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豆話/梅雨どきの花


 梅雨が来る。白い雲がだんだんと灰色に近づき雨粒を降らせる。じめつく空気が震え始めて空が泣き出す。

 大きな花を片手に皆が外を歩く。色とりどりの一輪の花を片手に。身を縮めながら、花の影に隠れて歩く。それはどんな花なのか。透明で見上げれば空をうつしている花。雨のゆううつも忘れさせてくれる彩り豊かな花々。灰色の雲よりもさらに深い黒色。それぞれがお気に入りの、はたまたそれぞれの目的にあった花を咲かせている。時折、くるり、くるり。誰もいないことを確認して花を踊らせる。

 花々はぬるい雨粒を喜んで受け入れる。雨の日にしか見えない花。雨の日だけではなく、晴れの日に咲く花もあれど、花はいつも美しかった。雨粒を弾き花弁をまたたかせる花。

 今日はどの花を咲かせようか。街にはどんな花が咲いているのだろう。梅雨どきのひそやかな楽しみだ。

 傘ってお気に入りを使いがち。自分の好きな花を咲かせられる雨の日が好き。街中で素敵な花を探すのも楽しみです。

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