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奈良時代、鑑真の弟子がサウナーの心得を日本に伝えていた件

「この坊主さては、サウナでととのってないか?」

そう思ったあなた、
あながち間違っていないかもしれませんよ。



先週の日曜日、豊島園の庭の湯にサウナに行ってきました!
そこで本棚にあった「サ道」の漫画を読んでいたら、

「サウナのお経があるらしい」

という情報にたどり着きます。


ネットで検索すると、
「仏説温室洗浴衆僧経」というお経がそれらしいのですが、
肝心の元ネタが見つかりません。

さてはみんな、
二次情報だけで適当なこといってるな〜!



仏教オタクの私は知っています。

ありとあらゆるお経をまとめた仏典の最高峰、
「大正新脩大蔵経(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう)」
ここにいけばすべて見つかる。

ただね、Wikipediaによれば、

17字詰29行3段組、各巻平均1,000ページになっている。正蔵(中国所伝)55巻、続蔵(日本撰述)30巻、別巻15巻(図像部12巻、昭和法宝総目録3巻)の全100巻から成り、漢訳の仏典の最高峰と呼ばれている。

らしいから、
17字詰 x 29行 x 3段組 x 1000ページ x 100巻 =


1億4700万文字。
ここから探すのは途方もない。


そういうあなたに、
SAT大蔵経DB 2018」があるんですなあ。


ネットから全文検索できちゃうぜ★

DBで温室について検索すると


温室、めちゃくちゃヒットする

291件もヒット!さすが1.5億字あるだけある。

「仏説温室洗浴衆僧経」もあるなあ。

よし、手当たり次第にChatGPTに入れてよんでみるぞ。

緊急の要件があるときは先に剃るべきだ

ある白衣の人々が嘲笑して言います。「私たち白衣は髪を伸ばしています。沙門釈子も同様です。何が違うのでしょうか。ただ服の色が悪いだけですよ。」諸比丘たちはこれを仏に報告します。仏は言いました。「髪を伸ばすべきではありません。違反者は突吉羅です。諸比丘は食事場や講堂の温室で髪を剃るべきです。」仏は言いました。「そうすべきではありません。年老いて寒さに耐えられない場合、温室で剃ることができます。」その時、諸比丘は順番に髪を剃りました。仏は言いました。「順番にする必要はありません。緊急の用件がある場合は、先に剃るべきです。緊急の用件がない場合は、先に洗ってから剃るべきです。」庭のあちこちで髪を剃り、掃除しない比丘たちがいました。仏は言いました。「一か所で剃るべきです。」

五分律卷第二十六彌沙塞よりChatGPTで翻訳

まず入れてみたものがこれ。
え、年取ったおじさんが急いで髭剃る話??
全然サウナじゃないけど面白い。


「温室及清涼室若浴室」の13のルール


そしてね、本日の本題に出会います。
鑑真(タイトル画像)の弟子、法進(ほうしん、709-778)
が伝えたお経、「沙彌十戒法并威儀」です。

法進は鑑真と一緒に中国からやってきた渡来僧です。
黄河が流れる河南省(申州)の出身で、
奈良の東大寺を創建したコアメンバーの一人です。

彼がどうしてサウナを伝えたといえるのか。


それはお経の中に

「若法會説經在温室及清涼室若浴室。」

温室、清涼室、浴室で説法する場合
とあるからです。


まずね。この順番にびっくり。
温室及清涼室若浴室



温室、清涼室、浴室。
温室、清涼室、浴室。
温室、清涼室、浴室。

これは
サウナ、水風呂、お風呂。
じゃね?


温室について書かれたお経は数ありますが、
「温室及清涼室若浴室」について
書かれたお経はこれしかありません。

そしてこのあと、
「温室及清涼室若浴室」で気をつけるべき
13のルールが書かれています。

一つ目は衣服の整理です。
二つ目は平等な目線を保ち、真っ直ぐに進みます。
三つ目は途中で他の人と話したり笑ったりしてはいけません
四つ目は次第に席に座る人に敬意を払います
五つ目は他の人と同じ席に座らずに自分の席に戻ります。
六つ目は上座に座って経典を説く場合や自分の位置に座る場合、適切な姿勢で座ります。
七つ目は座っている際には必ず堂々とした態度を持ちます。
八つ目は乱語を避けます。
九つ目は大きな唾を吐いたりしないようにします。
十つ目は礼法や戒律に反して地面に唾を吐いたりしないようにします。
十一つ目は順番が回ってきたら即座に経典を説くべきです。
十二つ目は人々に指名されて高座に上がる場合、自分の行動を慎重にし、礼儀を失わないようにします。
十三つ目は座っている間に正しい意味を失わないようにし、悪いことを避けて善いことを振興するようにします。

沙彌十戒法并威儀よりChatGPTで翻訳

私、感動しました。

だってこれ、
ほぼサウナの入り方じゃないですか。

3つ目、死語をつつしむ。
4つ目、あとから来る人に席をゆずる。

これはサウナをみんなで使う大事なルールですよね。

ただね、7つ目もっとすごいです。
「座っている際には必ず堂々とした態度を持ちます。」

そうなんだ。
堂々としていないとだめなんだ。

体育座りなんてしていては駄目なんですね。
胸を張らないといけない。


そして最後の13個目、
「座っている間に正しい意味を失わない」

サウナで寝てはいけないし、
倒れてもいけない。

奈良時代から、サウナーの心得は同じ


今回わかったのは、1200年以上前から
人と人が気持ちよく温泉を楽しむのには
共通のルールがあるということ。

それをわざわざ遠い中国からやってきたお坊さんが
丁寧に説明してくれていること。

サウナーの先祖に圧倒的感謝ですね。

それでは、気持ち良いサウナライフを!