金儲けの箱
金儲けの箱 霊談集
「二文じゃ! いらぬか!」
京の都は伏見稲荷で、小箱を売っていた。
持っていれば金持ちになれるという。旅に来ていた若者が面白半分に箱を買い、何が入っているのだと耳元でふった。
声が聞こえた。
「金儲けをさせてやろう。いまむこうから金持ちの女がくる。その前にうどん粉でも灰でも、用意しろ。きたら女が来て苦しがるから、その粉を唇に塗ってやれ。そうすれば治る」
身なりのいい女がくると、座り込み苦しみだした。若者が箱のいうとおりにすると治った。女は命の恩人ですと大金を若者にくれた。
こうしたことを二度あまりすると金持ちになった。
若者は、まとまった金も入ったので、もう故郷に帰って、田畑を買って、安楽に暮らすことにした。
ところで、この箱が不思議が恐ろしくなり、川の中に投げ込んでしまった。
「助けて呉れ、助けて呉れ」
泣きわめく声が聞こえ、耳に突き刺さるようだ。
若者は川に飛び込み、夢中で探したが箱は見つからなかった。
若者は見つからぬまま帰路についたが、急に亡くなった。
箱の中身はくだ狐だったという。
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