもしれない」
でした。11インチをなんとなく使ってきたのは、「11インチ=だいたいA4」という印象があったから。でも、よくよく見てみると画面領域のうち「書ける(描ける)」部分って実はA5ノートのような小ささなのです。A4以上の規格に慣れている現代人にとって、頭を整理するには少し小さいサイズだと思います。
3.12.9インチを敬遠していた理由
12.9インチが当初から選択肢に入っていなかった理由はシンプルでした。
「サイズが大きいのは正義だけれど、大きくて重いから、持ち運びには適さない。据え置きで使う覚悟で買ったほうがいい」といろんな人(主にYouTuber)が言っていたから。
だから12.9インチは
・イラストレーター
・音楽をやる人(楽譜を見るのに最適)
・動画編集などがっつり使う人
におすすめ。とよく言われます(普通のビジネスパーソンに対して推奨されることはあまりないです)。私は上記のどれにも該当しないし、持ち運びもしたかったので、違うんだろうなぁ……とずっと思っていました。
4.12.9インチ+軽いキーボードで、Apple Pencilメインの運用を検討
しかし、上述のように11インチに疑問を抱きはじめた私は「とにかく触ってみよう」と思いました。Apple Watch 7をストア受け取りにしたついでに、「ちょっとiPadの12.9インチも見たいんですけど……」とお願いして見せてもらいました。
さて、持ってみると
「別に重くないじゃん……?」
という感じ。アップルストアのお姉さんも「あんまり重さは変わらないですよねー」と。実際に、重さは(モデルによって若干違いますが)Proの11インチが470g、12.9インチが640g程度。違うといえば違うのだけど、「大きくなったわりには逆に軽い」と感じるほどでした。
とはいえ、重さに関しては悪名高いMagic Keyboardと合わせてしまうと、12.9インチは合計1.3キロとかなり重くなってしまう。
ここであらためて自分の用途を見直したときに、気づきました。
Apple Pencil >>> タイピング
だと。
文筆業もたまにやる私にとって、タイピングも重要だとずっと思っていた……けれど、実際は、仕事でガチで文章を書くときには、絶対にiMacだった。仕事で文章を書くって基本的に「資料を見ながら」「録音を聴きながら」なので、iPadオンリーでカフェで文章を打つという優雅なイメージは幻想だったのです。笑
(これは私が自宅にiMacというメインマシンを所有しているからでもありますが。)
一方、noteのようなライトなタイピングを膝の上でやるときには、Smart Keyboard Folioで事足ります。膝の上に置いても、底面はしっかりしていてちゃんと打てる(この用途が捨てきれないのでBluetoothキーボードは個人的にナシ)。
結果として、
(旧)iPad Pro 11”+Magic Keyboard :約1070g
(新)iPad Pro 12.9“+Smart Keyboard Folio :約1100g
と、ほぼ変わらない重量の組み合わせにすることができました。
しかも、12.9インチを型遅れの2018インチにしたことと、Smart Keyboardを選んだことにより、売却価格=購入価格という完全トレードが実現!
