エラリーの孤独

■エラリー・クイーン『オランダ靴の秘密』


時間がなさすぎて読むのにいったい何日かかったことやら。笑

地味ではあるけれど、いつも通りの整然とした推理でした。クイーンの小説は(私が推理ができないだけかもしれませんが)、読むと「なんだか単純だなぁ」という推理が多くて。ババーン!まさか!みたいな感じが少ないから、アガサ・クリスティなどに比べてしまうとエンターテインメント性がやはり低い。でも、ズレのなさ、強引さのなさが魅力。地味ですけどねぇ。


クナイゼルという研究者とエラリーが出会い、一瞬で互いを認め合い心を通わせた(?)シーンがとても印象的だった。自分と同じ思考回路、知性、匂いを持つ人物。年齢も境遇も違うから友人という感じではないし、恋に落ちるわけでもない。けれどその感情……シンパシー、とでもいうか。が私にはよくわかって、エラリーに「よかったね」って思いました。笑

「科学的思考の修練から、わたしは物事の分析に携わる者が問題を解決するにあたって何が必要かを学んだ。第一に、労を惜しまずすべての事象を集めること。第二に、徹底した粘り強さ。第三に、偏りのない斬新な想像力をもって問題の全容をつかむ能力……。」(クナイゼル)


ミステリーの感想とは離れてしまいますが。エラリーはきっと孤独な人だと、読んでいて思う。それはダネイかリーが自分を重ねているのかもしれないけど(レーンも孤独だし)、高い知能と深い好奇心を自分の中でしか処理できない、理想が高すぎて他人と共有できない(むしろしたくもない)、という孤独さを根底に抱えて生きている感じがする。

こういう孤独は誰しもが大人になると抱くものなんだろうか。

私はまったくもってそんな立派な人間ではないけれど、なんとなくその孤独が理解できる。

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