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孫嫡子

孫嫡子 日本の民話 越前篇

昔、北陸道のある峠の茶屋でひとりの老人がきて休んでいました。ふたりはおしゃべりを始めました。
「あなたはどなたですか?」
「わしは疱瘡の神じゃ。諸国を回りすべての人々を疱瘡を煩わせておる」
「私は安倍 晴明ともうします。疱瘡を防ごうと旅しています」

 二人は言い争いになり、老人は
「では、ここで証をお見せしよう。あの子に病をとりつけよう」
 老人は茶屋の幼い娘を指さすと、娘は高熱を出して倒れました。
 晴明は病を払おうと加持をしたが、娘の熱は一向に下がらなかった。

「あなたたちの争いでこうなったのです。治すまでふたりを逃しませんよ」
 娘の母親の叫びに、老人は
「命は別状はない。少し苦しむがなおる」
 その通りに娘の容体は進みました。

「これは自分の力の及ぶどころではありません。みなの疱瘡が軽くなるようにお願いします」 
晴明の言葉に、老人はうなずき
「そうじゃな。この店にも迷惑をかけたし、お詫びに守り札を作っていこう」
「わたしも一緒に守ろう」
 晴明もその札に印を押しました。

 今でも「孫嫡子」と書かれた札のはられた家には疱瘡は入らないといいます。


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