Magic Keyboardのトラックパッドは何かと便利だし、タイピングの打ち心地も良いのだけど、それ以上に「ペンシルでがっつり描く/書く」と「持ち歩く」の両立のほうが、私がiPadに求めるものとしては強かったです(よく言われるように、ペンシルとの相性は確実にSmart Keyboardのほうが上)。
5.ニーモシネとの比較
後述するアプリを使用することによって、今は完全に「脱・ニーモシネ」できています。
本体サイズはこんな感じ。12.9インチのほうがひと回り小さい。
書ける部分のサイズはこんな感じ。これまたひと回り小さい。けれど、iPadは拡大縮小や画面の移動ができるので、体感的に「思考領域としての広さ」はあまり変わりません。
重ねるとこんな感じです。
つまり、持ち運ぶにあたっても、(もともとニーモシネを持ち歩いていた私にとっては)「大きくて持ち運べない」という感覚は皆無です。全然持ち運べる。そして別に重くもない。
6.愛しいアプリ「Concepts」
ここまではハードの話ばかりでしたが、iPadを「作業」も「思考」もするツールに変えてくれた神アプリとの出会いがありました。「Concepts(コンセプト)」というアプリです。
その特徴は、
・無限キャンバス
・デザイナー向けのツールや機能が豊富
・スケールが測れる
というところで、いわゆる描画・お絵描き系のアプリ(Procreate、Frescoなど)とは一線を画しています。アドビイラストレーターをもっともっと感覚的にしてApple Pencilに最適化した、という感じ。
このアプリの良さを文章で伝えるのはものすごく大変です。というのも、私自身しばらくYouTubeなどで勉強しながら使い続けてやっと使い方が身についてきたところ。「ちょっと触って良さがわかる」という類いではなく、どちらかといえば「本気で使うと良さがわかる」アプリだと思います。
でも、これを導入したからこそ今まで書いたような12.9インチの運用が可能になったし……ていうか「デザイン系なら絶対使え!」と豪語したいアプリです。笑
デザイナーに限らず、何かを生み出したい人。例えば広告関連の仕事でアイデアを考えるとか、そういう用途にもピッタリです。漫画家さんならネームを描いたり、謎解きクリエイターなら構成を考えたり、そういう方にもピッタリです。
無限キャンバス、本当に本当に最高です。思考が紙という枠に縛られないという体験は、自分の能力を広げてくれます。我ながら大胆に推していると思うけれど、心の底からそう思う。
このアプリを使ってからやっと「紙ではなくiPad(デジタル)を使う理由」が心の底からわかりました。
iPadは、既存の用途を置き換えるだけの便利ツールではない。例えば「プリントして書き込んでスキャンは面倒だからiPadにしよう」は、アナログをデジタルに置き換えているだけですが、無限キャンバスを使った思考は完全に初体験です。
しかもそこに、参考資料の写真をペタッと貼り付けたり、動かしたり、消したり、レイヤーで重ねたり、自由自在なのです。
「うわー!私は新人類になったかもしれない!!!」
と、毎日が楽しくてたまりません。笑
仕事の思考が楽しくて、かつ幅が広がって、嬉しいことこの上ない!(仕事以外でも使います)
本当は実際の画面をお見せしたいけど、恥ずかしい&仕事のスケッチがほとんどなので、動画などを参考にしてください。
レビュー動画は色々ありますが、公式チャンネルのチュートリアル(↓)もおすすめ。私はこれを見ながら絵の練習もしています。こんなの無料で教えてくれるなんて最高すぎる(しかも日本語!)。
もともと絵が上手く描けないことがコンプレックスだったけれど、アナログで絵を練習するには道具を揃えるところから始めないといけなくて、日々の生活に馴染まないから腰が重くなるんですよね。でもiPadなら……いろんな鉛筆も、ペンも、コピックの色も、ハッチングも……無限です。有料だけど全然安いと思う(一部の機能に制限がありますが無料でも使えます!)。
これまで「なんとなく人気だから」いう理由でGood Notesを使っていただけでしたが、今後は「他のアプリも試して、プロとして自分の可能性や能力を広げたい」とワクワクしています。
それからApple Pencilを使うときは、Moftというツールを使って、このような角度で描いています。Smart Keyboard Folioと組み合わせて使えるので、これもかなりおすすめ!
7.iPad miniも欲しい……
最後のオチですが(笑)、12.9インチを使い始めるとiPad miniが欲しくてたまらなくなります。サッと取り出せてササっと持ち運べるiPad miniの魅力が以前より身に染みてわかるようになりました。
11インチは汎用性が高いとよく言いますが、11インチを持っていればminiを持たなくてもわりとなんとかなります。リラックスタイムの閲覧も、電車の中で開くのも、11インチならそこそこ対応できます。一方で12.9インチはクリエイティブな用途で超使いやすいんだけれどサブとしてminiが欲しくなるサイズ、です。
でも私はこの感覚、良いことだなぁと前向きに捉えています。適材適所というか、自分が「何にどのサイズを使いたいか」が以前よりハッキリわかるようになった。なんとなくで選んだ11インチを卒業して、明確な目的意識を持って12.9インチを選べたことに、心から満足しています。
そしてminiもいずれ買いたいです。笑
……またAppleの沼に着実に沈みました、というお話でした。もう私の身体はAppleなしでは生きていけません。クパチーノに足を向けて寝れません。これからもAppleを使って自分を高めていきたいです。
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