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小林朝夫『子供の「頭のよさ」を引き出すフィンランド式教育法』

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要点整理

子供の頭の良さは、育った環境と親の接し方で決まる。
・フィンランド人は自然と共に生きる意識がある
・手抜き教育とテスト勉強が、子供を知識バカにする
・感情も論理も絵で表現することで、発想力が伸びる
・濃密な会話を通じ、感情・論理のバランスを身につける
・すべての学力の基礎は国語力にある
・親にできないことを子供にさせない

感想

今の日本に足りないのは、教える側への教育、『教育教育』ではないか。

フィンランドの子供、日本の子供

フィンランドの子供と日本の子供は、それぞれどんな生活を送っているのだろうか。この本と、自身の体験、塾でのアルバイトの経験から、勝手に1日を想像してみた。
どちらも地元の小学校に通う、12歳くらいの男の子である。

<フィンランド>
朝起きてお母さんと一緒に朝ご飯の準備をする。地元の食材を使った手作りの料理だ。家族揃って食卓に着き、一言も喋らずきれいに平らげる。
学校に着くと授業が始まる、今日は自分の好きなものを絵に書いて表現するそうだ。困ったな、書きたいことがいっぱいでまとまらない。迷ったあげく、今朝のリビングの様子を描くことにした、ついでにテーブルの上に本とか植物とか虫とかたくさん描き加えて…と。
学校が終わるとすぐに、友達と近くの公園に行って遊ぶ。何をして遊ぶかって? そんなの行ってから考えればいい! 近所のおばさんからお菓子をもらう。おいしいけど、食べ過ぎには注意しないと。
家に帰ると、ちょうどご飯ができていた。今日は珍しく仕事が早く終わったお父さんが作ったらしい。お母さんには内緒だけど、正直お父さん方が料理がうまい。
食べ終わると、いつものおしゃべりの時間だ。今度の週末どうするかって話。僕はいつも通り別荘でのんびりでも良かったけど、お母さんの希望でちょっと遠くに旅行に行くことになった。
そうだ、今日の授業で分からないところがあったんだ、教えてもらおう。二人にプリントを見せる。初めは笑っていた二人の表情がだんだん曇り、真剣になり、激しい議論を始めた。…これは長くなりそうだ、先にお風呂に入っちゃおう。
リビングに戻ると二人は満面の笑みで立っていた。早く教えたくてたまらないと言った表情だ。
「ごめん、お風呂の中で考えてたらできちゃった」
その日はみんなぐっすり眠れた。

<日本>
朝起きると僕だけだった。机の上にメモが載っている。
『仕事に行ってきます。帰りは遅くなるから、冷蔵庫の物をチンして食べてね』
昨日からお父さんは出張でいない、確か今日の夜には帰ってくるはず。お母さんはいつも通り忙しそうだ。食卓の上のパンにバターを塗って食べる。
行ってきます。戸締りもしっかりと。
学校に着くと教室は真っ二つに分かれていた。受験組とそうでない組だ。僕は受験組として席につく。もちろん、特別な席が用意されている訳ではなくて、ただ机に向かって勉強するだけだ。ちょっと前までは、周りがうるさいせいで集中できなかったけど、もう慣れた。
授業中は勉強に集中する。もちろん受験のね。他の人は…なんか絵を描いてる、なんか意味あるの? それ。
学校が終わるとすぐに塾に向かう。今までは近くの塾に行ってたけど、最近別の塾に通うようになった。なんでも、中学受験に精通した先生が多いとネットで評判のところらしい。確かに今までの塾はいい先生だったけど、雑談と雑学ばっかだったからなぁ…っと、急がなくちゃ、バスに乗り遅れちゃう!
家に帰るとすっかり遅くなっていた。鍵が空いてる、お父さんかな? 
最後にした質問のせいで先生の話が止まらなくなっちゃった。熱心に教えてくれて、宿題も多めに出してもらったけど、正直あんまり理解できてない。誰かに聞こうにも…お父さんは疲れて寝ちゃってるし…お母さんはまだ仕事中かな? 疲れているところ聞くのは申し訳ないな。次の塾の時、もう一回教えてもらおう。
とりあえずもらった宿題の回答を書き写し。寝た。あ、歯磨き忘れてたけど…まあいっか。もう寝よう、明日も早いし。

上記のストーリーにおける問題点はざっと以下のようになる。
・家庭での会話がない
・教育、学校教育、受験教育に乖離がある
・子供に自由な時間がない
さて、このようなことが起こりうる根本的な原因はなんだろうか?

足りないのは『教育教育』?


