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出産レポ 後編

こんにちは。ちひろと申します。
出産レポ前編はこちら

2022年10月8日夜の11時頃。
私たち夫婦は本当の限界を迎えた。

産院に連絡すると「バースプランにできるだけ自分たちでってありますけど?」とまた言われた。

「出産を舐めていました。ごめんなさい、入院させてください」

子鹿のような足取りで、マンションの階段を降りて、タクシーで産院へ。

「入院させてください」

頭を下げて頼み込んだ。
屈辱だった。でももう限界だった。

陣痛間隔7分。陣痛室へ。

闘いはそこからだった。
うつらうつら、陣痛の合間に眠気がきて、
うとうとしていたら、急激に痛みが増した。

お腹と腰が激痛。今までで一番痛い。
便意がして何度もトイレに行くが何も出ない。

助産師は数時間おきに心拍確認に来るが、すぐに行ってしまう。

陣痛のたびに、我慢できずに声が出る。

「あーーーーー!!うーーー!」

我慢できないのだからしょうがない。

バースプランに書いた
・進捗状況を教えて欲しい
・優しくしてほしい
・姿勢のアドバイスが欲しい

これらは叶わず。

助産師は何も教えてくれない。
呼び止めても「また来ます」と去って行く。

夜勤助産師。さぞ忙しかったのだろう。
人生において、貴重な出産体験。
おかげさまで、トラウマなりました。

勇気を振り絞って、

「話を聞いて欲しいんです」

「これから帝王切開の方がいます。また来ます」

去って行く助産師。

ひとりぼっちの陣痛室。
止まらない、狭まらない陣痛。

家に帰りたい。

夜中の0時を過ぎ、やって来た助産師に

「退院します」

「できません」

「じゃあ、もう死ぬしかありません」

向かいのビルに階段が見えた。
あそこを登って、飛び降りよう。
本気で死を考えた。

ここまできて、やっと話を聞いてくれた。

陣痛がずっと続いていて、間隔が狭まらない。

「陣痛促進剤を入れて、陣痛を促して早く出産を終わらせた方が良いかもしれません。医師に相談してみます」

「促進剤を入れたら、どれくらいで生まれますか?明日の夜までかかりますか?」

「今日中(9日)に産まれると思います」

初めて希望が見えた。
気持ちが前向きになったからか、陣痛の間隔が5分になっていた。
痛みの箇所がお尻に変わっていた。

肛門が潰される感覚があり、激痛と同時にいきみたい感覚。
テニスボールを肛門に突っ込んでいきみ逃しをした。

朝8時ちょっと前に促進剤を入れた。
分娩室に移動して医師の診察を受けた。
子宮口8センチ。

あと少し。
バタバタと分娩の準備が始まり、助産師が夫に電話を入れた。

しかし待てど暮らせど夫は来ない。

そうこうしていると緊急帝王切開が入り、助産師医師全員がその場から居なくなった。

もう1人で産むしかない。腹を括った。
腹式呼吸で赤ちゃんに酸素を送る。
陣痛の波に乗って、ただただ呼吸した。
陣痛間隔は3、4分。
陣痛がきていても、きていなくても、

「はああーーふううーーー」

と声が自然に出ていた。

夫遅れに遅れて到着。

「腰!!」

夫は黙って腰をさすってくれた。

助産師が1人来て、私の赤ちゃんが乗るはずだった台に他の人の赤ちゃんが乗せられる。
身支度を終えて連れられて行く。

夫と私だけの分娩室。
怒った私は手元のテニスボールを投げた。

助産師も医師も、もう知らない。
私が産むんだ。改めて覚悟した。
陣痛間隔1、2分。

突然わらわらと助産師が集まって来た。
医師も来て、呑気に逆流した点滴を直す。

「破水させますね」

いきなり大量の水が溢れた。

「吸引しますね。痛み止め打ちます。切りますよ」

あれよあれよとお産が進んでいく。

そしてついに、11時10分。
生まれた。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

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