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視点提供録 vol.824:クイックレスポンスを求める人が持っておきたい視点とは

ここ5年ぐらいでしょうか、SNSが一般的に使われるようになってきたと思います。最初はプライベートで使われている程度でしたが、次第にビジネスでも使われるようになってきたと思います。人によっては、メールよりもSNSで連絡する頻度の方が多い方もいらっしゃるのではないでしょうか。


連絡手段として、手紙が電話になり、電話がメールになり、メールがSNSになり、伝達速度が格段に速くなりました。これに伴い、「クイックレスポンス」という概念が生まれてきたように思います。そして、連絡速度が飛躍的に速くなった結果、「クイックレスポンスが当然」という人も少なくないように感じています。「速いことは良いこと、遅いことは悪いこと」 - この風潮が出来上がっているように感じています。実際、待つことが苦手で1時間ぐらいで遅いと感じる方もいらっしゃるようです。私も30分ぐらいで返信があったにもかかわらず、遅くなって申し訳ないとお詫びの一言があったときもありますが、なかなか驚いたものです。


ただ、この「クイックレスポンス」ですが、必ずしも全員ができるわけではないと思います。そして、「クイックレスポンスの要求」により、人間関係に亀裂が生じたり、心が苦しくなる人もいるように思います。真偽は定かではありませんが、個人的にはクイックレスポンスは人を疲弊させる一因になり得ると思っています。では、クイックレスポンスを求める人は、どのような視点を持つと望ましいのか。個人的には3つあるように思います。


1. 「クイック」は感覚的なものであるため個人差がある

「クイック」は具体的に数値化できるものではないと思います。よしんば、同じメンバー内では「1時間以内をクイックとする」と決められることでしょう。しかしながら、不特定多数の方に「自分自身のクイック」を求めることは難しいのではないでしょうか。だとするならば、必ずしも自分自身が思う「クイックレスポンス」は返ってこないこともあるのではないでしょうか。


2. 相手の事情を考慮する

単純に考えて、いつでもクイックレスポンスできる状況にいるとは限りません。たとえば、映画館で映画を観ていたのかもしれません。冠婚葬祭に参加していたのかもしれません。海に潜っていたのかもしれません。インターネットトラブルがあったのかもしれません。緊急入院になったのかもしれません。結局のところ、クイックレスポンスを要求する方は、「自分自身へのレスポンスはすぐに行うことが当然」と考えており、相手の事情を考慮していないのではないでしょうか。


3. 相手は自分の支配下にいるのではない

残念ながら、相手は自分のことを24時間365日氣にしているわけではないことがほとんどではないでしょうか。たとえば、「1時間以内に返信がないと怒る人」は「相手は自分のことを1時間に1回は氣にしている」と無意識に思っているところがあると思います。そうでなければ、1時間以内と辻褄が合いません。仮に、そのような約束があるとするならば、氣にしない方が問題ではあるでしょう。しかしながら、執事やメイドではない限り、このようなことはなかなかないでしょう。

ここで、考えてみたいことが2つあります。1つは

「あなたは従業員1万人の大企業の新入社員です。諸事情により代表取締役に直接メールを送ることになりました。1時間待ちましたが返信がありません。さて、あなたは代表取締役に怒りを覚えるでしょうか」

ということ。もう1つは

「あなたは今30歳で、90歳になる祖父がSNSを始めました。祖父の家に行く予定を調整するためにSNSで連絡を取りました。でも、1時間経っても返信がありません。さて、あなたは祖父に怒りを感じるでしょうか」

ということ。おそらく、どちらも怒りは感じない方がほとんどではないでしょうか。「この人は自分のために時間を使うはずだからすぐに返信があるはず」と勝手に期待している人と、「この人は遅くても問題ない」と期待値が低い人がいるわけです。「自分の思い通りに進まないと嫌な人」がいるわけです。果たして、この姿勢がいいかどうかは考えるところではないでしょうか。


もちろん、すぐに進めたいことがあるとするならば、返信は速い方が嬉しいことでしょう。しかしながら、相手には相手の事情があります。「クイックレスポンスはあったら嬉しい」ぐらいの心の余裕も持ち合わせておきたいですね。