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タイトル未設定。

「会社、辞めちゃおうかな」なんて私が呟くと
「ええな、それ」と返す。
君の話す関西弁は柔らかい。
そんなとこが気に入っていた。

マスクをしなければいけない蒸し暑い夏。
私たちは出会った。お互い恋人がいるのに、ティンダーをやっていた。シンプルに最低な人種。
君のメッセージの最初の文は「やりませんか?」だった。あからさまなヤリモクにふざけ半分で返信した、それが出会い。

私たちはセックスがしたくて出会ったはずなのに、
いつの間にか「お友達」に成り下がった。

酔い潰れるまで飲んで、嫌なことも忘れられた。
愛のないセックスは酔ってないと出来ないのだけど、それはそれで楽しかった。

君といると心地よくて、
君といると最低な自分でいられた。

「あぁ、セフレ好きになっちゃったパターンね」
いやそういうかんじでもない。

どこにでもある、だけど誰かに話すことはない、この関係が居心地が良かった。
私たちは共犯者で、なのに赤の他人で仮に死んでも誰も知らせてくれない。だと言うのに私は彼の言葉を拠り所にすることもあった。

「別に無理せんでもええんちゃう」
君のその無責任な言葉に心が軽くなった。

大切にしなくていいし、されなくていいから、楽だった。

結婚、出産、仕事、家族
考えなければいけないことがたくさんある人生の曲がり角。いつの間にかパートナーにプレッシャーを与え与えられる日々だった。

君といる時間はなんでもいいと思えた。
だって私たち、今だけ。

その場凌ぎの最高の快楽。
私たちの過ごした時間はタイトル未設定で上書き保存され書き足され、消えていった。

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