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TOEICに思うこと

英語学習としてのTOEICはアリか?

 先日、茂木健一郎さんと森田鉄也さんのTOEIC論争の動画を見て、ちょっと思うところがあり、ブログを書くことにした。
尚、私の英語スペックは中学から大学まで勉強しており、高校の時に英検3級を取得した程度で、TOEICは受験したことがないがプログラミング言語やフレームワークについて、英語のサイトやドキュメントを読むことがあり、英語に触れることが割とある。(日本語だと機械翻訳すぎて、かえってわかりにくいんだよね。。。)
 さて、本題だが、英語学習においてTOEICが有効かというと、個人的にはあまり有効ではないと思う。
 TOEICを知らない人もいるかもしれないので簡単に説明すると、TOEICはビジネスシーンで英語を使用する想定で経済産業省がアメリカのETSに依頼して問題を作成してもらっており、リスニングパートとリーディングパートで構成されている。また、基本的に合格不合格というのはなく、点数によって理解度を表すようになっている。
 サクッとTOEICの概要についてはこのくらいにして、なぜ私が英語学習においてTOEICが有効でないと感じるのか書いていきたい。

そもそもライティングとスピーキングが別試験ってどうなん?

 まずはスピーキングとライティングがない試験を英語力を測定する物差しとして使用するのはどうなの?という点だ。
 言語は表現をするためのツールなので、聞く読むだけでなく、話す書くというのが必要になるがTOEICは、この話す書くというアウトプットを別試験としている。
 「なんだ、別試験として用意しているなら、別にいいじゃん」と思うかもしれないが、で・・あれば別試験にせず、一つの試験とすればいいのだが、そうなっていない。理由はよくわからないが、いずれにせよ聞く読むだけの試験をもって英語力を測る物差しにするのはおかしいと感じている。

扱っている内容がビジネスシーンに特化しすぎている

 ビジネスシーンを想定しているとはいえ、扱っている内容がビジネスシーンを想定したものが多い。日常生活ではおよそ使わないであろう会社や会計に関する単語や、リーディングの題材もビジネスメールや表を読み取るような「文章」というより「短文」のような内容が多く、扱っている題材が偏っているため、英語力を測る指標としては偏っている傾向がある。

そもそも問題数多すぎじゃね?

 よくTOEIC受験において、「まともにやったら、時間が足りない」と言われることが多い。私も今回の記事を書くに差し当たり、模擬問題を時間を測ってやってみたが、全然時間が足りなかった。TOEIC受験で著名な講師の本や講座を見たところ、「TOEICは日本語に訳していたら時間が足りないので形(文法)でまずは判断する」と解説していたが、「いや、それは言語能力を測る試験としてどうなん?」と思ってしまった。。
 また、TOEICはリスニング100問程度とリーディング100問程度で構成されているが、それぞれの問題の傾向が異なるかといえばそうでもなく、同じような傾向の問題がダラダラ続いており、こんなに問題を解かせる必要が果たしてあるのか?と感じる。

最大の問題は、就職や昇進の「道具」にされていること

 おそらくこれが最大の問題点だと思うが、本来は英語力を測る試験が企業において昇進の道具にされていることだ。商社やメーカーに限らず、コンサルや私が働いているIT業界でも、TOEICが昇進のための道具に利用されていることが多い。例えば「課長昇進の条件としてTOEIC650点以上」というように足ぎりの道具として利用されているケースが非常に多い。
 これの何が問題かというと、受験者は「英語力を向上したい」「自分の英語力を試したい」という動機でなく、「昇進のために仕方なく勉強する」という動機で勉強することになるので、最小限の労力で基準点を満たす勉強しかしないため、本質を理解するよりも実利(点数)を取る方向に傾き、基準点を満たせば、勉強もそれ以上はしない。
 そうなるとTOEICXX点という「実績」は残るが、英語自体はどんどん忘れていき、結局、話す書くはもちろん、聞き取れない読めないことになってしまう。
 よくTOEICで900点取っていても英語で議事録を取れないとか、実際に商談の場で外国人と交渉しようとしても聞き取れないということが多いという話はよく聞くが、最大の原因は企業が昇進のための足ぎりの道具として利用していることではなかろうか。
 これはTOEICに限ることではなく、資格全般に言えることで企業が昇進や就職の条件に資格を道具として利用するせいで、資格の価値が低下してしまうことが多いと個人的に感じている。
 IT業界でいうと、IPAの情報処理資格を昇進の条件にしている企業も多いが、その一方で、情報処理資格を取得しても実務では使わないので、ほとんど意味がないという意見も多い。私個人としては資格試験で題材になっている内容は重要だと感じている。そのため、正確には表現すると

「資格で扱われている内容は本来、エンジニアとして必要であるものの、企業が昇進の条件としてしまっているせいで、受験者の大半は最小限の労力で合格することしか考えない。その結果、本質を理解するより、点を取ることに終始してしまい、資格を取得しても使えない知識となってしまっている」

と、いうのが正しいのではないかと思っている。TOEICでも同様のことが起こっていると予想される。そのため、高得点を取っても実務で使えないということが起こってしまっており、結果的に資格試験の価値が低下してしまうのではないかと思う。

茂木さんと森田さんのTOEICに対する見解

 ここまで自分の見解を書いてきたが、ここで茂木さんと森田さん討論について動画を紹介したい。簡潔にいうと茂木さんはTOIECに反対で森田さんは賛成しているが、これはお互いの立ち位置による違いもあると思う。2人の意見を簡単に上げておく。

<茂木さんの意見>
・言語は本来、それを通して文化など教養を深めることで点数で言語力を測るなんてのは論外
・TOEICの英語はつまらないし、英語を使えるようにならない
・単なる資格ビジネスだ

<森田さんの意見>
・現状、英語力を進学や就職において客観的に測る指標がTOEICしかない
・TOEICが好きで、楽しんで受けている人もいる
・TOEICから英語の世界に入る人もいるのだからTOEICを否定することはできない

 まあ、二人の意見が食い違うのは当然といえば当然だと思う。
 茂木さんはアカデミックな立場の人だし、英語を通して文化や教養を身につけようという見解の人からしたら、英語の穴埋め問題なんて確かにクソのように感じるだろう。一方、森田さんは予備校講師で大学受験やTOEIC対策の講師をしている。つまり、今の英語教育でお金を稼いでいる人なので、茂木さんの意見はある意味メシの種を失いかねないので反対するのも当然だと思う。

 いずれにせよ英語力を純粋に向上する目的で、TOEICを受験するのはあまりいいやり方ではないと思う。(賛否両論あると思うが)

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