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ちんちんだが『眠り展』に行きました。

 さてわたしはちんちんなんだが、今日は美術館にいけて楽しかった。美術館、ほんとうにいい。頭がおかしくなる。本当にいい。今日は近代美術館に行ってきた。『眠り展』。

 美術って、迫ってこないのがいいなと思った。美術品は止まっている。こちらから行かなければ襲い掛かってこない。その距離感がいいと思った。

 美術を愛するって、こちらから見ようとしないと見えないものなのか。それはあらゆる芸術でもそうなのか。そう考えると、コマーシャル、広告と紐づいたもの、芸能と一線画すところって、「静的」か「動的」かという違いなのかな。
 襲い掛かる美術……目に入って着ざるを得ない美術とかかなあ。駅ナカにあるものとか、建築、広場に建てられた公共美術とか。あるいは教科書で学ばされる美術とかかなあ。
 動的と静的とは、作品の用いられ方なのかどうか。

 近代美術館は、我々を待ち構えていた感じだった。ほいほいとやってきた人間たちを、美術は待ち構えていて、取って食うみたい。落とし穴に落ちたみたいに美術品を見た。
 面白かったなあ。
 特に面白かったのは「種子を壁に塗り込んで、土を鉛管に保管してあるやつ」が面白かった。
 河口龍夫のインスタレーション《関係ー種子、土、水、空気》

 これ、いろんな種が壁に塗り込まれて、発芽に必要な土が床にごろんと、何本も厳重に保管されているというもの。なんかこれが面白かった。眠っている。今はまるで動かないし、時にカビているものもあれば、経年でくすんでいるものもある。でもいる。寝ている。そこにある。
 これ、こっちから行かないと襲い掛かってこないというか。こちらが見ないと見ることができない。し、種の方では決してこっちを見ることはない。瞳を閉じている。土も種も、こっちを見ていない。見ているのは未来だ。俺を誰も見ていない。
 それがなんか……考えてしまったなあ。眠りってそういう事なのかもしれない。目を覚ます未来のためにあって、そこにいるのに、同じ時間にない。種子たちは、人類が絶滅し、これが美術品という認識すらされなくなったあるとき、何かの間違いで発芽するんだろうなあ。その時間をこっちが勝手に想う。

 昨日見た、すごくつまらない演劇の事を思いだしていた。
 その劇はひたすら説明し、わかってもらおうと声がずっと途切れなかった。それが、二時間。
 あれに比べると、果てしない未来の長い時間を感じるこの美術作品の方がすごいなあと思ってしまったよ。比較するもんじゃないよなあとは思うものの。

 つまらないものって、本当につまらないものだなと思った。いや、世の中にはつまらないものもあってもいいんだよ、という寛容さ、自分のセンスへの疑い、謙虚さは持ち合わせていないといけないけれど、でもいい美術作品を見て、今、残酷で極端な気持ちになっている。つまらないものがあり、それは明確につまらない。

 よくないことなのかなあ。
 これは排除とか、否定とかにつながる感覚なのか。豊かではないのかなあ。美術館を出た後街を歩いて、本当におもしろいものも街にあり、つまらないものもたくさんあると気づく。残酷なくらい、つまらないものがつまらなく見える。
 うーん。どうやろうか。豊かではないのかなあ。はっきりと、いい、と思えるものを見てしまって、何だろうなあ……戦いを一個終えたとき、「強い人と弱い人がはっきりと感じてしまう」みたいな感じなんだろうか。錯覚なんだろうけども。
 すべてが面白いものなんてないが、つまらない物はある。

 ただ、つまらないものを、つまらないと言って、軽んじるとか、排除するというのは違う。違うけど、でも態度に出るよなあ。つまらないものに対して、つまらないと思ってしまう目。面白いものに対して、これは面白い、と興奮すればするほど。
 けっして「理解できないものがつまらない」ではないんだけれど。

 美術館には、セックスをしたことはあるけどちんちんを入れたことのない女性と一緒にいったんだけど、その人は僕がそれほど注目してなかった作品をみて「面白い」と言っていた。
 僕はよくわからなかったが、でもつまらないとは思わなかった。
 ……なんなんだろうな。その人との、面白がりの違いは楽しめるというか。楽しめる……? うーん、なんだろう。好みの問題? いやそんな小さな話ではないなあ。なんだろうな。明らかに「つまらない」ではないのだった。
 つまらない、は上下の線ではない気がする。つまらないの反対は面白い、でもない気が……。うーんまとまらない。なんだろうなあ。

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 美術館を他人と行くのは本当に面白い。二人が同じ作品を見る。あるいは、フロアで興味のまま、ばらばらに見て、また合流し、同じ時間を移動し、またバラバラになる。ほいで、また合流する。その気の散り方、好みの違い、見る物への熱の違い。すごくよい。楽しい。すごく楽しい。
 だからある意味、恋愛や親密さを至上とするような関係のデートには向かないんだろうなあ。美術品を見ている間、同行者のことは一瞬どうでもいいというか、思考に入れない瞬間がある。おれ、それすごく重要な瞬間だと思うんだよなあ。
 この感覚をわかってくれる人と行く美術展はすごくいいなと思います。なんてったって安い。1200円で無限時間を感じられるよさみ。……あと面白的にも同時開催していた『男性彫刻』という企画もすごくよかったです。
 ちんちん。彫刻のちんちんはいいなあ。等身大の彫刻のちんちんもいい。人の姿をかたどるっていいよなあ。

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