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【読書】のマガジン

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#小説

読書感想文一覧【随時更新】

noteに投稿した読書感想文が増えてきたので、自分の整理も兼ねて一覧にしてみました。随時更新します。脱線している場合も多いですが、気になる本があればぜひ読んでみてください。 2022年■アミール・D・アクゼル『「無限」に魅入られた天才数学者たち』 ■有元葉子『レシピを見ないで作れるようになりましょう』 ■ジョージ・オーウェル『一九八四年』 ■ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』 ■日高敏隆『ネコの時間』 ■加藤文元『人と数学のあいだ』 2021年■志賀直哉『暗夜行路』

「その不気味さが、言いしれぬ魅力となって、私をそそのかすのでございます」

■江戸川乱歩『江戸川乱歩傑作選』 でも、その不気味さが、言いしれぬ魅力となって、私をそそのかすのでございます。(「人間椅子」) 数年ぶりの再読。江戸川乱歩に関してはこの『江戸川乱歩傑作選』と『江戸川乱歩名作選』の二冊しか読んだことがないが、やはり、魅力的な作家である。 ぱっと見はその、(言ってしまえば)趣味の悪い奇怪な世界観に一歩ひいてしまうのだけれど、グロテスクというベールに隠された文章力に気づくとき、ハッと驚かされる。 江戸川乱歩とエドガー・アラン・ポー江戸川乱歩

「愛する相手の瞳に自分の姿が映らない女の気持ちって、いったいどんなものだろう」

■レイモンド・カーヴァー『大聖堂』 愛する相手の瞳に自分の姿が映らない女の気持ちって、いったいどんなものだろう。愛する人から、かわいいねとか、そういう賞賛の言葉ひとつかけられることもなく、ただ延々と日々を送りつづけることのできる女。(「大聖堂」) この短編集は、すごくよかった。特に表題作の「大聖堂」が、本当に素晴らしかった。 短編集というスタイルを長編に劣らず好んで読んでいるけれど、ここまで出来の良い短編はちょっと思い出せない。それくらい良かった。 でも、あんまりベタ

文学の圧倒的な力|ユーモアによって中和される悲劇

■太宰治『人間失格』(ややネタバレあり) 恥の多い生涯を送って来ました。 から始まる、言わずと知れた名作。太宰治の自叙伝的作品であり、集大成でもある。その「人間」に対する悲観的な捉え方は読む人に刺激を与えたり、深い共感を呼び起こすこともあるだろう。 しかし、あえて言い切ってしまうと、今回私が感動したのはその内容ではない。太宰治の「文章の上手さ」である。 自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食いちがっているような不安、自分はその不安のために夜々

主題も感情もない物語

■フランツ・カフカ『変身』 読んだ後に、 「うーん。感想がない。」 と悩んでしまった。感想が浮かばないから書くのをやめようかと思ったけれど、この「感想の書けなさ」をもう少し掘り下げてみよう。 ◎ ストーリーは非常に有名で、一言でいえば「人間がある日突然虫になってしまう」という話である。起承転結がわかりやすい物語だけれど、おそらく多くの人が私と同じように、「はて……これはどう語ればよいのだろう」と悩むのではないだろうか。 その理由は主に二つあって、 1・主題がわか