子供は教育によって成長する。このことに異論はないと思う。しかし、今の日本において、と言うよりも多くの日本人にとって、「教育」と言う言葉が、ひどく狭い意味で使われているのではないかと思う。

教え育てること。知識,技術などを教え授けること。人を導いて善良な人間とすること。人間に内在する素質,能力を発展させ,これを助長する作用。人間を望ましい姿に変化させ,価値を実現させる活動。以上のように教育という語は多義に使用されるが,陶冶,教化,育成,形成などと同義にも用いられ,またそれらを総括する語として広義にも用いられる。出典としては,『孟子』に「得天下英才,而教育之」とあるのが初めであるとされ,また英語,ドイツ語,フランス語などの語源は,「引出す」あるいは「引上げる」の意味であるとされている。教育は無意図的教育と意図的教育に大別され,方法上から養護,教授,訓練 (訓育) に区分され,内容上から知育,徳育,体育などに区分されることもこれまでしばしば行われてきた。また教育が行われる場によって,家庭教育,学校教育,社会教育に大別することもできる。教育の考え方としては,個人的観点を主とするものと社会的観点を主とするものとがあり,また社会的観点にも,社会のもつ本質的機能としてみる立場,社会を改造する機能を重視する立場など種々のものがある。
                出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

上記が辞書における「教育」の意味である。さて、一体どれほどの人が、これほどの意味を意識しているのだろうか。

『人を導いて善良な人間とすること』
『人間に内在する素質,能力を発展させ,これを助長する作用』
『人間を望ましい姿に変化させ,価値を実現させる活動」

これらのうちの一つでも意識している教育者に出会ったならば、その子供は幸せに違いない。何せ、大体の親や教師が口に出す「キョウイク」は、大抵、受験勉強や進学・進級、テストを意味するからだ。どれも子供の嫌がる言葉だ。

学校を含めた教育機関は、教育をする場の一つに過ぎない。病院じゃないと風邪が治せない訳ではないし、公園じゃないと遊べない訳ではない。
にもかかわらず、多くの親は、勉強は学校で、足りなければ塾で、というように、教育を専門的なものだと捉え、専門家に頼り切っている。

ここに大きな問題がある。

まず親の問題。親は自分が今まで教育を受け、少なからず勉強してきたにもかかわらず、子供の教育に関わろうとしない。熱心な親もいるだろう。しかし、その「教育熱心」とは、良い学校、そのための良い塾、または良い教材探しと、他力本願がすぎるのではないだろうか。自分で、自力で、教育をしているか。

次に学校の問題。中学受験に反対という先生がいる。受験の考え方は人それぞれだろうから、ここでは論じない。最大の問題点は、先生は楽をしているのではないか? ということだ。1クラス30~40人、生徒全員に気を配ることは物理的に不可能だろう。多岐にわたる科目、部活、行事、トラブル対応。仕事が多いのはよくわかる。
だから、プリントを事前に作って配り、解かせ、宿題を出し、生徒同士で丸つけをさせ、小テストを出し、その点数で管理するのだろう。
これも立派な授業である。授業であるが…これが本当に教育になるのだろうか。 

最後に塾の問題。本当に塾が多い。個別に、集団に、web授業。大手予備校に個人経営まで、その数と種類はコンビニに勝るとも劣らない。ここで注目して欲しいのは、特に大手に多いのだが、何かしらに「特化」していることだ。
予備校ならば大学ごとに分け、現役と浪人に分け、その他の塾であれば、科目や、受験や、学校補習対応といったように。
勉強はできる、問題も解ける、点も取れる。さて、教育をしてるのはどこだろうか。

ここで、日本に足りないのは、教育者への教育。『教育教育』ではないかという結論に至る。

『教育教育』の意義

子供たちの善良な人格の形成、並びに才能の開花を支援するような教育者の育成。

『教育教育』の目的

教育者が、本当の教育をできるようにすること。

『教育教育』の実践

①教育哲学を持つ
「なぜ」「何のために」教育を行うのかを考える。それをやって初めて、「何を使って」「どのように」教えるのかに進む。

②教える相手と事前に徹底的に話す
教育の理由・目的を、相手にもわかるように話す。そして、受け入れられるか聞く。
教育の手段・方法を、相手にもわかるように話す。そして、受け入れられるか聞く。
どれか一つでも受け入れられないものがあるのならば、その理由を明らかにする。

③教育の場に必要なものを用意する
・落ち着いた環境、ゆったり流れる時間。
教育者の余裕と、すぐに答えを言わない我慢強さもあると良い。
・教える相手が自己表現できるもの。(白い紙など)
大抵のワークは丁寧な穴埋め形式になているが、それをさせるのは手抜きの表れである。ほとんどの子供は空欄の前後しか見ないし、空欄以外に書き込むことを嫌う。
・辞書
本書にもあるが、すべての学力の基礎は国語力にあると思う。言葉を増やすこと、正しく使うことは、思考力・発想力にも大きく影響するはずだ。

④想像力を最大限引き出す
子供の想像力を侮ってはいけない。真っ向から否定するのはもってのほか。授業は、手を動かすことよりも、頭と心を動かせるものにする。

長々書いてしまったものの、教育についてはまだ考察が足りない。
今度、もっと具体的かつ体系的にまとめる。




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