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〜不定期連載・取材後記〜「2022_Autumn取材後記:カミジマ・タクミ」

今回は少し間が空きましたが、「不定期連載・取材後記」シリーズをお送りいたします。この期間は柏レイソルに欠かせぬ選手の1人、DF上島拓巳選手を追いました。

DFラインの中央で攻守に奮闘している

DFラインの中央で高さと強さを発揮して久しい上島選手ですが、今季開幕当初はサブ。カップ戦を中心にプレーしていましたが、少しずつプレータイムを増やしてスタメンに定着しています。

おそらく、その背景にあったのは、「監督のプランをピッチで表現する」という姿勢。

今季の上島選手はこの言葉をよく用いながら様々な戦況や意気込み、喜びや反省など話してくれるのですが、ネルシーニョ監督が標榜する「5ー3ー2/5ー4ー1」システムをより強く構築して発展させていくには最も模範的な姿勢だと感心しておりますし、その姿勢にプラスして、それぞれの個性やポテンシャルなど、どのように折り合いをつけていくのかという点に興味が湧いたことを覚えています。

夏がひと段落したあたりから、コンスタントに対面取材許可をいただける機会が増えて、マイクを向けさせてもらう機会も増えました。

元々、記者たちがマイクを向けるシーンが多い、レイソルの「スポークスマン」の1人ですし、私自身も上島選手が放つ再現性の高い言葉を追うことが好きだったのですが、少し空白期間を経て、話をさせてもらった上島選手から感じた最大の才能は、ヘディングの強さ?端正な顔?完璧な体格?…いや、きっと、「物事に対する向き合い方と切り替え方」なんじゃないか?と思っていたりします。

今回の「不定期連載・取材後記インタビュー」は数回の取材機会を編集した形式となります。(2022年9月〜10月、浦和・柏・吹田の取材にて収録・再編集)

チームのゴール時は必ず歓喜の輪に駆け込む

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◆埼玉スタスタジアム2〇〇2での浦和戦(9月10日:4-1●)の試合後に、レイソルサポーターたちが待つゴール裏への挨拶へ向かう上島選手の振る舞いは印象的でした。あの夜は「声出し試合」でもあり、充満した感情が直接的に降り注ぐようなシチュエーションでもあった。上島選手は先頭に立ち、できるだけ多くの声を聞き取っているように映りました。

カミジ:近ごろのチーム状況や結果を見れば、試合後のサポーターの気持ちや感情は理解していたし、サポーターの気持ちや感情は当然のことだと思う。遡ってみれば、自分だって柏レイソルのサポーターの1人だったので。自分はあの日、みなさんが抱えていたフラストレーションをチームの誰かが絶対に受け止めなくてはいけないと思ったし、あの時のチームのみんなの様子を見た時に、『自分が背負うべきだ』と決めていました。自分はあの場で、『現状を受け止め、サポーターの思いを受け止め、次へ進むんだ』という意志や姿勢を見せて起きたかったというのが行動の真意でした。

◆究極的な意見を言えば、その振る舞い自体が望まぬハレーションだって生みかねない。上島選手の表情も鋭いものだった。しかし、あの場の微妙な雰囲気は選手たちの背中を押す大声援に変わるという、レイソルらしい景色に変わりましたね。上島選手の判断はとても価値のある意思表示でした。

カミジ:その部分を問われるのはこれからの自分たちの立ち振る舞いひとつ。自分たち選手は、みなさんの気持ちや声援に応えたい気持ちを毎試合持って試合へ臨みますし、サポーターの笑顔を見たいって気持ちも変わらずあるし、『勝ちたい』という気持ちしかない。あの場でのサポーターの気持ちは受け止めていますし、その気持ちを受けて、『自分たちはまだ終わっていない』って意思表示をしたかったということです。

4-1の完敗を喫した9月10日浦和レッズ戦

◆戦い方に目を映すと、ボール保持云々に関係なく守備意識とハードワークで試合を支配していたようなタイトな守備からの戦いがしばらく見せられていない。相手の施す対策やメンバー編成の差異なども考えられるが、主力選手として感じていることはありますか?

カミジ:まず、「早い時間帯での失点」が自分たちの戦い方を難しくしてしまっています。レイソルは「リトリート(自陣に構える)」している時間が長いチームというデータもあるそうで、リトリート型のチームは追う展開になると、戦い方を変えてしまい、強引に前から守備にいき、本来の陣形が崩れる傾向があるもので、システム上、最終ラインが良いラインで守備をできず、遅れたり、後手に回ることも増える。0ー0か、もしくは0ー1で試合を進められれば、相手もまだ前へ来るし、自分たちはコンパクトな陣形のままブロックを作り、そのブロックへ相手のパスを誘導して、奪って速攻というような戦い方のイメージができる。浦和戦のように2失点で給水タイムを迎えてしまうのはやはり難しいですよね。あの試合はどう修正すべきか、自分の中で答えが出ませんでした。

ボールを奪ってからのスキルも成熟している

◆対戦チームのシステムとの構造的な噛み合わせもあるかとは思いますが、先制を許してからなんとか終盤に一矢報いた試合もあるが、やはり優位性がある試合をしたいところ。どのような要因が停滞に繋がっているのでしょうか?

