アメンホテップの侍女メアシムの物語

アメンホテップの侍女メアシムの物語

私はアメンホテップ四世に
お仕えした侍女でメアシム
と言います。

侍女とは申しましても私は
王のお手付きでしたので待遇
はとてもよくおいしいもの
もたくさん食べ何不自由なく
暮らしていました。

御存じのようにアメンホテップ様
は宗教改革を行い古い神々を
封印なさったのでそれはそれは
憎まれいつも暗殺者に狙われて
いました

私は女だてらに武術のこころえ
があったのでいつしかアメン
ホテップさまをお守りする係り
になりました。

ある時敵方がふくろうを使って
攻撃してきました。私はふくろう
を一撃で追い払いほうびに
太陽神ラーの美しい彫像

をいただきました。

これは貴族
しか持てないもので私には
身分不相応なものでした

私はその彫像をいつも持ち歩き
いつも加護をいただきました。
私はいつもラーラーと唱えて
いました

ある時私がハトホルの寺院で
お参りをしていると子供連れの
女乞食が食をねだりにきました
私はパンをあげました。

私は良い行いをして嬉しかった
のですが実は乞食は敵方のわなで
私は油断したすきに女乞食に
うしろから縄で首をしめられ
ました

さいわいその時はハトホル神官
の助けでことなきを得ましたが
アメンホテプ様はハトホル神殿
をも破壊しようとしているとの
うわさもあり私はもうここには
来るでないと言われました。

私は古い神々も大好きでしたので
アメンホテップ様の改革がうらめ
しくある時王が私を呼ばれた
さいに

(古い神々様も私は好き
でございます))
と言ってしまいました。
アメンホテップ様は黙って
聞いておられました。


それからまもなくして
私は宮廷を追われ特別待遇を失い
乞食になり
その日の食事にもことかく
ありさまになりました。

ある日いよいよ食に飢えた私は
とうとうラーの彫像を市場で
売りに出しました。やはり命
が惜しかったのです。

ところが買い手がつくやいなや
雷が鳴ったり犬が吠えたりして
どうしても交渉はまとまらない
のでした。

私はやせ衰え衰弱
して死の家に運ばれました。

死期が近づくと死骸を狙って
カラスたちが近寄ってきて私
の体に止まりました。

いよいよ絶命かというその時
ひかりが射して古い神の
ハトホル様と新しい神のアトン
様が揃ってお出ましになり
お前に新しい命をさずけよう
と言いました。

私はびっくりして(どうして
古い神さまと新しい神様が
いっしょに現れたのだろう)
と思いました。

おふたがたは
笑って(私たちは仲良しなの
だよ)っておっしゃいました。
それから私はすっかり元気
になりました。

やがてアメンホテップ様
は死去なされ私は往時を
しのび
墓の建設の手伝いにゆき
ました。

王といっしょに葬られる
奴隷たちが泣いていて私は
気の毒に思いました。

私は泣いている若い女奴隷
に近づいて肩を抱きパンを
与えました。

女奴隷は私の
名はラダ私のことをを忘れ
ないでと言いました。

けっして忘れないと私は
言いました。

み世が変わり再び古い神さま
が復権なされてまた昔のように
なりました。

私は古いき世も新しき世も
いつの世もみないっしょだ
人は生きれるあいだは
懸命に生きるのだと思い
ました。

私はなんとなくですが
アメンホテップ様は
私を愛しておられたのだと
思いました。

私を守るために
宮廷から追放したのだと思い
御恩に涙しました。

それから長い時を生き
私は白髪の年よりのばば
になりました。

私がいつどのようにして
この世を去ったのか私には
覚えがありません。

太陽暦
673982
月歴
9430746
日瀝
7195329

これがメアシムと呼ばれた
アメンホテップ様に
お仕えした侍女の物語です。

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