カミジ:自分が思うのは、「早い時間の失点」と、今は修正できていますけど、「セットプレーでの失点」が続いたこともありました。これらは戦い方を変更しなくてはならない。「ハイ・プレス」の引き出しの数が足りていない気もしています。夏くらいの時期にハイ・プレスよりもコンパクトな守り方を執ったあたりから良い戦い方ができてきたと感じていました。「コンパクトにブロックを作る」というベースを見つけたような感触が。

上島の代名詞である力強いボール奪取は痛快

◆以前のオンライン囲み取材で上島選手は同様のお話をしてくれました。「下がらず、前から相手を捕まえていくことを監督から求められていたが、広島のようなクラブはタイミングやズレをうまく使って崩しにくる」と。一方で京都戦(8月6日:2-1○)のように先制されながらトータルで勝ち切った試合もあったが。

カミジ:広島もそうですが、先日の浦和や川崎のような戦術が浸透しているようなクラブを相手にして、先に失点を喫して焦り、全体が前掛かりになり、簡単にマークを外され、陣形も剥がされてを繰り返して、複数失点を喫してしまうという展開は最も反省すべき戦い方だと思う。例えば、京都戦のように最終的に相手を食うような展開で逆転できた試合もありましたが、京都戦に関しては「対ポゼッション」というよりも、「対インテンシティ」という戦いで相手を上回ることができたという試合でしたね。その違いはあります。

チーム屈指のハイ・ヘッダーとしても欠かせない

◆G大阪戦はクリーンシート。良質な内容だったと思いますが、東口順昭選手の好守に阻まれゴールは挙げられず。上島選手の見解を聞かせてください。

カミジ:結果として無失点で終われたことは1つの成果でしたが、攻守両面で自分たちが描いた通りの試合はできていなかった。相手が前から強く来る守備を展開するわけではなかったので、ビルドアップはスムーズにいき、フィニッシュまでいけていた。もっと前から来る相手だと、もっと改善が必要になる。守備でも相手にもっとボールを持たれた場合に、どのようにスウィッチを入れるべきなのかなどの質についての課題が残っているので、次節に向けて改善したいですね。次のC大阪戦ではこのようにいかないのは明らかなので。

◆ややフリーマン的にプレーしたG大阪・宇佐美貴史選手への対応についてや宇佐美選手を中心としたアイソレーションへの対応の中でヒヤリとしたシーンがありました。上島の高強度の守備の後に笛が鳴ると、少し前の嫌な残像も過りましたが。

カミジ:宇佐美選手の質の高いポジショニングに対してはCBがそれぞれ見ていくつもりだったし、上手く対応できていたと思う。ただ、ファン・アラーノ選手の進入もあり、主に左サイドからチャンスを作られていましたが、攻守に後半のような試合運びができていれば、崩されはしないかなと思います。自分自身のボールの処理や、ある種事故的な接触のシーンなどがありましたが、判定には納得していますし、それほど良くない接触ではなかったですが、自分ももっとどうにか改善しなくてはと思います!ただ、今日は無失点に関してホッとはしています。

G大阪戦はドローも、クリーンシートでまとめた

◆今週は最後の上位対決となるC大阪戦です。

カミジ:C大阪は上位にいるクラブですし、強度や内容は間違いなく高くなる。G大阪戦に続いて「4ー4ー2」を用いるクラブに対する守備やビルドアップのイメージはありますが、さらに攻守の強度を高めていきたいです。C大阪は前線からの守備強度があるので、CBとしては相手のファースト・ラインに対し、どのようなルートでボールを動かすのかが求められると思います。左SBの山中亮輔くんのクロスへ対する対策も必要ですし、両サイドから良いボールを入れてくるはずなので良い対応が求められる。細心の注意を払いたいです。

気持ちのオン・オフの切り替えに長けている

◆さて、いよいよ今季の残り試合もわずかです。1から積み上げてきた素晴らしいシーズンをどのように締めましょうか?

カミジ:今の自分たちが目標にしているポジションや順位にいるC大阪戦は大切な一戦になりますし、まるで昨年の自分たちのように厳しい残留争いをしているクラブとの対戦もまだ残されている。どの試合も決して簡単ではないですよね。受け身にならずに戦っていくことがすごく大事になると思っていますし、サポーターのみなさんの熱いサポートに結果で応えたいです。

◆たくさんの明解な対応、ありがとうございました…ところで上島選手は今夜も「おやすみ」って言うんですか?

カミジ:「おやすみ」ですか(笑)?…言いますよっ!

見るからにグッドシェイプ。精悍さを増している

録れ高があり過ぎて、少々長くなりましたが、上島選手のインタビューは以上となります。いかがだったでしょうか。

ある程度、突っ込んだアングルで話をしても、ビクともしない上島選手は我々にとって、とても頼りなる人でもあります。

リーグもあと3試合。レイソルにとっても上島選手にとっても素晴らしい結果となりますように!

いつも、わがままに付き合ってくれてありがとう!

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